あとがき
お初お目にかかります。
または、いつもお世話になっています。
この度は『ヴェスペルの娘達』を最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
この場を借りて、厚く御礼申し上げます。
ずっと、たった一人の読んでくれる人の為に物語りを書いてきました。
何度か、そのたった一人は代替わりをしたけれど
それでもずっと、どうしたら喜んでくれるかな、楽しんでもらえるのかな、
そればかり考えて書いてきました。
だからどうか、首尾よく読み終えていただけますように。
少しでも、楽しかったり心ときめいたり、してもらえますように。
私が、書いている間少しも辛くも、苦しくもなかったのと、同じように。
あなたへと、今はただ祈るだけです。
いままで幾つか、あとがきを書いてきました。
何故か毎回「タイトルの由来を暴露する」というのがあとがきでしたので、今回もやってみたいと思います。
一部ネタばれを含みますので、予めご了承ください。
()内は英副題の訳になります。
起色『これより少し前、始まりの物語。』
今回はとにかく全編にわたり、リーゼorエルモの一人称語りというのをテーマにしていた事。それから登場人物の少なさ(よく考えると、全編通して出てくる名前がついているのは五人くらいしかいない……)だった為、バランスを取るのに、それぞれの章の先頭に、エルモの昔語りを入れることにしました。
零色『始まりの物語。その前に。』
この時点でリーゼやエルモとの付き合いは、実は3年目に入っていたこともあり、まっさらなものではなかったのですが、エルモほどではないものの、とてもドキドキしたのを覚えています。
第一色『少年は、荒野を目指す』(リーゼ先生の授業、初日)
世界観の説明で精一杯になっていますが、良く考えるとリーゼが売女呼ばわりされたりしていて、結構酷いです。タイトルの由来は桜庭一樹の「荒野」より。英副題は一貫性をつける為につけました。章題って、いつもかなりめちゃくちゃなので……。
第二色『師匠の秘密』(リーゼ先生の授業、二日目)
あまり迷わないリーゼが、少し弱音を吐いたり、弱虫のエルモが夜中に動きまわったりと、少し二人の関係に変化をつけたのがこの部分です。最後の数ページが、実はこのヴェスペルの娘達の原風景であったりします。章題はそのまま、エルモが見つけたリーゼの秘密、と言うだけです。そうとうシンプル。
第三色『心をこめて花束を』(リーゼ先生の授業、最終日)
この作中で大きく扱われている物語は二つあり、一つはこの第三色にでてくる『扉のアカシャ』です。こちらは完全に私のオリジナルです。もう一つの『守護精霊のお話』はアンデルセンの『最後の宝石』を元に考えました。劇中劇的に、お話がたくさん書けるのは面白かったです。章題はsuperflyの「愛をこめて花束を」より。ずっと『心をこめて花束を』だと思っていたので。
第四色『アウローラ・ルル・エスカトーレ』(虹の彼方に)
この章は、物凄く短くなってしまう可能性があり、どうしようかと本気で物凄く悩んでいたのですが、まあいいのかな、と思ったらすごく楽になって二人の気持ちを優先させて書けました。アローの考えていることが正しいかとか、倫理的にどうとか、いろいろ考えていましたが結局いまだに結論は出ていません。章題はそのまんま、アローの名前。アローは名前・通り名・愛称・性格が全部一瞬で決まったキャラクターで、キャラクターとしては最短の出来上がりです。英副題は映画「オズの魔法使い」より。
第五色『暁の少女と、黎明の少年と』(腐った苹果、太陽の花、堕ちた森林)
あんまり章題は好きではないです。何となくぱっと付けてしまったので。代わりに65~71部の各タイトルに気合を入れました。黎明の少年、と言うのはエルモのことであり、ダーヴィンのことであります。黎というのは真っ暗な夜、と言う意味があるのだとか。この頃から自分が精神的に不安定で、他人から見られる自己、と言うのがすごくおかしな像になっていたので、おんなじ雰囲気でお話も進んでいます。英副題はRADWINPSを聞いていて思いつきました。このダーヴィンの想鎖術もまた、ヴェスペルの娘達、の原風景です。
第六色『憧憬 子供達の夢と踊り』(スミレ色、藍色、黒、そして、青、炎の色、黄色紫、空色、ピンク、黄色、緑、灰色、茶色……あなたへと贈る色は?)
この章の最後数ページが、ヴェスペルの娘達、でもっとも書きたかった部分です。大きな苹果の樹、微笑む少女と驚く少年、暗闇と夜明け、最初にイメージした物語のエッセンスをぎゅっと押し込めました。若干の想手以外は、エルモへのリーゼの依存が存外深かったこと。もっとリーゼはしゃんとできる子だと思ったんですが……。章題は「くるみ割り人形」をイメージして作りました。
最終色『貴方へと贈る色は』(ロマンスの夜明け)
うっかり、第六色と最終色を同じ『あなたへと贈る色』にしてしまい、どうしようかと悩んだのですが、こちらにタイトルを譲りました。一つ章を増やしたのに、その分タイトル考えてなかった……。ミスった。英副題は互いが互いへの想いを自覚するので、ロマンスの幕開けです。恋している時の心臓の高鳴る音が想鎖術に一番重要な旋律を生む、と言う物凄い乙女な発想です。ダーヴィンとエルモの話し合いは最後に悩んでつけたしました。恋心を秘め続けたダーヴィンと向き合うことで、エルモに成長のきっかけを与えたかったこともありますし、エルモ自身がリーゼの翼の下から出ることを自覚した以上、もうダーヴィン、つまり恋をすることから逃げてはいけないな、と思ったので。
結色『はじまりの、物語』(セントエルモの灯)
一番最後が最初に戻る、というのをやってみたかったので。
encore『How far are you』
悩んだ末に、公開しました。
もう一つの結末もまた、この物語の原風景だったと思うので。
あなたまでどれくらい遠いの?
リーゼとエルモの距離であり、リーゼとアローの距離であり、私を含めて理想までの距離だったり、します。
ところで、この『ヴェスペルの娘達』は2010年から2011年にかけて書かれたものを、今回大幅に改稿した過去の物語だったりします。
次は、正々堂々「今しかかけない」「今」の物語りをしていきたいと思います。
引き続きお付き合い願えるとうれしいです。
それでは、またいずれかの局面、はたまた違う場面でお会いできることを祈りつつ。




