967
本日更新1回目です。
サモナーさんが行く Ⅰ〈下〉、発売しているみたいですよ?
ローブ姿の人物が佇んでいた場所は瓦礫が集められた一角だ。
その周辺の匂いを追えないか?
ヴォルフを見る。
ダメみたいだ。
匂いは当てにならない。
上空に位置していた黒曜は?
これもダメみたいだ。
魔力を追うか?
これもダメだろう。
周囲に魔力を放つ者が多過ぎる。
サニアの街中を行くのは無意味かな?
その可能性は高い。
だが無駄にならないかもしれない。
ここは賭けだ。
サニアの町は試合会場が設営されている中央広間から町の外へと出る道以外は人が少ない。
まだ復興の途上であるのだ。
今はその復興作業も止まった状態で闘技大会が運営されている。
本当にどうかしていると思えるんだが。
人気が無いのであるなら、むしろ好都合。
不審そうな奴がいるなら見付け易い。
センス・マジックやクレヤボヤンスも併用してみよう。
どうも狙われているようなんだが、相手はPK職であるのか?
それにしてはおかしい。
単にPK行為に及ぶのであれば、気付かれずに仕留める事を優先するだろう。
殺気を放つなんて、意味が無い。
それとも何か恨まれているとか?
心当たりがあるような、無いような。
まあどうでもいいか。
襲って来るなら歓迎するだけだ。
裏がありそうなら尋問してみよう。
拷問に非ず。
飽くまでも説得するだけだ。
他意は無い。
さて、上手く見付かってくれたらいいんだが。
ヴォルフと黒曜もいる。
影の中にはテロメア、待宵、キレートもいる。
戦力に不足するとは思えません。
ここは裏街道なのかな?
周囲を見ても瓦礫がある程度、片付けられてはいるがそれだけだ。
僅かに殺気が漂っている。
どこかに、何かが潜んでいるがセンス・マジックで把握出来ていない。
クレヤボヤンスもだ。
だが、確実にいる。
その感覚をヴォルフも黒曜も感じ取っているようだ。
人影が無いにの空気がピリピリと震えているかのよう。
ああ、いいな。
こんな雰囲気も、いい。
矢が飛んでくるかな?
投槍かもしれない。
両側に半壊した建屋、どっちに潜んでいるのだろう?
後ろからかもしれない。
前からかもしれませんよ?
ああ、どうしてだろう。
ワクワクしている、よね?
暗殺目的とは思えない。
何か仕掛けて来るかな?
正面に3つの人影。
体格はバラバラだが、お揃いのロープ姿。
センス・マジックもクレヤボヤンスも通じないのはどうやら装備が影響しているようだ。
魔力を感じ取れません。
匂いをどうやって誤魔化しているのかは謎だ。
まあそこは考えなくていいか。
頭上のマーカーは黄色。
だが【識別】も効いていない。
ローブに付属しているフードを目深に被っているからなのかな?
どいつもこいつも、顔を見る事が出来ない。
口元しか見えていない。
殺気が僅かに漂っている。
後方からだが、振り返る訳には行かないだろう。
両側の建屋の中にも、ローブ姿の影。
弓に矢を番えているのが分かる。
どうやら囲まれたらしい。
窮地だ。
だがそれがいい。
オレも両肩に掛けた金毛羊革のコートの陰でグレイプニルを用意する。
左拳には老蠍獅子神のバグナグ。
さて、どうなりますか?
「そこを動くな!」
警告が飛ぶ。
だが攻撃されるのを待つ理由は無い。
視線でヴォルフに合図を送りつつ、呪文を選択して実行だ!
(ショート・ジャンプ!)
左側の建屋の上に跳ぶ。
さて、相手は何名いるんだ?
まずはそこからだろう。
「ッ?」
「待てって!」
足元を蹴り飛ばして転がす。
殺気の源はこいつだ。
だが、おかしい。
背中を駆け上がるような、強烈な殺気は感じない。
もしかして別口なんだろうか?
ローブの中から見えたのは?
