83話 真相
この部屋にはソファの他にソファ用のローテーブルと普通のテーブル、それ用の椅子4脚がある。
食事は普通のテーブルの方に乗せてもらい、ついでに椅子を1脚持ってきてもらった。
瑛士が誕生日席に座って、姉妹の反対側に俺と蓮見が座る。
「遠慮なく食べていいわよ」
料理のラインナップは昨日ビュッフェで食べたものと似たような感じだが、お皿に綺麗に盛り付けてあって、全く別物に見える。
「いただきます!」
俺らが料理に手をつけると、蓮見も恐る恐るといった様子で食べ始めた。
「ほんとになんなんだよ、あんたら」
「ただのしがないダンジョン研究者だ」
「その妹よ」
「その協力者かな」
「俺はね、友達!」
「オレがドラゴン出したって知ってるんだよな?なんでオレのご飯用意して部屋も用意して今一緒にご飯食べれるんだよ。つーかドラゴンどうなったわけ?」
ようやく自分が出したドラゴンについて聞いてきたな。思ってたより遅かった。
まぁ知らない場所で起きてドラゴンのことを気にする余裕はないか。
「ドラゴンは倒した。じゃなきゃ呑気にトランプしてない」
「は?うそだろ?」
「こんなところで嘘ついても仕方がないだろ。信じられないならテレビつけるか?たぶんニュースやってるだろうから」
「……見る」
テレビをつけた。
いくつか番組を変えてみて、ちょうどドラゴンの映像を映している局で止めた。
あ、俺らも映ってる。状況的に隠遁者スキル切って飛んだ時のやつかな。……こうして見ると確かに雑面の模様ちょっと気持ち悪いかも。
それ以外のタイミングでジャンプした時の姿は映っていなかったので、隠遁者スキルの効力はカメラにも効くらしい。なかなかすごい。
ポイズンスライム達がドラゴンを襲っているシーンもしっかり撮られていた。最後に俺がポイズンスライムを殺すところも。
ヘリは結構遠くにいた気がするのだが、ここまで綺麗に映るんだな。顔隠しておいて良かったと心底思う。
映像が終わった後はコメンテーターが映像に映っていた2人は誰なのかと言及していた。また、SNSの投稿も紹介されており、そこにはがっつり瑛士の姿が写った写真が出ていた。内容は助けられたとか怪我治してもらったとかでプラスな意見ばかりだった。
ただ、コメンテーターはダンジョンマスターとして何か知っているなら説明責任があると割と非難する形で追求していた。
何があったのか知りたい気持ちはわかるが、ダンジョンマスターだからと責任を押し付けるのはどうかと思う。
「まっちー……町田……お前まさか町田のダンジョンマスターなのか?」
「そうだよ。改めて同じダンジョンマスター同士よろしくな」
というかまっちーで気づいてなかったんだ。
「よろしくできるわけ無いだろ。せっかくオレが出したドラゴン倒されてるんだから」
「俺は人類の味方を公言してるから手を出さない訳にはいかないんだよ。たまたまここに来ていなかったら関わってないし、別に府中ダンジョンのマスターと敵対しようとも思ってない。俺はただ平穏に生きていきたいだけで」
「オレだって!……オレだってただ普通に生きられたら良かったんだ」
びっくりした。急に怒鳴るなよ。
……でも、感情的になってる今なら事情を聞き出せるか?
「ドラゴンを街中に出すのは普通じゃないと思うけど」
「それは仕方がないだろ?あいつらが邪魔してきたんだからさ」
「あいつらって言うのは、特殊建造物対策局のやつらのことか?」
「なんでそれを……そうだよ。宮吉って職員。急にオレん家に来て、オレを無理矢理車に入れて、協力してくれるまで逃さないって。オレは大人しく生きていたのに、それをぶっ壊したのは向こうなんだ。だからオレも全部をぶっ壊してやろうと思ってドラゴンを出した。それのなにが悪いんだよ」
……え、宮吉?あいつこんなところまで来てたのかよ。
宮吉が蓮見に接触しなかったらドラゴンは出されていなかったんだから宮吉が元凶じゃん、と俺は思うが被害に遭った人達は今の説明では納得しないだろうな。
というか、蓮見の近くにいくつかあった遺体って……もしかしてその中に宮吉の分もあった?
