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龍王の卵に転生した俺は各地の天才をスカウトして王国を築く  作者: バナナ


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第45話 全班が同時に育つ日

空環城の朝は、五つの怒鳴り声で始まった。


「アルド、畑の葉が黄色い!」


「王様、炉の温度が揃わない!」


「新人が着地で脚をひねった!」


「狩場に大角猪の跡がある!」


「薬湯が固まった!」


転生九十九日目。限定管理へ切り替えたことで、住民たちは失敗を隠さず記録するようになった。それは良い。大変に良い。しかし全ての記録が俺の前へ積まれるとは聞いていない。


広場の石卓には、狩猟、農地、工房、治療、訓練の石板が山になっている。俺は一枚ずつ鑑定した。


黄色い葉は根腐れ。炉は送風角度。新人は着地時に右を見る癖。大角猪は三頭。薬湯は温度不足。


「農地は水を半分にせよ。工房は送風板を東へ三指。新人は左を見て降りろ。狩猟班は北の谷へ追い込め。薬湯は強火だ」


完璧な指示である。


その一刻後、畑の半分が乾き、炉の火が吹き返し、新人は左を見たまま柱へぶつかり、狩猟班は北谷で大角猪を見失い、薬湯は鍋底へ焦げついた。


ミーナが焦げた鍋を俺の前へ置いた。


「完璧ね」


「おかしい。鑑定は間違っていない」


「葉が黄色い畑は二枚あった。根腐れは東、乾燥は西。送風板は東へ向けたけど、朝の風が昨日と逆。新人は右を見てたんじゃなく、右耳で教官の声を聞いてた。猪は北谷へ行く途中で私たちの匂いに気づいた。薬湯は強火にする前に、鍋を温める必要があった」


一つずつ説明されるたび、翼が縮こまる。


「つまり、余の鑑定は正しかったが、皆の報告が足りなかったのだな」


「鑑定疲れで、あんたが一枚目しか見なかったの」


石卓を見る。確かに農地の二枚目が、一枚目の下から半分だけ出ていた。


ポロが心配そうに俺の目をのぞく。


「金色が薄いよ。昨日から何回鑑定した?」


「百二十……途中から数えていない」


「休んで」


「王が休めば、全班の成長が止まる」


「それが問題なのよ」とグラウが言った。


俺の胸に刺さった。


管理権を一人から切り離したのに、才能の発見と育成は俺の鑑定へ集まったままだ。俺が見なければ誰も伸びず、俺が見誤れば全班が間違う。それは支配回路を壊す前と、形が違うだけではないか。


「五日間、俺は答えを出さない」


広場が静まり返った。


「見捨てるの?」と新人の翼猫が不安げに尋ねる。


「違う。観測はする。危険を見つければ止める。だが最初の答えは各班が出せ。失敗、本人の希望、試した手順、結果を記録せよ。管理設備は温度、時間、危険だけを知らせる」


「鑑定しないで、本当に分かるの?」


「分からん」


俺が即答すると、不安がさらに広がった。


「だから皆で分かるようにする。五日後、俺がいなくても同じ問題を解けた班を合格とする」


まず狩猟班へ向かった。


ミーナは翼猫族三名、空牙狼四名、飛べない岩角トカゲ二名を連れて大角猪の痕跡を追っていた。泥に残る蹄は皿ほど大きく、低木の樹皮が胸の高さまで剥がれている。


新人が跡へ鼻を近づけた。


「北へ三頭」


「違う」とミーナ。「何を見た?」


「蹄が三種類」


「大きさが違うだけ。同じ二頭が往復してる。糞の温度と折れた枝の向きを見て」


俺なら鑑定で二頭と即答できる。口がむずむずした。


「アルド、言わない」


「何も言っておらん」


「顔が言ってる」


口のない竜の顔から、どう読み取るのだ。


新人は糞へ手を近づけ、枝の裂け目を触った。


「一頭は今朝、もう一頭は昨日。今朝の方は南へ戻ってる」


ミーナは頷き、追跡役を新人へ任せた。彼女自身は教官として後ろへ回る。


大角猪を見つけても、すぐ襲わない。風下へ二組、退路へ一組。飛べない者が低い防壁を作り、翼猫が上から小石を落として進路を変える。


初撃の矢は肩へ浅く刺さっただけだった。猪は怒り、想定より早く横へ突進する。空牙狼の一人が避け遅れた。岩角トカゲが防壁ごと身体を入れ、牙を受ける。石板が割れ、彼も二歩押された。


