僕とアイツと怒れる杜(もり)その②
先程まで余裕すらあるように見えた男だったが今は何だか焦ってるように見える。
ヤバい状況だよね・・・
そこまで考えた所で怖い現実に行き着く・・・
お荷物(僕)捨てたら簡単に逃げられる、とか思わないよ・・ネ?ネ?
青くなる僕、今は逃げるのに手一杯でそんな風には見えないが人間いざとなったら分からない。
思わずギュッと手に力が入っていた。
それに気付いたのか男が急に
「お前!名前は!!?」
「・・・え?」
「な・ま・え・は!!!?」
「ㇳ・・トシキ!!!」
「よし!!トシキ!!大丈夫だ!!絶対、お前を家に帰してやる!!!」
そう言い切るそんな彼を思わず見上げると僕に視線を向け『ニヤリ』と不敵な笑みを浮かべてた。
そしてまた彼は前に向き直り僕は何だかホッとしてしまい手の力が緩んでしまった。その瞬間ビュンっと横から殴り付けるような衝撃が走った。
バイクは男ごと横に吹っ飛び、結んでいたはずのジャケットの袖が解け僕は斜め前方に変な体勢で飛んでた。人生2度目の走馬灯がよぎりそうになるが根は鞭の様にしなり取って返すように今度は僕に真っすぐ向かって来る。
吹っ飛ばされた男は幹に叩きつけられる直前、目を見開き「よけろ!!っっ」と絶叫していた。
走馬灯なんて見てる場合じゃない!!!
その瞬間は全てがスローモーションの様に見え僕は今にも足に絡みつこうとしている根を膝を抱えるようにして回避そして反撃するように空振りした根っ子に向かって両足キックを繰り出した。
僕の人生最高の一撃!
に、なるハズだったソレは。
残念ながら僕のウェイトが足りずに【逆バンジージャンプ】の様に僕は空に打ち上げられて天地が逆転、今僕の眼下には一面グネグネの灰色が広がっていた。
『あー今度こそ2度目の走馬灯かなぁ・・・?』
根の灰色と空の青そして端っこに小さな緑色の何かがチラリと映り込み・・・そして僕は意識を手放した。
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それはいつもの材料補充の帰り道、毎度凝りもせず追いかけてくる馬鹿を巻いて杜まで来ると子供が枯れ木に実って・・・いや、ぶら下がってた。
『引っかかってしまって・・・』
とか何とか・・・
放って置くわけにも行かず助けようとしたまでは良かったんだが最早顔馴染みな例の馬鹿3人が近づいて来ていた。
何時もなら杜を恐れてココまでは追いかけて来ないんだが・・・チョイとからかい過ぎたらしい。
物凄い勢いなのが砂煙とバイクの吹かし方に如実に出ている。これはヤバい。
普段ならこの場所では絶対に使わないんだが・・・
俺は銃で枝を撃ち抜いた。
サイレンサーは付いてるが枝を傷つけたんだ意味は無い、もう杜は目覚めただろう。危険だが突っ切って行くしか無いと俺は腹をくくった。
後は馬鹿三人衆が諦めて帰ってくれる事を願うだけだ。
おいおい!マジか!中まで追いかけて来やがった!!
しかし諦めてくれるのを願ってたはずが正直ちょっと俺は面白くなっていた。
彼奴等の実力は知ってる。
かなりの場数も踏んでいて多少プライドが高いのが鼻につくが仕事の評判も良い方だ。だが今までアイツらと【ガチレース】はした事が無かった。
馬鹿だ馬鹿だとは思ってたがアイツ等マジ馬鹿だわ!
この杜の中で殺気丸出しで撃ちやがった!!
死にてぇのか!?ってもう死んだけど!!?
ん・・?ぁ・・・忘れてた・・・こりゃだいぶ怯えてんなぁ
トシキ・・・ね、あれだけ大声出せりゃ上等ちゃんと帰さねぇとな
しくじった、マジ痛ぇ・・・何本か折れてっかも・・・つっううか!トシキどうなった!?




