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第四十六話 パトロールのお供します

「でも一緒に行動していた時はそんな素振り見せませんでしたよね?」


「ああ、別に毎日やるわけじゃないからね。デイトレなんて個人でやっていても食われるだけだし。一月ペースで取引しながら様子見だね、基本的に。でも今はかなりやりにくいかな」


「ネットの影響ですか?」


「そうなんだよ。入ってくる情報が制限されるのはいいとして、いや、よくはないんだけれどそれ以上に現金化や移動させにくくなっているのがかなり辛い」


「でもガイアがあれば大丈夫なんじゃ……」


「いや、それだけだとめんどくさいことが待っている」


「と、言いますと……」


「税金とか」


「ぜ、税金? あっ!!」


 正直こんな無茶苦茶な世の中になって税金なんて……って思ってしまったがかなりの遅延はあるとはいえ分配金が支給されているのでこういったことはちゃんとしておいた方がいいのだろう。


「うん、第五種の内の対象者になってるんだ。確定した時はまだ大丈夫だったんだけれど払う準備する前にあの暴走が起こっちゃったからね」


「え、じゃあまずいんじゃ……」


「まあ延滞については大目に見てくれるとは思うけどどっちみちガイアだけじゃあ不便は出てくるだろうから持ち合わせが尽きる前に動かなきゃいけないんだ」


「でもどうするんですか? ネットが完全に復旧するのはいつかわからないですし……」


「だから直接実店舗に行く。ここからだと名古屋か大阪かな、そういった場所があるのは」


「あー、だから旅をしていたんですか? 人が多い場所が良いって言っていましたし」


「まあそれも事実だけどあくまで建前。本当は興味本位で色んな場所をめぐってみたいって気持ちがどこかにあって変な話だけどあの暴走はちょうどいい機会だからってのが一番の理由かな」


「?」


「ま、要するに行きたいところにあてもなく行ってみよっかな、って思ったのが動機なんだ」


「そんな、こんな危なくなったのに……」


「ははは、今はどこにいたって危険が伴うよ。前に住んでいたところと比べるとここは安全だけどね。それに人が多く居る場所に行った方がいいってのも事実だよ。手に入らない情報があるかもしれないし。ただ、」


「ただ?」


「なんていうか……、これは「空気を読んで」とか「責任を求める」とかそう言うことじゃなくて本当に気になっているだけの質問なんだけど、」


「……はい……」


「最初に一緒に旅をする、みたいな話になったじゃん。それは今も変わらないか改めて聞きたいんだ。っていうのも警備探索システムなんて機能していないだろうからこの先は危険も伴うし、何よりこの市にいたほうが安全、アキラちゃんだけまずはここに残ったh」


「あーそう、そういうことですか、なら大丈夫ですよ。あの時から考えは変わっていません!」


 言い終わる前、言葉を選んで少しずつ困ったトーンが伝わってしまったのかわからないがそれを遮るように彼女は結論を出した。


「それに、私も自分の事を知りたいですし。一緒にどこかに行って都合よく知ることができるってわけでもないでしょうし、ここに残ることでわかることもあるかもしれません。でも、」


 少しだけ間がある気がした。


「でもきっと私もリョーマさんと同じなんだと思います」





 

「そうか、でも出発予定日までもう少しあるから気が変わったらいつでも言ってね」


「はーい」


 と言ってもずっと自分だけの事ばかりやっていてもこっちに来たばかりの彼女が退屈してしまうだろうとは思った。というか退屈そうだ。だから確認は一日少しずつ進めていくことにして今日はもう切り上げる。


「そういえばアキラちゃん?」


「はい、なんでしょうか?」


「趣味とかってある? いやさ、ちょっと気になって」


 俺の場合、自由な時間はこうやって個人用のコンピューターと向かい合ったりすればいい。オフラインでもやることはあるし他にはしばらく戻っていなかった自分の部屋の整頓などをすればいい。でも彼女の場合は好きなことをしておいて、って言われてもその時間は退屈じゃないのだろうか、と気になってしまう。


「うーん、私もここに来るまではしばらく暇なんて感じる時はありませんでしたからねぇ。その前はというとやっぱりこういった、って言うのも変な感じですけどゲームでしょうか」


「ゲームか……もう生活の一部というか生活みたいになったから暇潰しとか娯楽って感じはしないよね」 


「ですねー」


「よし!」


「どうしました?」


「適当に外に出るか、なんだか退屈してきちゃったし。アキラちゃんも一緒に行かない?」


「はい、ぜひ!」



 そんなわけで外に出ると本物の晴れの日差しが久々に思えてしまう。


「でもこれからどこに行くんですか?」


「とりあえずここで一番近い会館かな、まだ集会まで時間あるからさ。一応ここのギルドの一員になったからにはどんな掲示があるのか確認したいし」


 前に集会に行った時よりはずっと会話が弾むようになったので移動はあっという間に感じられた。家から一番近いギルドのメンバーが集まる場所に到着するとすでに依頼・業務内容一覧やニュースを確認している人影が見える。


「おっ! お前さん、もしかして昨日試合に出ていた八雲さんところの長男じゃないか」

「マジで? でも今日は休みなんじゃない?」

「隣の子も最後までリーダーと戦ってくれていたわね」


 どうやら昨日の試合を見ていたらしい。戦闘向きの人が参戦した対抗戦だがもちろん全員が出動したわけではない。普段のギルドとしての活動をする人もいたし観客席で応援する人もいた。だから昨日一緒に戦った人だけではなくもっと多くのメンバーがいる。そういう人達にも多少なりとも自分達の事を知ってもらうことができたらしい。


「今日はどうしたんだ?」


「集会前にちょっと依頼とか危険情報とかが気になっちゃって」


「そういうことならこれから一緒に来るか? ちょうどあの河川敷で最近、討伐対象が多く発生しているからこれから見回りに行くんだ」


「どうする?」


「気になりますね、行ってみましょうか」


「そうだね。じゃあすみません、ご一緒させてください」


 


 見慣れないモンスターがたまに出るらしいがこの辺りはまだ平和とのことだった。一方で京極寺さん達がいる場所は手強いのが出てくるだとか。だから一部は他の区域に駆り出されるようだ。


 京極寺組が担当している場所で最近出現するモンスターのトレンドらしき話をしていたら目的地に着いた。小学校の頃はここで野外活動授業があったが今となっては当時とは雰囲気が全く違うように思えてしまう。


「あー、あそこにいますね」


「水トカゲか」


 単体なら対して問題ないがちょっと多いな。だが……


「お、やるのかい?」


「ええ、せっかくついてきたんですから」


「あら、それって噂の?」


「噂って何?」


「なんかモンスターを出すらしいわ」


「どういうこと?」


「さあ、私は見ていないからなんとも。でも今から見ることができるかもよ」



 そうなんだ。実を言うと自分でも見たい。

 まだ実感はないがあれが本当に自分の物なのか、一日経って確かめたくなってしまった。


 さて、あの空を覆いつくすような巨体が本当に表れるかどうか……


「じゃあやってみます」


 サブ武器としてアークアナイラレーターを選択!!


 すると光の塊みたいなのが徐々に広がっていってやがて形になるが……



「え? リョーマさん!? それって……」




 彼女が驚くのも無理はない。あの時実際に見ていたんだから。




(なんで縮んでるの……!!??)


 傍から見たら十分大きいかもしれない。でも10メートル後半あったであろうあの巨体をイメージしていたので驚きを隠せなかった。


 確かに双頭の竜は出現した。



 だが、その高さはざっと4mほどだった。

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