第11章 22:30、動き出す真実
■ 静まり返ったアストリア
夜22:15。
アストリア本社はほぼ無人になり、
薄暗い非常灯だけが長い廊下を照らしていた。
3人は静かに会議室を出た。
柊が小声で言う。
「……環、絶対俺と離れるな。
凪、おまえは後方警戒だ」
「了解です、柊先輩。
“凪の領域・警戒モード”発動しますね」
「なにそれ……」
環が思わず小声で笑ったが、
手はしっかり柊の服の端をつかんでいた。
緊張と、不安と、
でも3人一緒だから大丈夫だという“光”。
そして22:30が近づく――。
◇◇◇
■ サーバー室前での罠
サーバー室の前に着くと、
案の定、カードリーダーが赤く点滅していた。
凪が静かにノートPCを開く。
「……やっぱり“細工”されてますね。
このカードリーダー、数時間前に誰かが設定変更してます。
正規のログじゃない……これは末松さんの技術ですね」
「つまり、ここに来れば“俺たちが怪しい”ように仕立てられるわけか」
柊が低く呟く。
「はい。でも大丈夫です。
僕らは先手を打ってますから」
環が不思議そうに凪を見る。
「先手……?」
凪はニッと笑った。
「美乃さんが疑われた時点で、
僕、アストリアの“改ざんされていないバックアップ領域”を探しておいたんですよ。
この仕掛けが動いた瞬間に、元データとの不一致ログが自動送信されるようにしてあります」
「えっ……そんなことできるの?」
環が目を丸くする。
「できちゃうんですよ〜僕は♪
しかも、このロックを解除しようとすると――」
ピッ。
凪がわざとカードリーダーに指を添えると、
ビーッ‼︎‼︎
突然、警告音が鳴り響いた。
「ほら、この通り。
“ロック解除の試行=不正者のログとして記録”
つまり、仕掛けた本人を逆に追い詰める罠です」
「凪……おまえ……やっぱり天才だな」
柊が思わず感嘆する。
「そりゃそうですよ〜柊先輩。
僕は“アークシステムズの兵器”ですから♪」
「兵器って……」
環は思わず笑いながらも、心の底から安心した。
◇◇◇
■ 来た――末松
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
警告音に気づき、
エレベーターから足早に駆けてくる男がいた。
末松学。
彼は顔面蒼白になってサーバー室へ駆け寄る。
「な、なんでだ……!
ロックは……解除できるはず……!」
彼が慌てて端末に触れようとした瞬間――
「アウトだ、末松さん」
凪の冷静な声が響く。
「その端末、触った瞬間、
“改ざん者本人のID”が上書き記録されるようにしてあります」
末松の顔が恐怖で引きつる。
「お、おまえら……!」
柊が前に出る。
「美乃さんを陥れるために、
彼女のログに改ざんを混ぜたのは、あんたの仕業だな」
「ち、違――」
「言い訳はいい。
おまえのログ、もう逃げられない」
「徳山に……言われたんだ……!」
末松が叫んだ。
「俺は、従っただけだ!
全部……徳山が……!」
◇◇◇
■ 真実が、動き出す
環は震えながらも、
すぐそばの柊の手をぎゅっと掴んだ。
柊はその手を握り返し、
「もう大丈夫だ。
俺と凪がいる」
その言葉に、環の目には涙がにじんだ。
凪は末松を見下ろしながら言う。
「末松さん。
あなたの“作られた改ざんログ”は全部暴かれます。
覚悟してください」
末松は膝から崩れ落ちた。
◇◇◇
■ その影の奥で
廊下の奥、暗闇で誰かが静かにその様子を見ていた。
――徳山和則。
「……クッ。
末松か……使えない奴め。
だがまだ終わらん。
次は……あの女、北澤美乃を……完全に潰す」
その目は冷酷に濁っていた。