「撤退!」と俺は叫びかける。


ミーナが翼を広げた。


「右班、鳴子! 左班は攻めずに足跡を消して!」


金属音に猪が顔を向ける。その隙に負傷者を後ろへ引く。左班は土を蹴り上げ、もう一頭が戻る時に仲間の位置を読まれないよう匂いを散らした。


二撃目は膝、三撃目は目の前の地面。猪を倒すのでなく、走らせて疲れさせる。四度目の突進で足がもつれたところへ、岩角トカゲ二名が左右から杭を立てた。猪は杭の間に角を挟まれ、ミーナが首筋へ風刃を三度重ねる。


一撃ではない。皮を切り、筋を断ち、最後に血管へ届く。


猪が倒れた。


「追跡役、反省は?」


ミーナが尋ねる。


新人は息を切らしながら答えた。


「二頭目の位置を確かめず戦った。最初の矢を肩じゃなく、逃がす方向の地面へ撃つべきだった」


「合格。肉は半分だけ持ち帰る。残りは解体して、臭いを消してから」


狩猟班は一日分の肉、牙二本、丈夫な腱を得た。新人の記録には、成功だけでなく「二頭目未確認」と大きく刻まれた。


農地では、ポロが黄色い葉を一枚ずつ抜くのをやめていた。


水路を四区画に分け、土の湿りを朝昼夕で測る。根腐れ区画は排水溝を深くし、乾燥区画は藁を敷く。同じ黄色でも原因が違うことを、葉だけでなく根、土、日当たりで見分ける。


「管理設備は湿度を教えてくれる。でも、どの草が元気かは僕たちが見る」


臆病だったポロが、十人の前で説明している。声は時々裏返る。それでも質問が出るたび、知らないことは「明日測る」と答えた。


二日目、乾燥区画の湿度が上がりすぎた。藁が厚すぎたのだ。ポロは自分の手順書へ失敗を追記し、厚さを半分にする。三日目、葉の色が戻り始めた。


工房ではガンツが部品を作らず、壊していた。


修理用の留め具を三種類造り、それぞれ同じ圧力で引く。一本目は硬いが折れ、二本目は曲がるが戻り、三本目は留め穴から抜けた。


「一番強い物を選ぶのではない」とガンツ。「どこで壊れるかを選ぶ。主部品より先に安い留め具が壊れれば、交換だけで済む」


若い工房員が三本目の穴を一指狭くし、再試験する。今度は曲がって止まった。管理設備は炉温と試験時間だけを記録し、形の判断は職人がした。


治療班では、ミーナの助手たちが薬湯を小鍋に分けていた。大鍋一つを焦がせば全て失う。十個に分け、火の強さと煮出し時間を変える。


苦味、色、傷への刺激を比べ、患者本人にも痛みを聞く。俺が鑑定すると、最も効く鍋は分かる。だが治療班は、なぜ効いたかを自分たちで見つけた。鍋を先に温め、薬草を二回に分けて入れたものだ。


「十鍋のうち二つ失敗」と助手が記す。


「八つも成功した、ではないのか」


「次に百鍋作るなら、二十鍋失うってことです。失敗の理由が先です」


俺は感心して頷いた。


訓練班は、グラウが指揮していた。速い者と遅い者を同じ列に並べず、役割ごとに円を分ける。飛行班、地上防御班、伝令班。本人が希望する役割と、教官が見た適性を両方書く。


