第6章(後編) カフェテリアの影 ― 狙われた環 ―
■ 連行される坂井の背中を見送ったあと…
柊は環の肩を抱き、
震える手をそっと握った。
「環……大丈夫だからな。
俺がいる」
環は小さく息を吸い、
かすかにうなずいた。
「……はい……柊……」
その時だ。
◇◇◇
■ 「柊先輩!!環さん!!」
走ってくる軽い足音。
凪陽翔だった。
会議室に戻っても環が来ない。
柊も戻らない。
胸騒ぎがして
途中ですれ違った社員から騒ぎを聞き、
慌てて駆けつけてきたのだ。
「どうしたんですか!?
環さん、大丈夫ですか!?」
息を切らして2人の前に飛び込んでくる。
柊が短く答える。
「坂井が……環に手を出した。
今、謹慎で連れて行かれたところだ」
凪の表情が一瞬で変わる。
普段の柔らかい目ではなく、
“凪の領域” に入る前の静かな怒り。
「……は?
坂井が?
環さんに……?」
声が低い。
いつもの凪じゃない。
深見が説明しようとすると、
凪は一歩環の前に来て
真っ直ぐに目を合わせた。
「環さん、痛いところないですか?
腕……見せてもらってもいいですか?」
環は少し恥ずかしそうに、
柊の胸元に顔を寄せる。
「さ、坂井さんに……ちょっとねじられて……」
柊が環の腕をそっと見せるように支える。
凪は優しいけれど真剣な目で確かめ、
深く息を吐いた。
「……よかった。
折れてはない……でも痕は残りそうですね。
ちゃんと冷やしましょう」
普段の“仔犬感ゼロ”。
プロのSEでもあり、
仲間を守るために戦う凪の顔。
「……許せないな。
こんなの、絶対に」
環を見て、柊を見て、
凪は静かに言う。
「柊先輩。
環さんのこと……
僕も守りますから」
柊はうなずいた。
「ああ。頼む」
深見が少し涙ぐみ、
若月と片倉もうなずく。
カフェテリアに残った人々も
2人の様子をそっと見守っている。
◇◇◇
■ そして――
柊は環の背に優しく手を添え、
凪がその反対側に立つ。
「……環、帰ろう。
一度会議室に戻るぞ」
凪も笑顔を作る。
「帰ったら、柊先輩のコーヒーより
僕のほうがおいしいの淹れますからね!」
環がふっと笑う。
「ふふ……楽しみにしてます」
3人は自然に寄り添い、
まるで“ぽかぽか邸”そのままの
あたたかい小さな隊列をつくって
カフェテリアを後にした。




