第十九話 オーガの倒し方
「でもあなた達……たった3人って……、あのモンスターのカテゴリーを知っているの?」
「もうすぐこちらのギルドのメンバーが来る。それまでは逃げるべきだ」
「でも、あれは悠長に待ってくれる相手ではないです」
「見境なく暴れ回るオーガ系のモンスター、それが2体もいるのよ。ここで食い止めるわ」
「そろそろこっちに来そうですね。私は打撃なのでミドルの方を相手にします」
ジャイアントオーガは打撃攻撃がほとんど通用しない敵だ。ダメージを当てる場合はそれ以外の攻撃で攻めるしかない。必然的にそのような耐性が無いミドルオーガをアキラちゃんは相手にすることになった。
「ってことは……」
花耶が俺の装備とアキラちゃんを見る。
「私がジャイアントの方ね。先行する、頼むわよ」
「私も先に行きます!」
オーガ系のモンスターはパワーに優れているが大振りの攻撃になりやすい。だから花耶のテンペストやアキラちゃんの接近戦のようなスピード重視の戦い方が重要になってくる。俺のハルバードは同じく大振りになりやすいからいくら捌きやすい荊棘ノ槍斧とはいえオーガと同じような動きになりがちだ。
だが、
「ああ」
それも戦い方次第。
*
「こうなったら僕も……」
「待って、お兄さん。その武器だと八雲君達に当たってしまうわ」
「でも……!!」
京極寺徹獅の武器は機関砲だ。それも連射火力ともに優れている射撃系大型武器上位の代物。
だが、どちらかというと雑魚掃討や他の人に当たらないくらいに大きな的の敵に最も効果を発揮する。
オーガくらいの大きさの、それも2体を相手に味方が入り乱れる戦闘だとフレンドリファイアをしてしまうこともある。
「こうなったら様子を見るしかないわ。あの人達が危なくなったら私達も参戦する」
そう言って京極寺慧香も剣を取り出す。
「あなたは本当にこの位置でいいの?」
「うん、お兄ちゃんにこの場所は任されたから!」
「そういうわけではなくて、心配ではないの?」
「うーん、確かにあのオーガは強いしまだお兄ちゃんたちの強さはよくわからないけど、」
「けど?」
「多分大丈夫だと思う!」
そうやって二ッ!て笑って水面ちゃんも例の装置を起動し杖を取り出す。
「私はここを何が何でも守るだけ!!」
*
2体のオーガが接近してきた。それを合図に花耶とアキラちゃんが駆け出す。
続いて俺も。
するとデカい方が花耶を敵と認識したのか腕を勢いよく地面に振り下ろす。花耶めがけて……ではなく地面に思いっきり当てる。その瞬間に地面の一部分が急激に盛り上がる、というよりは地盤の柱が花耶に襲い掛かる。だが、紙一重で躱しその隙に切りかかる。
2撃、3撃、4撃。連続攻撃を決め込んだ。武器スキルを使ったような速さだがまだ通常攻撃しか行っていない。
ミドルもアキラちゃんと対峙する。先に仕掛けたのは敵側だった。勢いよく突進しながら拳を突き出す。その腕にそっと触れるようにして力を受け流す。勢い余ったミドルオーガはそのまま転びそうになりながらもなんとか体勢を立て直すが遅い。ハルバードの餌食にする。突きから始まり、斬りかかり、さらに花耶が戦っている方に振り払う。
「花耶達の方にこいつを飛ばすよ!!」
「はい!!」
続けてアキラちゃんが連打を加えた。アキラちゃんの身体強化はかなりのものなのだろう。重い相手だが少しずつ、でもどんどんと花耶達の方に追いやられる。
だが、敵もやられてばかりではない。自分の腰らへんを浮いたり地面に降りたりしているアキラちゃんめがけて蹴りを繰り出そうとした。
ガガン!!
