第16章 光が戻る場所
徳山の一連の不正が明らかになり、
アストリア社は騒然としながらも徐々に落ち着きを取り戻し始めていた。
凪は資料をまとめ、柊はシステムの後処理を進め、
環は電話対応や関係部署への連絡を淡々とこなしていた。
そんななか――
ノックの音はせず、静かに扉が開いた。
「……入ってもいいかしら?」
振り返ると、美乃が立っていた。
まだ正式復帰前のはずなのに、その表情は迷いなく、気丈で、美乃らしい落ち着きに満ちていた。
「美乃さん!」
環が思わず立ち上がる。
「ちょっとだけ……あなたたちに、お礼を言いたくて。」
そう言って、美乃は3人の前に歩み寄った。
少しだけ笑みを浮かべて。
◇◇◇
■ 美乃の言葉
「柊くん、凪くん、環さん」
一人ひとりの名前をはっきり呼びながら。
「本当に……ありがとう。
まさか、こんな大事になるとは思わなかった。
でも、あなたたちが信じてくれたから、私は折れずに済んだの。」
環の目が潤む。
凪は胸を張ったように見えるけれど、耳が少し赤い。
「あなたたちに頼んで本当によかった。
あの日、調査をお願いしたとき、自分でも不安だったの。
でも、3人を見て――
あぁ、この人たちなら大丈夫だわって、心から思えた。」
柊は照れたように視線をそらした。
「……俺たちはただ、事実を追っただけです。
美乃さんが、そんなことをする人じゃないって……
最初からわかってましたから」
そんな柊の言葉に、美乃はやわらかく笑った。
「柊くん……そのまっすぐさ、変わらないのね。
そして環さん。あなたのあたたかさが、私を何度も助けてくれたのよ」
環は胸に手を当て、ぽかぽかを抱きしめるようにうなずいた。
「凪くんも……あなたの機転と優しさには、本当に驚かされたわ。
あなたがいたから、この事件は終わったのよ」
「え……!ぼ、僕ですか?
えへへ……まぁ、僕すごいんで……!」
柊に軽くツッコまれながら、凪が照れ笑いをする。
◇◇◇
■ 再開の約束
美乃は深く息を吸い、3人を見つめた。
「新システムプロジェクトが再開したら……またよろしくね。
今度こそ、みんなでいいものを作りましょう」
3人は自然と顔を見合わせた。
「もちろんです」
「任せてください!」
「一緒に頑張りましょう、美乃さん」
ぽかぽかとした光が、会議室いっぱいに広がった。
美乃はその光に包まれながら、最後にこう言った。
「あなたたちに出会えて、本当によかった。
ありがとう……心から。」
そして静かに会議室を後にする。
閉じられた扉の向こうには、再び歩き出す彼女の姿があった。
◇◇◇
3人の胸には同じ温度の光が灯っていた。
それは、誰かの信念を守った温かさ。
仲間とつないだ強さ。
そして――確かに未来へ続いていく光だった。