法騎士にして男爵、ジョバンニか。
騎士としての姿ではない。
動き易そうな軽装だが見間違いではあるまい。
反撃許可ならある。
仕留めてもいいんだが、それでは情報が取れないよね?
オレの肩に黒曜が舞い降りる。
ジョバンニの後方にヴォルフ。
その影の中にテロメアが潜んでいる筈だ。
オレには見えていないが、キレートが近くにいる筈。
キレートの姿をした待宵もだ!
「話を聞かせてくれないかな?」
「語るに及ばん!」
だが。
ホーリーナイトでもあるジョバンニの手にあるのは短剣。
以前は戦ってみてもいい、と思ったものだが。
今は興味が失せてしまっていた。
本来の法騎士としての戦力ではあるまい。
立派な鎧兜は無い。
剣も無い。
期待は秩序法典を使ってセンチネルゴーレム?
いや、それをさせたらサニアの町が崩壊するだろう。
「捕らえろ!」
ジョバンニがそう号令した、次の瞬間。
短剣を持つジョバンニの腕が奇妙な動きをする。
もう片方の腕も同時だ!
膝が折れ、そのまま地面に突っ伏してしまう。
待宵とキレートだ!
完璧な奇襲。
まさに無駄が無い。
ゆっくりと近寄りつつ、オレが手にしたのは?
グレイプニルだ。
説得するには必要です。
先に確保しておこう。
(シャドウ・ゲート!)
梱包し終えると影の中に収納。
テロメアがヴォルフの影の中から出現、オレの影の中へとすぐに沈む。
待宵とキレートも続いた、と思う。
まあその辺りは任せていい。
では、他に気になる事を片付けよう。
瓦礫の中に半ば埋まるように鉄の棺桶が転がっている。
その数は6つ。
まだ突破出来ないとなれば、そうレベルは高くは無いのだろう。
そもそも【呪文融合】で色々と封じてあるから出たくても出られないのかも?
説得に応じてくれる奴が残っているかな?
襲って来ていた連中の半分以上は屠ってしまったが、気になる。
反撃許可もあったし、そこは問題ない。
死体が残っていないのだ。
その代わりに死体があった筈の場所にアイテムが残っている。
魔石やら魔晶石、革ベルトや短剣に矢筒と矢。
それにローブも幾つか。
細々とした物だが貰っておこう。
NPCの死体が消えている理由は良く分からない。
魔人と同じ扱いなのかね?
鉄の棺桶の中身を確認してみよう。
情報源は多い程、いいのだ。
やはりおかしい。
鉄の棺桶を解除、中身を確認しているんだが空だ。
アイテムを残して死体は消えている。
目の前には最後の1つ。
中身はあるかな?
あった。
怯えた表情で何かを呟いている。
呪文だ。
どうやら鉄の棺桶の中で状態異常が解けて回復ししてたらしいな。
HPバーが7割程、残っている。
「やあ」
「ヒィッ!」
優しく微笑んで声を掛けた筈だったんだが。
怯えさせちゃったかな?
呪文詠唱も途切れさせてしまったみたいだ。
まあいい。
先に【識別】しよう。
だが、遅かったみたいだ。
目の前ににた若い男の姿が、消えた。
あれ?
テレポート?
いや、サニアの町の外でなら分かる。
エリアポータル内部ではテレポートは基本的に使えない筈。
ショート・ジャンプ?
魔力の高まりは感じ取れていない。
アイテム特有の能力か何かかな?