柱へぶつかった新人は、飛行を諦めると言った。


「飛ぶのが嫌になった?」とグラウ。


「怖い。でも、伝令なら皆の声を聞ける。右耳で声を探す癖も使えるかもしれない」


彼女は伝令班へ移り、目標を見ずに三人の命令を聞き分ける訓練を始めた。失敗した癖が、別の役割では才になる。


四日目、狩猟班が外へ出ている間に、畑の警報が鳴った。


土潜り鼠の群れが南畑へ侵入した。二十、いや三十。拳ほどの黒い身体が土を盛り上げ、根菜を下から食い荒らす。狩猟班を呼び戻せば半日はかかる。


「俺が焼く!」


「畑ごと?」とポロが青ざめる。


「焼かぬ。少し炙るだけだ」


皆の疑いの目を受け、俺は竜息を引っ込めた。


訓練班が実戦対応へ入る。伝令班は畑の盛り上がりを数え、農地班が水路を開く。水を大量に流せば作物も腐るため、ポロは三列おきに細い溝を満たした。


鼠が濡れた土を嫌って乾いた列へ集まる。


工房班は試験用の曲がる留め具と網を持ち出し、列の端へ低い罠を張った。治療班は刺激の強すぎた失敗薬湯を水で薄め、土へ撒く。苦い匂いに追われ、鼠が網へ走る。


第一波で七匹を捕らえたが、残りは網の下を掘った。訓練班が槍で穴を塞ぐ。鼠は方向を変え、貯水桶へ向かう。


「水を守って!」


伝令の新人が誰より早く叫んだ。


俺は桶の前へ降り、翼で退路を限定する。攻撃はしない。ポロの指示した乾いた列へ追い返す。


二つ目の網は、ガンツの留め具が曲がって衝撃を吸収した。破れず、二十匹以上をまとめて包む。逃げた鼠も、治療班の苦い煙と訓練班の盾で畑の外へ誘導した。


被害は根菜十二株。以前なら一畑を失っていた。


しかも狩猟班は戻っていない。農地、工房、治療、訓練が、自分たちの技能を重ねて守ったのだ。


捕らえた鼠を、ただ捨てはしなかった。


ミーナが帰還後に毒の有無を見分け、肉は燻煙用、脂は防水油、硬い前歯は小型の削り刃へ分ける。農地を荒らした敵が、保存食と水路部品へ変わる。


「食べるの?」


人間交易者が顔を引きつらせた。


「嫌なら食べなくてよい」と俺は胸を張る。「その分は余が仕方なく引き受ける」


「王様、さっき三枚食べたでしょ」とポロ。


「毒見だ」


「まだ焼いてないけど」


腹の中が急に不安になった。ミーナは俺の顔を見て笑い、無毒だと告げる。皆まで笑った。王の威厳は少し減ったが、害獣肉への抵抗も減ったらしい。


脂を塗った水桶は、未処理の桶より一刻長く水を保った。前歯の削り刃は細い留め具の調整に向く。狩猟班がいなくても捕獲し、帰還後に素材を見分け、工房と食料へ回す流れができた。


俺は成果を見て満足し、五冊の手順書へ合格印を押そうとした。


グラウが印板を翼で隠す。


「まだ。教官が自分でやっただけかもしれない」


「本人が成長したなら良いではないか」


「制度にするなら、教えられたかを試す」


各班で教官と代行者を入れ替えた。ミーナは狩りへ出ず、新人が追跡役へ別の新人をつける。ポロは水門に触れず、測定係へ配水順を決めさせる。ガンツは炉の火を見ず、若い工房員が温度記録だけで部品を焼く。


最初の再現試験は散々だった。


狩猟班は古い足跡を半刻追い、農地班は南桶を溢れさせ、工房班は留め具を柔らかくしすぎた。治療班は苦味を比べたが、患者へ痛みを聞き忘れた。訓練班の伝令は、二人の声を取り違えた。


