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5月1日、お昼休み。


チャイムの音で慌ただしく教室に駆け込みそれぞれの授業を受ける私達。私は、みんなで図書室に紛れ込ませてきた小説の事を考える。


≪4人で共有している小さな秘密≫


香織の提案してくれた小さな悪戯を思い出してひとりでクスッと笑ってしまう。私と同じタイプだと思っていた大人しくて控えめな香織があんなに大胆な事を考えて実行してくれるなんてビックリだけど、すごく嬉しい。


「もう、まどか大丈夫?お昼、食べに行くよ。」


いつの間にかやって来た莉那が机の横に掛けてある私のランチバックを掲げて立っていた。


「あっ、ごめん。ぼうっとしてた。」


「だよね。休み時間もひとりでニヤニヤしてるしさ、声掛けられなかったよ。浮かれすぎ。」


廊下を移動しながら莉那にちくちくと叱られる。


「ごめん。」

「まぁ、いいけど。あっ、香織、吉井聞いてよ~。」


中庭にふたりが居るのを見付けて、莉那が走り寄りながら手に提げたランチバックをブンブン振るのでお弁当が心配になって後を追う。


「莉那、お、お弁当がすごい揺れてる。ってか、何回も回転しちゃってるから!片寄っちゃうよ!!」


「知ってる~。わざとだもん。」


楽しげに言いながらくるりと回りレジャーシートに座り込み、勝手にお弁当箱をパカリと開けた。


「大丈夫!片寄ってないよ。」

「わぁ、勝手に開けないでよぉ。」

「別にいいじゃん。減る訳じゃないし。あっ、この唐揚げ美味しそう。」


莉那はざっとお弁当の中身を確認すると、おかずの唐揚げをつまみ上げてポイっと口に放り込んだ。


「食べてるじゃん!減ってるよ!唐揚げはメインなんだからね!」


「2人とも楽しそうだね。」


そんな私達のやり取りを見て玲と香織が笑う。


「良かった。」


香織がポツリと呟いたので何だろう?と不思議に思って首をかしげ視線を香織に合わせると、香織は真剣な顔で話し始めた。


「あのね、ちょっと気になってたの。小説を図書室へ置いてきちゃった事。余計なことしたかなって。ごめんね。」


今にも泣きそうに顔を歪める香織を見て慌てて答える。


「香織、謝らないでよ。私、なんかちょっとワクワクしちゃったもん。これからどうなるだろうって。」


「そうだよ。休み時間も話し掛けられないくらいニヤニヤしてるしさぁ。唐揚げ1個くらいでガタガタ言うようなおめでたいヤツに謝ること無いんだよ。香織。」


そう言いながら莉那が私に見せ付けるように香織の頭を撫でる。


「莉那、それさ、わざとやってるでしょう?やめてよね、笑っちゃうから。」


「だって~、香織、大丈夫だよ。笑っちゃうからなんて言葉は怒ってる人から出てくる言葉じゃないから。気にすんな。」


「うん、ありがとう。でも、私も莉那みたいにまどかの事、大切に思ってるんだよっていう事ちゃんと伝えたくて。」


「私みたいに?」


なんだそりゃという顔をして香織を見つめる莉那に真っ直ぐな視線を合わせて香織が言った。


「この前の放課後の事。」


「知ってたんだ。」


すぐに狩谷美穂子さんとの事だと勘付いた莉那。何も知らない玲だけが呑気に訊ねてくる。


「この前の放課後って?何かあったの?」


「吉井には関係ないよ。この話は蒸し返すとせっかくのお弁当が不味くなるから話したくない。」


「そっか、分かったよ。」


強い口調で言い放つ莉那と、気まずい表情を浮かべる香織に何かを感じ取った玲はアッサリと引き下がったけれど、言い様のない重い空気が漂って居たたまれない感じがしてくる。その空気を払拭したくて私は今、思っていることを正直に口にしてみた。


「あのさ、図書室に小説置いてきたこと私は全然後悔してないよ。さっきも言ったけど、むしろワクワクしてる。この4人で共有する秘密があるってすごく嬉しいし、楽しいんだよね。3人は私にとってかけがえのない友達だと思ってるから。」


「まどか、ありがとう。私も大切な友達だよ。」


香織がぎゅうっと抱きついて来る。


「私もだよ。」


莉那も抱きついてきた横で、玲が両手を後ろ手に芝生に付けて座り込み抱き合う私達を眺めながら「僕だってそう思ってるよ。」と少し恥ずかしそうに言った所で昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


「なんか吉井カッコ悪っ。みんな、教室戻ろう!」


「そうだね、また放課後にね。」


莉那が玲をからかうのに便乗して私達は教室に戻った。


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