そうでなければ強制ログアウトだが、相手はNPCだ。
やはりアイテムを疑うべきだろう。
で、何かアイテムが残っていたりする。
目の前にあるのはローブだ。
他の連中が残したのと同じに見える。
【防具アイテム:服】黒のローブ 品質B+ レア度8
Def+2 重量1+ 耐久値100 魔法抵抗[小]
魔力遮断[極大] 属性なし
魔力を吸収する特殊な処理を施してあるローブ。
表面は黒く、裏面には特殊な呪符を縫い込んである。
身に着けた者の魔力を大幅に遮断する効果がある。
これはいい物だ。
一点豪華主義で潔いアイテムだな。
潜入する際には役に立つだろう。
大きさが若干違っていたりするが、同じローブが5つか。
魔力遮断の恩恵を最も享受出来るのは間違いなくオレだな。
まあ普段使いは金毛羊革のコートでいい。
それにしても今日は色々な事が起きるようです。
視線があるのが分かる。
こっちは捕捉出来ているが、どうやらオレから離れて行くようだ。
何だ。
襲ってくれる訳じゃないのか。
追ってみようかとも思ったが距離がある上に人が多い場所に向かっているのが分かる。
仕方ないな。
観戦に戻ろうか?
説得でもしてみるか?
既に法騎士の身柄を確保してあるし、観戦に戻ってもいいんだが、説得を先に済ませよう。
どこか、目に付かない場所がいい。
移動しよう。
「は、話してなるか!」
「まあまあ、そう言わずに」
法騎士ジョバンニはグレイプニルで梱包されたまま、瓦礫の上に座らせてある。
その右隣にオレも座っていた。
気安く肩を組んでみたりして。
それに反対側にはテロメアも座っている。
見せ付けるかのように足を組んでいた。
素足だ。
法騎士ジョバンニを動揺させる為かな?
その脚線美はオレにまで効いている。
法騎士ジョバンニにもかなり効いている。
テロメアが何者であるのかは察しているようだが、抵抗出来る状況じゃない。
グレイプニルで梱包されていなくても、果たしてどうだったかな?
黄色のマーカーに状態異常を知らせる小さなマーカーが重なる。
魅了だ。
その度に質問をすると簡単に答えてくれる。
チョロい。
オレも説得しているんだけど、そっちは芳しくない。
だが心身ともに消耗しているのが分かる。
もう一押しかな?
あ、いかん。
テロメアが法騎士の首筋を舐め上げ、耳を甘噛みしているのが分かる。
まだ血を吸うんじゃない!
何が起きるのか分からないしな。
NPCがバンパイア化するとか、大いに有り得るし。
やっていい事とは思えない。
「クッ、ククッ!」
テロメアの与える刺激に全身を震わせていたジョバンニさんだが。
今度はより激しい反応を見せている。
理由は単純、ジョバンニの足先だ。
素足にはたっぷりと蜂蜜を塗ってある。
ヴォルフへのご褒美です。
くすぐったいか?
噛み千切られそうで怖いか?
どっちだ?
どっちなんだ?
「アッ、アアッ!」
ジョバンニさん、今度は別の意味で悶え始めていた。
テロメアがより密着している。
右脚がジョバンニの股間に乗せられ、腰近くまで露になっている!
危険だ。
危険過ぎる!
これ、試されているのはオレの自制心じゃないのかな?
まだ血を吸わせてはいない。
でも心配だ。
ジョバンニさんがこのまま昇天してしまいそうで心配だ。
ついでにオレの自制心も心配です。
「他の連中は雇った冒険者なのは分かった。で、私を狙うように指示したのって誰?」
「アッ、アッ!そ、それは!」
悶えつつもオレの問いに答えそうになってしまう法騎士ジョバンニさん。
その忠誠心が試されている。
どこまで耐えられるかな?
早く陥落して欲しいものだ。
オレが先に篭絡されてしまいそうです。
幸せそうな表情で昇天した法騎士ジョバンニを残し、崩落しそうな建物を後にする。
彼は死んでいない。
テロメアに血を吸わせてもいません。
珍しくテロメアが拗ねた様子を見せつつ、オレの影の中へと沈む。
まあいいじゃないか。
生かして帰す事も必要だ。
警告の意味でだけど。
オレを暗殺の指示を出したのは?
予想通り法騎士ルッジェーロだ。
面白くない。
予想通りというのは面白くない!