教官たちは手を出したくて身体を揺らす。それを俺が翼で遮った。


「答えを言うな。どこで違ったかを尋ねろ」


ミーナは追跡役へ「新しい証拠はどれ」と聞き、ポロは測定係へ「溢れる前に何が変わった」と聞く。ガンツは完成品を曲げさせ、壊れ方を見せた。


二度目。狩猟班は温かい糞を見つけ、農地班は水面へ目盛り板を置き、工房班は留め具を交換可能な硬さで止めた。治療班は患者の返事を記録し、伝令は復唱で聞き違いを防いだ。


俺は最後まで鑑定しなかった。


同じ成功が、教官の手を離れて再現された。そこで初めて、グラウは印板を俺へ返した。


印を押す前に、俺は各班の代行者へ一つずつ意地の悪い問いを出した。


「狩場で教官とは逆の風が吹いたら?」


「手順書の方角ではなく、草と毛の流れを見ます。分からなければ獲物を追わず帰る」


「水門の目盛り板が割れたら?」


「桶一杯が満ちる時間で流量を測ります。板を直すまで畑を放置しません」


「炉温の記録灯が消えたら?」


「金属片の色を三人で比べる。一人の勘だけでは焼かない」


「患者が痛くないと嘘をついたら?」


治療班の代行者は少し迷った。


「嘘だと決めつけません。息、汗、傷の熱を見て、もう一度聞く。本人が話せない理由も探します」


最後に伝令班へ、俺とグラウが同時に別の指示を出した。新人は慌てて両方へ走らず、その場で声を張る。


「目的が違います! 王は東水門の確認、グラウ教官は西塔の警報。優先を決める人は誰ですか!」


以前なら、王の命令が先だと言っていた。今はグラウへ目を向ける。


「西塔は模擬警報。東水門を先に」


新人は復唱して走った。速さではなく、矛盾を止めたことへ合格印を押す。


五冊の手順書は、答えを並べた本ではない。観測し、尋ね、失敗し、戻るための本になっていた。


五日目、広場に五冊の手順書が並んだ。


狩猟班は追跡と撤退。農地班は原因別配水。工房班は壊れ方の試験。治療班は小分け製造。訓練班は役割別教育。各班に教官と代行者が一名ずついる。


食料は害獣肉と収穫で八日分。薬は十回分。交換可能な修理部品は二十組。成長試験と設備補助に使った魔石は十個から四個へ減った。


俺は最後に全員を鑑定した。答えを与えるためではなく、本人たちの記録と照合するためだ。


ポロの水利、ミーナの狩猟、ガンツの工房、グラウの指揮。全てがC級域の入口へ届いている。


「その大きな爪では、細かな作業を教えにくいでしょう。専用の作業補助具を作っては」と人間交易者が何気なく言った。


俺は翼を大きく広げた。


「道具は必要なら作る。だが余が全作業を実演する必要はない。細かな仕事は得意な者へ任せ、余は危険を見て、必要な資源を集める。それで皆が育った」


交易者は俺の爪幅を測り、ガンツと相談して先端を交換できる指示棒を作った。俺が小さな部品を直接つままずとも、図面の箇所を示し、重い試験台を支えられる。不得意を隠す道具ではなく、得意な者同士をつなぐ道具だ。


ミーナが俺の前脚の包帯を替えながら笑う。


「ようやく、自分で全部やらない方がいいって分かったのね」


「最初から皆へ活躍の場を譲っていた」


「初日に五班全部へ誤指示したのは?」


「成長を促す高度な試練だ」


五方向から抗議が飛んだ。


その騒ぎの外で、グラウだけが西門へ目を向けていた。荷運びに来た小獣の群れが、狭い門前で荷車を詰まらせている。


一頭の灰色の小獣が、誰にも命じられず車輪の順を変え、重い荷を外側、急ぐ薬材を内側へ並べ替えた。混乱が数呼吸で解ける。


グラウの目が鋭くなる。


「アルド。鑑定しないで聞いて」


「何だ」


「あの子、群れに埋もれてるけど、道を作る才能がある」


俺以外の目が、初めて逸材を見つけた。


挿絵(By みてみん)


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