54話 新ダンジョン
9月1日。今日は1限から授業がある。
教授はいつも少し早くきていて、チャイムと共に授業を始めるのだが、今日はチャイムが鳴っても始まらなかった。
講義室内がシーンと静まりかえった後、すぐにザワザワとし出す。
断片的に拾った話し声から察するに、どうやら人類側に声が流れて、ダンジョンの増設のお知らせを告げたらしい。
こっちはなにも聞いていないんだが。ダンジョンマスターにはお知らせないのかよ。自分のダンジョンの近くに増えてたら運営に影響が出るかもしれないのにさ。
大学では俺がダンジョンマスターだということは当然伏せているので、隣に座ってたやつにどこにダンジョン増えたんだろうなと話しかけて、人類に紛れておく。近くじゃないといいなと返事された。
はっと正気に戻った教授が静かにと声をかけているが、誰も聞いていない。
その後すぐに校内放送で教授達が集められて、しばらくすると大学が1日休校することになったと知らされた。大学の敷地内にダンジョンができてない限りは授業にそんな影響ないだろうけど、ひさびさの天の声に授業どころではないと判断したんだろう。
せっかく朝から大学に登校したのにと思わなくもないが、俺としても新しいダンジョンの場所とか数の情報収集を行いたいので休校は助かる。
大学を出て、遊太に連絡して聞こえた声の内容を教えてと連絡を送り、逆に研究者さんからは何か知らないかと連絡が来ていたので何も知らないですと返信しておいた。
後はSNSのニュースアカウントを見ながら家に帰った。
現在わかっている新しいダンジョンは東池袋、国会議事堂敷地内、高知県の浦戸、沖縄の美ら海水族館近く、京都の伏見稲荷大社近くの5箇所らしい。
国会議事堂にダンジョンを作るとはなかなか国に喧嘩を売っている。ここのダンジョンマスターはなにか国に恨みでもあるのだろうか。
逆に東池袋のダンジョンは個人住宅の敷地内に出現しており、そこの住人が自分がダンジョンマスターだと声明を出していた。誰にも迷惑をかけない良いやり方である。
天の声は今回、さらなる出現を防ぐために鍛えてダンジョンに侵攻しろ、みたいなことを言っていたらしいし、今後ダンジョンの完全攻略を目指す人が増えるのはおかしくない。そこでダンジョン攻略の優先度を下げるのは大切だ。
それにしても、沖縄のも京都のも高知県のも観光地が近いから相当設置ポイントを消費している筈なのだが大丈夫なのだろうか。
ダンジョンの完全攻略=ダンジョンマスターの死と知れ渡っている今、完全攻略する人は居ないと考えての場所選びだろうか。天の声的には人類にはもっとダンジョンの攻略をしてほしいみたいだし、今は落ち着いているとはいえ元々ダンジョンを2箇所完全攻略している小嵜もいる。
なかなかリスキーな選択だと思うんだけど……まぁ他のダンジョンが完全攻略されても俺には関係ないからいいか。
お昼頃になると、新たに福島県いわき市、神奈川県鎌倉市、北海道の稚内市の3箇所にダンジョンが確認された。
人類に声が流れてから数時間が経っている。相当な山奥とか、水の中にダンジョンを作ってない限りは、見つかってないダンジョンはもう無いとみていいだろう。
それに、俺の時は16箇所。今回のは現時点で8箇所。前と比べて数が半分になったと考えるとキリが良いしな。
夕方ごろになれば、ダンジョンの攻略情報もちらほら出てくる。
どこも既存のダンジョンと似たような感じらしい。序盤はポイントの制限があるからやっぱり似た構造になるよなぁ……
ちなみに国会議事堂と沖縄のダンジョンの情報は全く出ていない。国会議事堂は場所が場所で探索者が入れないから仕方ないとして、沖縄の方は今までダンジョンがなかったから、ライセンスを持った探索者が居なかったんだろう。
もしかしたら旅行とかで沖縄にいた探索者がいたかもしれないが、武器は飛行機に乗せられないし、旅行にそもそも武器は持って行かない。
探索者もいなかったら武器を売っている店もないわけで、まぁすぐに攻略に乗り出すのは無理なんだろうな。
俺が気にしなくちゃいけないのは東池袋と鎌倉のダンジョンだろうか。
場所が結構近いから探索者がそっちに流れそう。探索者も既存のダンジョンより新鮮味のあるダンジョンの方に行ってみたいだろうし。
人が来なくなることを考えてしばらくはポイントの節約を考えて運営しよう。具体的には9階に設置してる宝箱のアイテムを安めのやつにするとか。
あとは、これを機に探索者全体の人数が増えることを期待して、練習場の増設をしても良さそう。とはいえ、今あるのと全く同じものを作るのはつまらない。
「環境変化って階層ごとじゃなくてエリアごとに設定できない?」
『回答。不可能です』
無理か。出来てもおかしくないのに。
「なんで出来ないん?あと今後も絶対無理な感じ?もし今後出来るとしたらどうやったら出来るようになる?」
『情報を送信。少々お待ちください。……お待たせいたしました。内装に環境変化を適用できる床材を追加いたしました。希望の範囲に床材を適応させますと、そのエリアの環境が代わります』
えっ……そんなことしてくれんの。
うわ本当に内装のところになんか増えてる。
「これ他のダンジョンでも内装の項目増えてる?」
『回答。希望があったダンジョンのみ変更を加えております』
そうなんだ……知らなかった。てか今まで〇〇出来ない?とか〇〇ある?って聞いた時は無理なものは無理で無いものは無い、という回答だったのに、今回はなんで増やしてくれたんだろう。
新しいダンジョンが増えた時にできた新機能?それとも俺が知らなかっただけで元々あったんだろうか。出来ない理由問い詰めたのは今のが初めてだし。
なんにせよ無い項目を増やしてくれる可能性があるならもっとダンジョンが作りやすくなる。今後はもっと活用しよう。
とりあえず今回は元々ある木を使って森っぽいゾーン、増やしてもらった床材を使って、風が吹くゾーン、浸水しているゾーン、泥のゾーンがある練習場を1階の右側に作った。
それぞれのエリアに的を設置する。今回は丸い的じゃなくてモンスターの形をした的だ。あくまでもただの的なので動かないけど、雰囲気作りにはピッタリである。
左側のと比べるとより実戦に近い感じで練習できる場所となった。
ルールを書いた看板も一応設置して、最初の部屋にお知らせの看板を設置すれば終わりだ。
せっかくだから新しいダンジョンについてとお知らせの動画も撮ろうかな。