それにどうやら、法騎士達は色々としつこい事が判明した。
秩序法典の奪還、それに恐らくはサニアの町の奪還もだ。
どうやら暗殺稼業は雇った冒険者達に任せ、法騎士ジョバンニは監督の立場だったようだ。
秩序法典も所持していなかった。
つまらん。
それに昨日感じた、あの殺気。
あれ程の殺気の持ち主が、法騎士ジョバンニだろうか?
到底、そうは思えない。
やはり、つまらん!
いや、待て。
まだ別の何かがオレの命を狙っているのだと思えばいい。
お楽しみはまだある。
そう願いたいものだ。
では、観戦に戻ろうか。
多分、イリーナの試合は終わっている頃だろう。
ヘラクレイオスくんの試合会場はE面だ。
急行したんだけど、既に試合は始まっていた。
相手はスタンダードな編成のプレイヤー6名。
重装備の壁2枚に槍持ちの戦士、後衛に弓持ちが2名に杖持ちが1名。
ヘラクレイオスくんもスケルトンナイトが遊撃で行動する以外、基本的には迎撃だ。
展開はゆっくりとしている。
「キースさん、どこに行ってたんですか?」
「野暮用でね。ところで勝ったのか?」
「ええ。どうにか」
応援する面々の中にイリーナがいた。
そうか、勝ったのか。
応援出来なかった事は謝らないといけませんね。
「応援出来なくて済まなかったな」
「いえ、それより試合、始まってますよ?」
イリーナは苦笑するのみだ。
そう、ヘラクレイオスくんの応援も真剣にしましょう。
「結局、力押しで勝っちゃった感じ?」
「お互いに真正面からぶつかってからは見応えがありましたね」
その通りだ。
そこまでの展開は平凡そのものだった。
お互いに呪文で強化、相手の出方に対応する事を狙っていたように見える。
当然、サンシティフィ・アンデッド、サンシャインは使われていた。
それをマジック・フォートレス内で密集隊形で耐え、僅かに前進するという展開だ。
ヘラクレイオスくんもかなり慎重だったな。
配下のスケルトンナイトを早期に突撃させても良かったと思う。
慎重なのも過ぎると勝機を逸する事になるよ?
実際、オレとの対戦でも受身になる事が多かったしな。
「アデルちゃんの試合まで少し間があります。駿河の試合に間に合いそうです」
「間に合うか?」
「ええ、多分。アデルちゃんから連絡ありました。前倒しは無いようです」
「ここの試合は前倒しになってますから、間に合いそう!」
なら、いいか。
駿河とアデルの試合会場は町の中の試合場でA面だ。
移動しなくて済みそうです。
「ところで、野々村はどうなった?」
「勝ってます。圧勝だったみたいですね」
「動画も上がってますよ!」
そうか、勝ったか。
動画を見なくても、ある程度想像出来る。
勝ちパターンが定まっているからだ。
彼の布陣はスキュラクイーンが2体、サイレンクイーン、オーケアニス、ホーライ。
呪歌の合唱の支援を受けつつ、野々村とスキュラクイーン達が前衛から崩していた事だろう。
途中で投網で確実に前衛を1枚、行動不能を狙ったと思う。
通常の編成のパーティで対処は厳しい編成だ。
だが、対策されたら脆い所もある。
勝ったとなれば、目論見通りの展開だったと分かる。
駿河の戦闘スタイルも同じなのだ。
上手く嵌まってくれるかどうか。
いや、想定外であったのだとしても、対応が可能かどうか。
勝敗の鍵は序盤の展開だな。
相手パーティも呪歌の合唱は不可避だが、そこを突破したらチャンスがある。
どうなるかな?