鈍い音が鳴る。
蹴りが当たったのだ。
アキラちゃん……ではなく斬りかかった俺のハルバードに。大ぶりな攻撃には大ぶりな攻撃を与える。
味方を援護しながら攻撃をするのが長物を用いたオーガとの戦い方だ。
打撃としての威力は期待できない荊棘ノ斧槍だがカウンターのような攻撃ならむしろこの硬さと扱いやすさも相まってなかなかの威力になる。
腕がしびれるような感じになるが今はそんなこと言っていられない。
「はあああ!!」
アキラちゃんが武器のグローブのスキルを使ったようだ。どうやらかなり重い一撃を繰り出すことができるらしい。
さっきまでの様なじりじりとした後退ではなくミドルオーガが吹っ飛ばされる!
「カーヤさん!!」
「おっと!」
ジャイアントオーガとの戦いに集中しつつもこっちに目をやった。飛んでくるミドルを避けながら隙ありとばかりについでに斬撃を叩き込んだ。
ここまで短い間だったが花耶とジャイアントオーガはどんどん激しい勝負になっていく。
次はあっちだ。幸い2体のオーガは近くにいる。だからここからは俺がその2体の攻撃を止める援護もしやすいし二人には全力で攻撃してもらう。
「水面ちゃん、俺にも身体強化って使うことができるかな」
「任せてください!」
そう言いながらバフをかけてくれた。
なるほど。
速度や物理攻撃の様なバフは自分でかけることができるがアキラちゃんのは全身強化なのだ。
これならあのオーガのパワーにも……
「ありがとう。凄いよこれ!」
「いえ、ではあたしも追撃します」
「うん」
今度は直接花耶に大きな拳を振り下ろそうとした。
「フンッッ!!」
それを下からの掬い上げのような振り払いで防ぐ。そしてがら空きの胴体に花耶が武器スキルの水滴の無数の弾丸を叩き込む。
それでも一歩も動かないジャイアントオーガ。
だが、確実にダメージは蓄積しているようだ。
さらに焦ったように攻撃を繰り出そうとするがそれも叩く様に切る、時には切りながら受け流す。
オーガは特殊な攻撃も無ければ魔法も使えない。接近戦をするのみだ。しかし、その一撃一撃が危険だった。一度喰らえばそのままダウン、そしてさらに攻撃をされ続けるという事態にもなりかねない。
だが、当たらなければ問題はない。
俺もこの武器の扱いに慣れてきた。さっきまでは敵の攻撃のピークに達するときにこちらの攻撃を当てていた。でもそのやり方だと武器の耐久が危ぶまれるし、こっちの腕、さらには体の奥にも反動が伝わってきてしまう。
だからその攻撃が成立する前に防ぐ。蹴りなら足を地面から離して少しだけ後ろに下げて戻そうとした瞬間にカウンターを行いそもそも攻撃を成立させないようにする。
サブ武器を使う必要はない。というよりはハルバードで援護することに集中する。
そして、花耶は全力で次々と斬りかかり、スキルを発動していく。
ミドルの方も起き上がってアキラちゃんと戦っていた。こっちはジャイアントに比べてある程度小回りが利く攻撃をする。連続でパンチのような攻撃を繰り出してきた。
それを避けてはいるがこれだと懐に潜り込めない、が、
片方の腕にまずは攻撃、さらに斬りかかった勢いそのままにもう一方の腕で攻撃してくる前に、予備動作の時点で斬撃を叩き込む。
ミドルオーガから見てアキラちゃんは消えたように見えたのだろう。俺がカウンターを決めている間に浮遊で一気に後ろ、敵後頭部らへんに回り込んだアキラちゃんの強烈な蹴り、続けてスキルの攻撃をミドルオーガは喰らって地面にへばりつく。
こっちは大丈夫みたいだな。
アキラちゃんはすぐさま花耶に身体強化を使う。さっきも激しく早い攻撃を繰り出していたがさらに攻撃が激しくなる。だが、無理矢理の攻撃ではない。高い精度で次々と有効打を与えている。
なおも繰り出そうとするジャイアントオーガの攻撃を事前に防ぐ。そのたびに向こうは傷つく。
そして、蓄積していったダメージが限界に来たようだった。とうとうジャイアントオーガは倒れ、消え去った。
消え去った……?
