散策
散策の際に、このリュックをどうするかなーとなったので、とりあえず神域においておくことにした。
しかし神域に置いておく、なんていうアイテムボックス的使い方ができるかちょっと不安がある。なので少し試してみる。
ドアを開け、上がり口に放り込んでドアを閉める。無事にドアは消えた。
少し移動して、別の場所に空けられるかどうか確認。思った通りの場所にドアは出現。中を確認するときちんとリュックはあった。
時間経過はわからないけれど、アイテムボックス的使い方も出来るな、と確認したところで、スーちゃんを肩に乗せ、手ぶらのまま適当な方向へ散策する。
腰ほどまで伸びている草をかき分けて進む。こすれてくすぐったくはあるものの、堅い草は無いようで引っかかること無く進める。
体感で1時間ほど歩いただろうか。歩けど歩けど周りの風景は変わらず、うっそうと木々が茂っているだけだ。
しかし……
(乳首がすれて痛い……)
気恥ずかしいし、そんなにないのだからブラなんて要らないだろうとつけなかったことを後悔。
貧乳でもブラは必要だよ! うん! 次からは恥ずかしいけどつける! というか今からつける!
神域に飛び込み風呂場へ直行。ばっと脱いでブラを着用。この痛みが無くなるなら、ブラがどうとか気にしてられない!
(でもスポーツブラで良かったよ…… 普通のブラジャーだったら気恥ずかしいし、そもそも付け方もわからないし……)
そんなことを考えつつ、森に戻ってくる。
擦れて痛いのはさておき、結構歩いた気がするけれども体が疲れたとかは無い。スーちゃんが肩の上や頭の上を行き来してくれていたおかげか肩がこったということもないし。草をかき分けつつ歩くのは重労働なはずなのにな。この体、神様製だけあってスペックが高いのだろうか。
疲れてはいないが、森の中は少し蒸し暑いことも有り、少々汗をかいてしまった。だからだろうか、さすがにのどが渇いてきた。
そこでふと思いついたことを試してみる。氷でよく冷やされた水を思い浮かべ、口内に召喚。
狙い通り、冷たい水が口の中に流れ込んできたので、ごくごくと飲み下す。うむ、口の中に召喚できるようにとお願いして良かった。水筒いらずだしめっちゃ楽!
そんなこんなでスキルを確かめつつ散策することさらに1時間。散策中は生き物に出会うことも無く、人の住んでいる気配も感じられなかった。川や水辺があれば他の生物の痕跡でも見つけられるかなと思っていたけれど、水音も無いし、水辺も見つからない。サバイバルなら積んでいる状況だなこれ。水も食べ物もスキルで召喚できて良かったよ。
まだ疲れも感じられず体力的には問題ないが、わりと日も落ちてきたし探索を中断することにした。暗い中を散策するのは足下が見えづらく危険だ。そんな中を出歩いたとして、こけてけがでもしたら大変。回復スキルなんて物も無いし、助けを求められる人も居ない。
しかし、地面で休んでいるのも、何かに襲われたらと考えると怖いなぁ。
そう考え、朝まで木の上で休憩することにした。もし何かが襲ってくるにしても、そのときに慌てて木に登るよりは木から飛び降りる方が早いし。
木の上で休むなら、ついでに周りを確認してみたい、と幹が太く高そうな木に登る。体がちっちゃくて軽いこともあって、するするとてっぺんまで登ることが出来た。
てっぺんまで登ってみたが、そんなに他の木とは高さが変わらず、せいぜい2m高いかなといった程度だった。それでも風通しは良く、少しほてっていた体を冷やしてくれる。
涼しいなーと気を抜きつつ周りを観察。同じ程度の高さの木があちこちにあるせいであまり見晴らしは良くないが、それでも木の上だけあって遠くまで見渡せる。しかし見渡せる範囲には木が茂っており、川や平原、山といったものは見えない。
そのまま周りを観察していると、空が青から夕焼けの赤になり、紫になり、夜の暗さが襲ってきた。
太陽が沈んだら明かりが目立つはず! と思って日没まで待ってみたのだが、見える範囲に明かりは無い。近くに人は住んでいないのかな。
てっぺんあたりの枝は細くて心許ないので、少し下のあたりの枝に腰掛けて休憩。
しばらくはいろいろ確かめたいから、近くに人がいないのは良い。だけど、そのうち人と交流はしたいなぁ…… なんてぼーっと考えていたら、きゅう……っとかわいいお腹の音。そういえば晩ご飯もまだだった。
今回はお持ち帰り用うどんを召喚してみるか、と、近所にあった行きつけのうどん屋の持ち帰りうどんを思い浮かべ、「サモン、持ち帰り2玉!」 と念じる。
するとビニール袋に入ったうどん玉が召喚される。さっそくどんぶりを2つ呼び出し…… 置く場所が無いことに気づいた。そこでトレーも呼び出し、トレーを膝の上に。その上にどんぶりを並べ、1玉ずつ分けて入れる。
さて次は持ち帰りのお出汁を呼び出すかどうかだが、ふと思いついたので、うどんの上にちゃっちゃと掛けるようなイメージを持ちつつ「サモン、出汁醤油!」と呼び出してみる。狙い通りに醤油が召喚された。天ぷら用にソースや醤油を置いてあるところも多いからセーフだったのだろう。もし出なければ神域の調理場で探すかなと思っていたが、出てくれてほっと一安心。
そうやって準備したうどんの一つを、いつの間にか横に並んで座っていたスーちゃんにどうぞ、と渡す。スーちゃんは器用に突起を作り出し受け取ると、どんぶりを傾けて勢いよく飲み込んでいる。
そんな食事風景をほほえましく眺めながら、ボクも箸を呼び出しすすり込む。
うどんの刺身とは誰が言ったか覚えていないが、言い得て妙だ。新鮮な茹でたてうどんにのみ許された調理法。出汁の風味の効いた醤油を身にまとった白い麺が、するするとのどを駆け下りていく。あっという間にどんぶりは空に。茹でて時間のたった麺では、こうはいかない。のどで引っかかってしまうのが関の山だ。
これに卵でもあれば最高なのだが、と試してみたが卵は召喚できなかった。メニューに無い店も多いし仕方ない。卵くらいならこの世界でもあるだろう。むしろこの世界なら、鶏なんかより美味しい卵もあるのでは!?
まだ見ぬ卵に思いをはせながら、食後の余韻を楽しむ。
と、そうだ。もうひとつ確かめることがあった。
ごちそうさまでした、と手を合わせる。今回は呼び出したどんぶりなので消えることはなかった。どんぶりに残っていた醤油がきれいさっぱり消えているくらいだろうか。これなら洗い物いらずかなーなんて思うも、再度呼び出したときには新品同様になるから関係ないか。
さてさて、うどんの入っていた袋はと見ると、消えることが無く残っていた。袋が残るかどうかが今回確かめたかったこと。持ち帰りした袋を返却することなんて無いから残るだろうと思っていたが、予想通りに残ってくれてうれしい限り。よしよし、便利な袋を手に入れることができたよ。
袋に残った汚れは召喚した水で軽くゆすぎ、ゆすいだ水はスーちゃんが吸い取ってくれた。スーちゃんは器用だなぁ。一家に一台スーちゃんの時代だね!
そんなどうでもいいことを思いつつ、今日は神域の時間制限も恐いので、木の上で徹夜をすることにした。
任意の場所に召喚できるというのを逆手に取って、楽して水分補給する主人公。
(召喚できる場所を、感知できる範囲にいる対象の任意の場所、に変更しました)
14:00 一部追加しました