「相手、ヤバくないかしら?」
「まあ仕方ないですかねえ」
全員、フィーナさんの言葉に同意するだろうな。
駿河の相手は、俗に言う所の戦隊チーム。
六色に彩られたお揃いの革鎧に兜。
得物は様々だが、恐るべきであるのはその連携だ。
隙はあるけど、少ない。
それに強敵なのも当然だ。
前回の無差別級団体戦で優勝したパーティだ。
オレが注目なのは、戦隊チームの黄色と桃色。
どちらも格闘戦で楽しめそうな相手だ。
但し桃色こと、各務は立ち技に限る。
女性プレイヤーだから事故は困ります。
雛壇を見る。
やはりサビーネ女王と竜騎士達がいる。
ジュナさん、それに師匠もいる。
どうやらオレの存在に気付いているらしい。
両者ともにこっちに手を振っている。
ジュナさんの場合は過剰だ!
何か用事でもあるのかね?
後で挨拶に行っておくべきだろう。
法騎士に襲われた事は?
それは報告しなくても、いいか。
大して重要な事でもあるまい。
「肉薄されたら勝てませんね」
「だな」
オレの両隣にはヒョードルくん達も応援に駆けつけていた。
野々村もいる。
どうにか、勝負が決まる場面に間に合ったけど、残念!
駿河の敗北だ。
但し、試合場の上に残っている数を考えたら駿河が押していたと言える。
戦隊チームは3名が戦闘除外に追い込まれていた。
だが、結局は駿河が陥落、それで勝負は終わってしまっている。
召喚主を落とされたら、そこで終了。
やはり狙われるよね?
「健闘はしてたんだがなあ」
「あの黄色の奴となら、個人戦だったらどう戦う?」
「真正面から戦うさ」
与作の問いには当然の回答をしておく。
オレだけではなく、与作も東雲も、リックやハンネスだってそうするだろう。
下がって勝機を見出せる相手じゃない。
「桃色ならどうします?」
「ちょっと困るなあ」
此花の問いに対する答えはこうなる。
正直な心境だ。
理由ならある。
今日の試合、最後を締め括ったのが桃色こと各務だった。
その戦闘スタイルは格闘戦スタイルそのもので、これまでとブレていない。
だが変化もあった。
投げ技、それに関節技もより多く駆使している!
マズいな。
対戦をする事になったら、事故が発生する確率が上がってしまう!
「ところで、アデルの試合は?」
「次の次ですね」
どうやら各会場の中でもこのA面だけが予定の時間通りに進行しているみたいだ。
それだけ拮抗した、面白い試合が続いているのだろう。
次の試合も期待していい。
「次は前回の無差別級団体戦、準優勝のパーティですよ!」
「あら。じゃあシェルヴィの所ね」
何?
それは見逃せない。
アデルはある意味で助かったかな?
シェルヴィの所属するパーティは堅実な戦い方を常とする。
しかも迎撃に回られたら攻略は簡単じゃない。
アデルの布陣では相性が悪い。
連携を崩す事すらも難しいだろう。
「あの試合場でキースさんが出場していたらって思いますよ」
「仕方ないさ。最初から資格が無い」
ゼータくんは残念そうだ。
オレもです。
シェルヴィ達を相手にどう戦うか?
そんな妄想が脳内を駆け巡ってます。
「地味な決着でしたね」
「全員、場外で終了じゃ仕方ない」
そう。
シェルヴォ達は相手パーティ全員を場外に弾き飛ばして終わらせてしまった。
強い勝ち方だ。
底を見せなかった所が凄い!
単に迎撃に留まる事も無い。
突撃時の連携が見事だ。
前衛の中央に位置するシェルヴィが突出するのと併せて左右の重戦士が展開、フォローに入っている。
後衛もシェルヴィの後退時に併せて壁呪文を多用、いい連携だ!
後方に回り込まれても冷静さを失っていない。
まさに阿吽の呼吸だ。
プレイヤー同士の連携をさらに洗練させているのだと分かる。
オレが以前に使った手は密集した中に敢えて飛び込む方法だった。
今回、相手チームも使っていたんだけど、完璧に対応されている。
ピットフォールでいきなり落とされている。
序盤にいきなり戦力を減らした不利が最後まで響いた形だ。
相手パーティも攻略しようと奮闘していたのは分かるんだが。
でも凡戦に見えてしまう。
それだけの差があった。
「次、アデルちゃんの番よ!」
「うわー、緊張しちゃってるわねえ」
皆が応援する声が高まる。
アデルの布陣は?