そうだ、確かモンスターは倒せば消え去る。
2体を相手にしていたから気づかなかったがもう一方の方は……
ジャイアントオーガを倒したことで安堵の気持ちが出てしまった。
それがいけなかった。
うつぶせになっていたミドルオーガが腕を地面にたたきつける。
さっきのアレか!?衝撃に備え構え、さらに後ろに下がる。
地面がせりあがるが、この位置は俺達を狙っていない!?
するとミドルオーガは急に駆けだした。
俺達の方……ではなく京極寺さんたちがいる方に。
まずい!!
意表を突かれた。
ハルバードの蔓を伸ばすが追いつかない。
*
「あーあ、詰めが甘いなぁ」
空気中に雷撃が走る。
火・風・雷・水の4つの属性を扱うことができる水面ちゃんのエレメンタルロッド(上級)。それをミドルオーガにぶつけようとする。ただ、少しは当たるが避けられてしまった。
「そう動くよね」
先ほどの雷撃は誘導だったようだ。
水面ちゃんがあの時見た炎の竜巻を発生させ、それをミドルオーガにぶつける。
「でもお兄ちゃんよりもずっと動きは分かりやすい!」
トドメは彼女がさしてくれた。
「オーガ2体、それもジャイアントをほぼ無傷で……」
「八雲君達はいったい……」
「あ、アイテムドロップした。」
「でもこれもう持ってるわね。」
そんな会話をしてから京極寺さん達の方に戻っていった。
すると、「リーダーァ!!!」
どうやらギルドの人達が到着したようだ。
「無事ですか?」
「すみません、他のメンバーも全員モンスターの討伐や人々の護衛輸送を手伝っていたようで。ここの近くにはちょうど誰もいることができませんでした」
「そんなタイミングでまさかオーガが現れるなんて。それでオーガ2体はどこですか?」
「もう倒したわ」
「え!!リーダーとお兄さんでですか!?」
「だって、ジャイアントオーガもいるって……」
「もしかして須加さんがもう来たんですか?」
「いえ、違うわ。あの人、八雲君達」
ギルドの人達が俺達を見た。
「えっと……この方々って確か今日試験を受ける人ですよね」
「えぇ。彼らが今さっき倒したわ」
「えーーーー!!」
「そんな……何者?」
「じゃあ即戦力じゃないですか!?」
「そうねぇ、ギルドの試験については……」
???「すまない。遅れた」
「あ!!」「須加さん!お疲れ様です」
昨晩、京極寺兄妹と一緒にいた男性だ。
年は徹獅さんと同じくらいだろうか。
「君達がオーガを倒したのかい?」
「はい」
「なるほど」
「この人達なら試験免除ですよね!?」先ほど到着したギルドの人がそう言うと……
「いや、試験は予定通り受けてもらう」
「でも聖慈、僕はこの目で彼らの強さを直接見た」
「お兄さん、特例を何回も設けては集団に示しがつきません。ここは須加さんの意見を尊重します」
「そうか……」
「それにおそらく須加さんは……」
「というわけだ、オーガを倒してくれてありがとう。ただ、すまない。こればかりは掟みたいなものなんだ」
「俺を含めてここに居る4人と1対1で対戦してもらう。その内容に応じて適性を見させてくれ」
ギルドの話を聞くだけのつもりだったがなんだか話がどんどん進んでいるような……
「ねえ、お兄ちゃん、面白そうだから試験受けようよ!」
「私もどういうものか気になるわ」
ただ、
「そうだな」
それに俺も自分の生まれ育った場所のギルドがどういうものか知っておきたい。この試験を受けて立つ。




