第6章(前編) カフェテリアの影 ― 狙われた環 ―
■ カフェテリア ― 情報収集のはずが…
環はコーヒーを3つ買い、
深見・若月・片倉の会話に自然と耳を傾けていた。
3人とも、美乃が疑われていることに強く反対していた。
「美乃さんが……そんなことするわけないよ!」
「末松さん、最近なんか妙だったんだよな」
「徳山の指示で“言われたことだけやれ”って……
あれ、なんか怪しくない?」
環は丁寧にメモを取り、
「ありがとうございます…!」と頭を下げた。
その瞬間──
腕を後ろから強く掴まれた。
「……何してるんです?」
坂井だった。
顔は笑っているが、目だけが笑っていない。
環は思わず息を呑む。
「つ、つかまないでください……っ」
坂井は環の腕をきつくねじり上げる。
「“事務員”が勝手に情報集めとは……
アークシステムズさんは余計なことをしますね」
周囲の社員がざわめく。
環の手帳が床に落ちる。
心臓が早鐘のように鳴る。
(こわい……動けない……)
坂井はさらに腕の力を強めた。
「黙ってればいいんですよ。
あなたみたいな人は──」
その瞬間。
◇◇◇
■ 「環──ッ!!」
柊が飛び込んできた。
カフェテリアの入り口から、
息を切らして環を探す柊の姿。
坂井が環を縛り上げているのを見た瞬間、
柊の顔が変わった。
「……おい」
低く、冷たい声。
「環から手を離せ」
坂井は一瞬たじろぐが、
知らぬふりをして環の体を押さえつけようとした。
「これは業務上の──」
柊の手が坂井の腕をつかんだ。
強い力で、環を彼の腕から引き離す。
「業務……?
誰が見てもただの暴力だろうが」
環を背に庇いながら、
柊の目は氷のように鋭い。
「次に環に触れたら……
俺が相手になる」
坂井は言い返そうとした瞬間──
◇◇◇
■ 深見・若月が支援に入り、片倉が坂井を押さえる
深見が環に駆け寄る。
「環さん!大丈夫ですか!?」
若月が柊に加勢しようと一歩前に。
そして片倉が背後から坂井の腕を押さえ、
動けなくした。
「坂井さん、それ以上は無理です。
自分、見てましたから」
坂井は顔を真っ赤にして暴れようとするが、
周囲の社員がどんどん集まってくる。
◇◇◇
■ 長岡部長と中根麻由美が到着する
2人が駆けつけ、状況を一目で理解した。
中根麻由美の厳しい声。
「坂井さん、あなた……環さんに何をしていたの!?
即刻、謹慎処分です。話は別室で聞きます」
長岡部長も冷たい表情で言う。
「坂井くん。これは看過できん。
すぐに連れて行きなさい」
坂井は顔をひきつらせながら連行されていく。
◇◇◇
■ 離れた場所から“黒幕”の目
少し離れた場所で、その様子を見ていた徳山。
歯ぎしりのような表情。
目つきが鋭くなり、口の中で低く呟く。
「……坂井のバカめ。
余計なことをしてくれた……」
(次の手を考えなくては……
このままでは……)
そう言い残して静かに立ち去る。
◇◇◇
■ 柊と環 ― 握った手の震え
環は解放された腕を押さえ、
少し震えていた。
柊が優しく肩に触れる。
「環……大丈夫か」
環はうなずこうとしたが、
声が震えていた。
「こわかった……
でも……柊が来てくれたから……」
柊は環の手をそっと握りしめた。
「当たり前だ。
環は俺が必ず守る。」
環の肩が小さく震え、
柊はぎゅっと抱きしめた。
深見と若月がそっと席を外し、
片倉が遠くから見守っている。