妖狐、ケルベロス、パイロキメラ、虎獣鵺、インペリアルタイガー。
火力重視、そして最初から最後まで機動力を活かして戦う為の布陣だ。
妖狐は支援もするだろうけど、火力重視に偏っている点は変わらない。
パイロキメラ、虎獣鵺を入れている辺りが良心的?
彼女なら獅子神やフェンリルを加える事だって出来る。
試合場が狭くなるからやっていないだけだろう。
「キースさん、アデルの相手ですが」
「ああ。危険なのがいる」
アデルの対戦相手で一番気になるのはバード系のプレイヤーがいる事だ。
名前は【識別】出来ない。
試合会場では常にそうだから仕方ない。
それでも分かってしまう。
半ソロバードのデッカー。
今回は個人戦じゃなく、団体戦で参加なのか。
他の面々との差が明らかにある。
固定メンバーではなく、飛び入りで参加した形になるのだろうか?
いや、全員がPK職って可能性もある。
さあ、これはどうなる?
相手パーティはどちらかと言えば重装備じゃない。
武技で距離を詰められてアデル自身が真っ先に狙われる可能性は高いだろう。
そうじゃなくともショート・ジャンプだって可能性がある。
そこをどう対処するのか?
やはり序盤が鍵だろう。
「勝ちました!」
「やったね!」
「お疲れ様ー」
アデルが意気揚々と観客席に戻って来ました。
コラコラ!
ちゃんと試合を観戦しなさい!
まあ確かに見事な勝利だったな。
壁呪文も使われていた。
アイス・フィールドやショート・ジャンプも使われていた。
それでも終始、足を全く止めずに勝ち切ったからな。
彼女らしい勝利と言えるだろう。
それにしてもデッカーだが、中身は誰だったんだ?
ショート・ジャンプでアデルを狙いに行ったのはいいんだが。
跳んだ先にアデルがいないのでは意味が無い。
その影響で歌も演奏も中途半端に終わってしまい、敗北の一因を作っている。
他のプレイヤーと意思疎通出来ていたのか、かなり疑わしい。
アデルの勝利は言わば必然だったと言える。
「そろそろ昼食にしましょ、動画もそこで見たらいいし」
「午後も観戦?」
「その前に交代でログアウトもね!」
今日もまだまだ、試合が残っている。
第一回戦は昨日と今日とで全て終えるそうだ。
膨大な試合数になる。
午後にも試合は残っているのだ。
まだまだ、楽しめそうです。
食後は試合場B面で漁師兄弟のパーティの酷い試合を観戦。
相変わらずの投網無双!
素敵だ。
相手のパーティが気の毒になってしまう。
その後は試合場A面で観戦。
無差別級個人戦が2戦、そして団体戦も4戦。
それで今日は終了です。
どの試合も相応に見所がある。
やはり楽しい。
だが、参加していたらきっと、もっと楽しかった筈だ。
もうね。
エキシビジョンマッチ、ありませんか?
相手が要るけど。
この場合は誰でもいい。
いや、強敵じゃないと困るよ!
「明日は第二回戦ね」
「勝ち残った全員の試合、予定は?」
「組んでおきましょう。私達は暇なんだし」
明日の観戦予定はフィーナさんに任せた!
オレは付いて回るだけでいい。
手間は出来るだけ省こう。
では、ここで解散らしいからサビーネ女王に挨拶をしておくか。
ジュナさん、それに師匠の顔も見ておこう。
本当はギルド長にいて欲しかったんだけどな。
文句の1つも言ってやりたいよ!
「試合を見ていて、どうじゃな?」
「どれもいいですね、楽しめてます」
挨拶もそこそこに師匠の問いに答える。
気になるのは雛壇に法騎士ストークがいる事かな?
