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宣誓!人類の味方となるダンジョンにする事を誓います! 〜チュートリアルを装った攻略させないダンジョン作り〜  作者: 天沢与一


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[番外編]いかにして罪を認める事になったのか-奈那side-(三人称)

 その日、窓のない一室に3人の人物がいた。


 ダンジョン研究家の奈那、特殊建造物対策局所属の成谷、そしてつい最近防衛省の大臣に就任した八杉和彦(やすぎかずひこ)である。



「それで、僕をこんなところに呼び出したのはどうしてかな。もしかしてハニートラップとかだろうか」


「そんなふざけた要件じゃない事くらいはわかっていますよね」


「ごめんごめん。重苦しい雰囲気だったからさ。ちょっとふざけただけだよ。ええと、確か君は特殊建造物対策局で室長補佐をしている成谷さんだったかな。もう1人の方は残念ながら心当たりがないや。どこの誰さんだろうか?」


「私は弥竹奈那。普段は探索者をしているしがない人間だ。今日はよろしく頼む」


「よろしく」



 タメ口での自己紹介だったが、八杉は特に気にする事なく受け入れている。



「では時間も限られておりますので、早速本題に入りましょう。八杉大臣には今世間で問題になっている諸々の問題を全て事実だとハッキリ世間に言ってほしいのです」


「なるほど。今の発言で納得したよ。ここ最近の騒動は全て君が起こしていたわけだ」


「いいえ。あくまでも私は交渉役です。今回の件に関しては、責任者や首謀者は特にいません」


「現代の傘連判状というわけか。そこに僕も混ざれと?」


「結果的にはそうなるかもしれませんが、それを求めているわけではありません」



 どちらかというと、成谷が求めているのは全てをまとめて事態の収拾に動いてくれる人物である。


 裏切り者が出ないように参加メンバーは厳選し、履歴が残らないチャットツールで内容を話し合い、始めに各々の役割分担だけ決めて、交渉役、証拠を集める役、証拠を捏造する役、リークする役とそれぞれにそれなりのリスクのある仕事を任せた。


 計画を成功させるための相談は乗るが、そこに指示者はいない。


 バレた時に責任を分散させる意味もあるが、もし誰かの気が変わって責任者をリークする奴が出てこないようにするためだ。


 今の所、うまくいっている。


 1人だけ逮捕にまで行かなかったが、社会的信用は充分に落とせたし、3人は目標通り逮捕させられた。おかげでダンジョンを利用しようと群がっていた政治家たちの動きは鈍くなり、対策局の評判はガタ落ちで、国の信用問題にまで至った。


 次は落ちた信用を回復させ、信用回復の手段として対策局の代わりとなる組織、探索者ギルドを設立させる段階である。


 しかし、新しい組織の設立となると、官僚ではなく政治家の力が必要になってくる。


 成谷はそれを八杉に頼もうとしていた。



「あまり良く思わないでしょうが、八杉大臣の事は調べ上げました。政治家の家系でも無いのに政治家になり、今では大臣という立場に成り上がっている。いったい何をしてきたらここまで大物になれるのか興味がありましたので」


「別に調べ上げられて困るような事は何もしていないんだけどな」


「えぇ。そうですね。何も出ませんでしたから。相当うまく動いたのでしょう」


「全く裏がないとは思わないのかな?」


「まさか。何年私が政治家の元で働いたと思ってるんです。裏のない政治家なんている訳がありません。断言できます」


「真面目に国のために働いてる政治家も居るのに、それはないんじゃない?」


「政治家の家系だったのならまだしも、そうじゃないのに裏を持たずにこの政界で生きていくのは不可能なんですよ。それは、貴方自身が1番よくわかっていますよね」


「まぁね」


「そこでお聞きしたいのですが、大臣という立場に満足していますか?」



 調べ上げた、裏がある、なんて言われても余裕そうにしていた八杉の顔が一瞬だけ真顔になる。すぐに態度は戻ったが、その一瞬は隠せるものではない。



「さぁ。どうだろう」


「今後、ダンジョンから取れる資源は国を豊かにし、ダンジョンの存在はもっと大きくなるなるでしょう。それを手に入れられたら、絶大な力を持つ人間になれる。ダンジョンに手が届く立場になったのに、前任者のやらかしでそれどころじゃなくなってしまっていて、ガッカリしているんじゃありませんか」


「そんな事は」


「どうやったらダンジョンを利用できるようになるか、一切考えなかったと断言できますか?」



 八杉は答えなかった。



「権力を求めている立場からするとダンジョンの存在は魅力的で、利用したいと考えるのも無理はありません。しかしあれは人の手でどうこうできるような存在ではありません。裏を隠し通せるほどの能力を持っている八杉大臣なら、それはよくわかっている筈です」


「否定はしないでおこう」


「八杉大臣のような人ばかりだったらまだ良かったんでしょうけどね……それをわからない人がいるから対策局がぐちゃぐちゃになって、まともな組織じゃなくなってしまいました。リセットするしかありません」


「まぁ、それには同意するよ。だからと言って、炎上の内容を全て事実だと公の場で認める事はできない。そんな事をして僕になんのメリットが?世間的にはもしかしたら認められるかもしれないが、政界での立場がなくなる可能性の方が高い」