「なるほど。事情は分かった。少し気になることがあるのだが、いくつか質問いいだろうか?」
「勝手にしたら?答えるかは内容によるけど」
「ではまず一つ目。今キミは何歳かな?」
「16」
「ということは、今は高校1年生だろうか」
「そうだけど。それがなに?」
ということは、ダンジョンマスターになったのは中学2年生かよ。わっか。
いや……待てよ。そういうことか?
奈那さんが確認したいのは……
「まっちーが言うには、ドラゴンを出現するには相当なポイントが必要らしい。普通じゃ稼げないほどのポイントだ。それを一体どうやって用意したのか。
府中ダンジョンが出来てから、この近くに通っていた中学2年生の男子3人が行方不明になっていた。そして今年5月、高校1年生の女子生徒が行方不明なった。これは私の予想だが、行方不明になった彼ら彼女らは君の知り合いだったんじゃないだろうか。
そして、行方不明になった原因は君で」
「“拘束”」
手が空中を触るような動きをしてたから思わずスキルを使った。
奈那さんの予想はたぶん当たっていて、それは知られたくないことだったんだろう。
5000万のドラゴンを出せたくらいだ。他にも攫ってきた人はいるかもしれないし、ポイント的におそらく攫った後もしばらくダンジョンで生かしていたんだろうな。そこでなにが行われてたかはわからないが。
「……ここでモンスターを出すのはやめてくれ。もしやる気なら次は口を塞ぐ」
「……くそっ」
「失礼。君にとってはあまり知られたくない事だったのだな。なに、ダンジョンを使って何をしてようと気にすることはない。君が故意で同級生を4人攫っているのと、悪意もなくダンジョンで1度に20人以上の死傷者を出した瑛士くん。人類の私からしたらさほど違いはないからな」
「そうかよ」
ダンジョン来た人が勝手に死ぬのと、ダンジョンに来たくなかった人を無理矢理連れてくるのじゃ、俺にとってはかなり違うんだけどな。
あまり蓮見を庇う気になれなくなるくらいには。
「隠したかったって事は、たまたまダンジョンに来たとかじゃなくて、あんたの意思で同級生を攫ったって事でしょう?なんでそんな事したのよ。相当リスクあったでしょうに」
蓮見からの回答はない。これは言いたくないのか。
「ちょっと。私からの質問には答えられないわけ?」
「どうせ金持ってて幸せに生きてるお前らにはわかんねーよ」
「お金を持っているからと言って幸せとは限らないわよ。まぁ無い人よりは恵まれているとは思うけどね」
「どうして誘拐する事になったのか。ある程度予想はできるが、口に出すのは辞めておこう。また怒らせてしまうからな。まっちー、拘束はもう解いて構わない」
「いいんですか?」
「大丈夫だ」
「わかりました」
言われた通りスキルを解く。
蓮見の手は動かなかったので、今は攻撃の意思がないようだ。
「さて。君の事情は大体わかった。まだ気になる点はあるが、これ以上は詰めても仕方がない。最後に質問をしよう。君これからどう生きていくつもりだ?」
「それは……」
ドラゴンを街中で出し、政府の人間を殺してしまった以上、このままじゃ普通に暮らしていくのは無理だろうな。
向こうは蓮見がダンジョンマスターだとわかって蓮見の元を訪れた訳で、ドラゴンを出したのも蓮見だとたぶんわかっている。
危険人物を放っておく理由がない。
「行く当てがないなら、私と一緒に来ないか?」
……まじ?