それに町の重鎮らしい方々もいる。
ドラゴニュートにバードマン、ミュルミドンまでいる。
どうも何かしらの意図を感じます。
「参加出来ないけど、楽しい?」
「観戦するのも無駄になりませんから」
見て学ぶ事も出来ます。
嘘は言っていない。
脳内で自分ならどう戦うのか、妄想しているだけとも言えますけどね!
「ところでキースちゃん、変な感じ、しなかった?」
「はあ」
どうしようか?
実は襲われてましたとか、言っていいものなの?
余計な心配はさせなくていいか。
オレとしては個人的に襲われたいのだ。
「格別な事は何もないですね」
「そうなの?」
嘘は言っていない。
確かに襲われているけど、大した事じゃない。
実際、スキルは何もレベルアップしていません。
召喚モンスターもだ。
格別な事ではあるまい。
「気を付けてね?」
「何にでしょう?」
「たまにだけど、嫌な感じがするのよねー」
例の殺意の事か?
ジュナさんも感じ取っていたのだろうか?
だが明確に言える程じゃないらしい。
狙いはオレの方か。
ならば好都合。
迎撃の用意はしておくべきだね!
「のう、キース。そろそろ手伝いを頼むかもしれん」
「ああ、例の作業ですか?」
「うむ。例の作業じゃ。大会が終わったら逼迫しそうでの」
マナポーションの量産ですか、そうですか。
オレとしては嬉しさ半分って所だろう。
ゲルタ婆様は苦手なのだ。
マジックマッシュルーム、それに呪符用の紙を入手出来る機会だしな。
逃げる訳にもいかないだろう。
師匠にしてもオレにしても、お互いが避雷針の代わりになる。
それでいいのだ。
「もう少しゆっくりして頂いても」
「いえいえ、他に用件もありますので」
サビーネ女王の申し出をどうにか振り切って、辞去する事に成功。
今日はどうしようもなく体が疼いてしまっている。
格闘戦成分も不足だが、召喚モンスター達の戦力底上げを優先させたい。
空中戦、行ってみよう。
目指すべきマップの候補地は2つ。
E2u3マップか、W2u3マップだ。
第五の封印の件は忘れていません。
どこかにある筈。
ヒントでもいいから、何かがあって欲しいものだ。
では、E2u3マップから巡ってみましょう。
もう頭の中では空中戦の布陣を組んでいます。
黒曜、蒼月、スパッタ、イグニス、アイソトープでいいかな?
空中戦も久々な気がする。
そうそう、ついでに水晶竜とクラウドドラゴンにも挨拶はしておこうか。
サニアの町の上空を旋回している筈だ。
サニアの町の外に出て布陣変更は終了。
周囲にはテレポートで跳んでいるであろう他のパーティの姿も多い。
ドラゴンの姿も珍しくない。
それでもアイソトープの姿は目立つみたいだ。
さっさと挨拶を済ませに空へと飛ぼうか?
そう思っていた所で、来た。
危険な何かが来るぞ!
心臓を掴まれているかのような悪寒。
背中を駆け上がる戦慄は以前に感じ取ったのと同じ代物か?
多分、そうだ!
目の前で魔力が暴風のように生じる。
センス・マジックを使っていないのに、分かる。
そこに何か、黄金に光る巨躯の何かが出現している!
琥珀竜 モスドラゴン ???
??? ??? ???
??? ???
雪花竜 アラバスタードラゴン ???
??? ??? ???
??? ???
魔神の姿は?
影のようにだが、いる。
確かにいる!
琥珀竜の放つ光を背にしているからこそ分かる。
魔力では判別出来ない!
アラバスタードラゴンは合計で10体か。
各々に魔人の魔竜使いがいる!
おいおい、こんな戦力をオレだけで相手に出来るの?
サニアの町にはジュナさんと師匠もいる。
上空には水晶竜とクラウドドラゴンがいる。
対抗は出来るだろうが、当面はオレだけで戦うしかないのか?
『小僧!その命で罪を償うがいい!」
3つの影の真ん中にいたのはあのドワーフの魔神か。
得物はどうやら、ポールウェポン級の長柄。
そして何よりも放たれて来る殺気が尋常じゃない!
