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僕とアイツと怒れる杜(もり)その①


僕を乗せたバイクは躊躇無(ちゅうちょな)く森へ突っ込んでいく、その間にも追手らしきバイクの音が着実に迫って来ていた。


森の中は枝と同じ灰色の根で埋め尽くされていてその見た目を良く言っても


  『気持ち悪い』   である。


落ちない様に必死にしがみつきながらも怖い物見たさで盗み見る、根っこ同士がグネグネと絡み合っていて、木をかわしながら走るバイク上からだと視界がグラグラしてまるで動いてるようにも見える。


着実に追いついて来ているバイクは全部が黒塗りで、乗り手も全身真っ黒この人達が悪の組織とかで夜、闇夜に紛れて・・・ならカッコ良いかもだけど今は昼に近い朝である。(正確な時間は分からないけど)


枯れ森はともかく背景に爽やかな青空とか・・・正直浮いてる。

場違い感ハンパない。


だけどバイク乗りとしては優秀なんだろう、


でもそれは目の前のこの人も同じ・・・いや、むしろそれ以上かも・・・。僕だったら徒歩でも転ぶ自信がある、それ程の地形だ。


黒塗りバイクは如何にも【新型】で砂埃をかぶっててもそれが分かるほどなのに対し。


男のバイクは手入れはされてそうだけどアチコチ傷だらけ車体のデザイン的に昔っぽいというか・・・バイクのスペックはどう見てもアチラが上だろう。


その上、荷物(僕)を乗せた状態で目の前の彼は軽々とそれを操ってるのだ。


決して【助けて貰ったから】と言う理由で依怙贔屓(えこひいき)してる訳では無い。


しかし男が追われてる理由は相変わらず分からない。(なんか銃持ってたしまさかコッチが悪者パターン?)・・・捕まったらどうなるのかと不安になる。


ボコボコの地面は酷くバイクをバウンドさせ口も目もろくに開けて居られないほどだが、どうしても気になってしまいチョイチョイうす目を開けて確認してしまう僕。



この人は何故追われてるのか?

一体、僕は何に巻き込まれたの?



森に入ってどのくらい経ったのか気が付けば黒バイク達は直ぐ側まで追い付いていた。しかし追い付かれはしたものの彼は黒バイク達(3台)を翻弄しながら走る。


枯れ森のだいぶ奥まで来たようだが進めば進むほど木の根は複雑に絡み地面は根っこで埋め尽くされている。最早(もはや)走ると言うよりバイクでアスレチック状態。


なのに男は迷いなく進んで行く。


むしろ余裕すら感じる男とは対照的に黒バイク達は必死の様相である。



とうとう黒バイク2台が両脇を固め残りの1台が前に塞がった。万事休す。


かと思いきや急ブレーキ。


しかしターン出来るほど木々の間は広くない。男は突如、木の幹にそのまま前輪を持ち上げ後輪を軸にして方向転換。


結び着けられたジャケットの支えと必死のしがみつきが無かったら僕は確実に振り落とされてた。


急な方向転換に気付いた黒バイク達は自分らも向きを変えようとして失敗。


うち1台(前にいた)が派手に転び何か叫ぶとホルスターから銃を取り出した。

仲間も何事かを叫んでるが直後に銃声がした。


一発目は大きくハズれ直ぐに二発目。

それもハズれたものの男の腕を少しかすったようだ。


「チッッ!馬鹿が!!」


と舌打ち&罵倒が聞こえた。

そして三発目が放たれようとした時、異変は起きた。


根が木々がグニャリと動き出したのだ。


「ひいぃっ!嫌だ!止めてくれ!!離せぇぇえええ!!!」


【それ】は銃を持った男に絡みつき締め上げる、黒バイクは銃で反撃するが、残弾を撃ち終わるまでもなく根に締め上げられ地中へと引きずり込まれた。



残りの黒バイクの2人はそれを半ば呆然と見ていた。



人ひとりが完全に飲み込まれた後、収まったかに見えた根がまた動き出し次の獲物を捕らえようと動き出す。


それはまるで胎動(たいどう)するかのように。


根のその動きと共に我に返った残りの2人は慌ててバイクを立て直し逃げはじめる。

さっきまで追う側だったはずが今は追われる側になり別々の方向に逃げ出す。


しかしものの数分で断末魔が2つ追加された。




その断末魔を遠くに聞きながら僕は『これはきっとリアルな夢だ』と現実逃避した。

だが無常にも【ソレ】の矛先は僕らにも向いて来ていた。






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