「この騒動はもはや問題が起こした人物が責任を取るだけでは収拾がつかなくなっています。問題が立て続けに公開されたせいで、国に対する信用が地に落ちましたので。これを回復される人間が必要です。他の方々もそれはわかってくれるでしょう」


「政治家って案外アホばっかだし、わかってくれるとは思えないな」


「それに、何もメリットがないわけではありません。探索者のための組織を作る予定でいます。貴方がそれを主導すれば、それなりの権力は得れるでしょう」


「それなり、じゃやっぱり気は向かないかな」


「国民のために事態の収拾に動いた、という実績が大切なんですよ」


「そんな実績があったところでなんの意味もないよ」



 成谷はその後も言葉を尽くしたが、八杉は公の場で騒動の全てを認めることも、探索者のための組織を新たに作ることも、前向きになる事は無かった。


 弱味を作らない、握らせない立ち回りをしてきた八杉にとって、多少のメリットはあれど、デメリットが大きすぎるからだ。


 騒動を認める事で責任を取らされるかもしれないし、探索者のための組織を作ったところでダンジョンから獲れる利益を握れる保証はない。


 けれど、成谷が騒動の元凶の1人だとバラした以上、こちら側に着いてもらうしかないのだ。


 成谷はちらりと奈那の方を見た。


 奈那はわかったように少し頷く。



「時に八杉さん。ダンジョンがどうして地球にできる羽目になったのか、考えた事はあるかな?」


「話題が急に変わったな。どうしてもこうしても天の声が作ったんだろう?」


「天の声が作ったとして、その目的は?」


「現時点では誰も知らない事だ。まさか弥竹さんは知っているのかい?」


「残念ながら知らない。私も必死になって調べているのだがさっぱりだ」


「なら、何が言いたいのかな」


「それでも人よりダンジョンに詳しい自信はあるんだ。 2028年12月21日。ヨーロッパのとある民家の壁に地球上に存在しない文字が突如として現れた。内容はテストテストという言葉から始まり、短い詩のようなもので終わった。

 2029年1月18日。アメリカの掲示板サイトで民家の壁に書かれた文字と同じ形態の言語の言葉が投稿された。内容は同じくテストから始まり、異なる次元からメッセージを送っている、これを見たものは応答は可能かという問いかけだった。

 さらに2029年11月。シンガポールのホテルでメモが見つかった。内容は異界の者よ、気づかないのか、と嘆くような文章だった。もちろん言語は地球上に存在しない文字で書かれている。さて、ここまで聞いてどう思った?」


「今君の言った発言が全て事実とは限らないだろう」


「内容を翻訳したのは私だが、謎の言語の出現は調べれば出てくる。確かに私は急に八杉さんの目の前に現れた怪しい人物でしかないが、どうしてこの場にいるのかをもっと考えるべきだろう」


「まさか、異世界はあるとでも言うつもりなのか?」


「私はその可能性が高いと思っている。そして、こう何度も接触しようとしてきた過去があるんだ。また向こうからの接触がないとは限らないだろう?ダンジョンで向こうと接触できるアイテムが出てくるかもしれない。ダンジョンなんてものを生み出せる生命体の相手だ。それ相応の人物じゃないと対応できないだろう。その時対処する人物はいったいだれになるのだろうね」


「それが僕だと?」


「さぁな。私は政治には興味ないんだ。ただ、ちょっと厄介ごとを抱えていてね。成谷さんには助けてもらう代わりに今の話を貴方にする約束を交わしたのだよ。別にダンジョンについてと異世界の可能性、言語の解読方法などはいくらでも話せるが……興味あるかな?本当はすぐにでも話したいのだが、この前妹に怒られてからは事前に相手の許可を取るようにしているんだ」


「そうだね……いくつか質問しても?」


「もちろん構わない」



 質問の内容は異世界が本当にある確率や、あると予想している理由についてだった。


 異世界の存在を確信するきっかけとなった蒼斗の存在は伏せつつも奈那は質問に嬉々として答えた。


 長文での回答に八杉が少し引いていたくらいだ。


 とにかく奈那とのやりとりで八杉も異世界がある確率は高く、今後地球と交流をする事になるかもしれないという事実には納得したらしい。



「奈那さんからの話を踏まえた上でお聞きします。ダンジョンに関わる実績作り、興味ありませんか?」



 ダンジョンを生み出せるような異世界の人間と交渉し、うまくいけば、地球に、日本に大きな利益をもたらせる事ができる。その時得れる権力は絶大なものになるだろう。


 あくまでも可能性の話であって、本当に異世界があるかもわからないし、交渉できる相手なのかもわからない。接触があったとしてもそれが日本相手になるかもわからない。


 それでも、八杉にとってその可能性はとても魅力的に思えた。

 頭の中で、公の場で騒動の全てを認めることのデメリットと、可能性に一歩近づくかもしれないというメリットを天秤にかける。


 そもそも、八杉がうまく立ち回れば全てを認めても立場を落とす事なく終わらせられるのだ。かなり面倒くさい手順を踏んで根回しをしないといけないが。


 頭の中の天秤が傾いた。



「僕の負け。いいよ。君たちの好きなように演じてあげよう」



 こうして八杉は2週間後、緊急記者会見を開く事になった。

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