そのドワーフの魔神の両脇に佇むのはルーズリーフ野郎と妖艶な女魔神。
だが当面、ここで戦うべき相手は目の前のドワーフの魔神なんだろう。
オレに近寄って来る!
蒼月に騎乗し掛けていたけど、中止だ。
オレの肩にいた黒曜も蒼月の鞍の上に移動させる。
ここからはお楽しみの時間になるらしい。
「ククッ!」
笑い声が咽喉の奥で鳴っている。
いかんな。
どうやら先に格闘戦成分の補給が出来そうだ。
例え死に戻るのだとしても、それは間違いない。
『誰にも邪魔はさせるな!』
『勿論よ』
『面倒だけどねえ』
どうやらドワーフの魔神は1対1で戦ってくれそうだ。
そうか、そうじゃないと屈辱は晴れないだろうよ!
オレだってそうするだろう。
さて、オレは得物をどうしよう?
必要ないか。
どうせいずれ格闘戦を挑む形にするのだ。
このままでいい。
さあ、ここからがオレにとっての闘技大会だ!
色々と溜め込んでしまっているのが分かる。
そしてその全てをぶつけていい相手が目の前にいる。
悪くない。
実に望ましい展開だ!
「神降魔闘法!」「金剛法!」「エンチャントブレーカー!」「リミッターカット!」
相手は魔神、武技だけで届くような相手じゃない。
もっとだ。
せめて凌げるだけの最低限の強化が必要だろう。
前へと駆け出しながら【呪文融合】の組み合わせの1つを選択して実行する。
次は呪文で強化だ!
(フィジカルエンチャント・ファイア!)
(フィジカルエンチャント・アース!)
(フィジカルエンチャント・ウィンド!)
(フィジカルエンチャント・アクア!)
(メンタルエンチャント・ライト!)
(メンタルエンチャント・ダーク!)
(クロスドミナンス!)
(グラビティ・メイル!)
(サイコ・ポッド!)
(アクティベイション!)
(リジェネレート!)
(ボイド・スフィア!)
(ダーク・シールド!)
(ファイア・ヒール!)
(ヒート・ボディ!)
(レジスト・ファイア!)
(十二神将封印!)
(ミラーリング!)
これだけ注ぎ込んで、どこまで対抗出来るかな?
試してみよう。
試さずにはいられません!
装備
生大刀×6 迦楼羅剣×11 布都御魂×14
火焔光輪刀×16 七星刀×13 羅喉刀×15
護霊樹の杖×1 神樹石の杖+×1
如意輪錫杖×10 神樹石のトンファー+×2
亜氷雪竜の投槍+×2
双角猛蛇神の長槍+×1 グングニル×1
亜氷飛竜の騎士槍+×1 双角猛蛇神の騎士槍+×1
亜氷飛竜のパイク+×1 天沼矛×12
蛇王のメイス+×1
転生獅子のレイピア+×1 亜氷飛竜のエストック+×1
神鋼鳥の小刀+×1 神鋼鳥の刀+×1
神鋼鳥の斬馬刀+×1 神鋼鳥のコラ+×1
神鋼鳥のククリ刀+×4 神鋼鳥のデスサイズ+×1
怒炎蛇竜神の小剣+×2 蛇王の双杵+×1 蛇王の戟+×1
妙見秘鎚×14 星天弓×15 生弓矢×5
ダイダロスのペレクス×10 ダイダロスのラブランデス×9
冥府の槌×9 天魔の琵琶×13 天詔琴×2
怒りのツルハシ+×2 ミスリル銀の首飾り+×1
老蠍獅子神の隠し爪+×1 老蠍獅子神のバグナグ+×1
斧頭武竜の革鎧ほか 金毛羊革のコート×1
黒のローブ×5(New!)
蘇芳羂索×10 グレイプニル×1 レーヴァテイン×2
千宝法輪×1 千宝相輪×2 斧頭武竜のベルト
背負袋 アイテムボックス




