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第一話:僕は『人』になりたかった

 ――僕はヒトの形をしているだけの、この世界にとっての異物。


 生まれた時から空っぽな僕はいつもどこか疎外感を感じていて、フラフラと亡霊のように寄るすべなく漂うばかり。

 僕のことをみんな視線で追ってくれているはずなのに、僕はみんなが当たり前に見ている景色が見えていないような、そんな漠然とした違和感が延々と拭えない。


 ……なぁ、教えてくれ。

 君たちは一体互いの何を見て、ヒトの形をしているだけの肉の塊を『人』だと判断しているのか?





「この人でなし!!貴方もあいつと同じ『ヒトデナシ』よ!!」

「なぜわからないんだ……!お前には人の心がないのか……ッ?!同じ、ニンゲンのはずだろう!!」

「……」





 この手の言葉をよく紡がれた。お前はヒトデナシのバケモノだと。

 文字通りヒトを指して、同じ人とは思えない非人道的な振る舞いをした際に向けられる言葉だ。その言葉の定義的な意味としては、恩情や人情を感じない様子を表すらしい。


 彼らは僕のことを全力で貶しているのだろうけど、それが効果を為しているとは到底思えない。

 なぜなら咎められている僕自身が、人という存在がどんなものか理解できていないのだから。

 突然よくわからないもので例えられて、それに当てはまらないと言われても何のことやらという気持ちが先行する。


 その言葉で僕がなにかしらダメージを負うことはない。

 しかしそう何度も言われると引っかかることもある。


「……君たちが当たり前に口にする、『人』っていうのは一体どんなもの?」





 命題:『人』とは何か。


 とあるきっかけからその事についてよく考えるようになった。

 文書を漁り、賢しげなヒトに問う。しかし示される応えのどれもが僕の琴線に触れることはない。


 人体を構成する元素を除いた二十一gの魂と呼ばれるナニカこそ人の根源だ、と告げた者がいた。

 あるいはこの世の万物は神の創造物であり、人もその大いなる存在が生み出した世界の欠片である、と告げた者もいた。


 ――あぁ、今思い返せば彼らは存外、この世界の摂理としての、ある種正解を告げていたのかもしれない。


 だがそれらは僕の求めていた答えではなかった。





「ふむ……人とは何か、とても難しい問いだね。世の哲学者も明確な答えを出せていない根源的な問いの一つだろう」

「先生でも難しい……?」

「そうだね。しかしまぁ、君がそんな疑問を抱くきっかけを与えたのは私なんだろう。なら一つの視点として、私なりの回答を提示しようかな」


 生きるための熱意も死ぬほどの失意もなく、フラフラと彷徨う僕に手を差し伸ばすヒトがいた。

 少し特殊な孤児院を経営しているらしい彼に、行き場の無かった僕は彼という入力が為すまま着いて行き、孤児院で生活する事になった。

 人について考える事になったのも彼、『先生』の経営する孤児院に住み着く事になってからだった。


 最初にヒトデナシとは恩情や人情を感じない存在と述べたが、そんな僕も先生に対する恩は持っていた。……人情というのは未だ、よく分からないが。


 当たり前に争いがなく、温かい布団やご飯もある。まともな親も親戚もいない世の弾き者である僕たちを、この優しい小さな世界に導いてくれた彼はみんなにとって恩師だろう。

 そんな小さな世界で僕は周りの子たちと上手くやれているとは到底言えない状態だったから、わからないなりにせめて努力はしようと思った。


「――私にとって人とは、その人の生きる意思そのものだ。我々人間だけがいつか己に終わりが訪れることを知っている。そしてその終わりにどう向き合うか、この世界の記憶になにを刻むのか……その応えを体現する姿こそが人であると回答しましょう」


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 彼の姿形はもうはっきりと認識できない。しかしそれでも彼の優しい声と教えはまだ刻まれている。


「生きる、意思……そんなもの僕には……」

「それを見つける過程もまた人生なんだよ。自分の大切なものを見つけて、それを守ったり育てたり慈しんだり……それがいつの日か、明日を生きる意思となるんだ」


 それがあるからみんなには世界が色づいて見えているのだろうか。

 生きる意思が見せる一人ひとりの命の輝き。


「そんなものが手に入ったら……嗚呼、とっても素敵だろうね」










 目を瞑れば、断片的な記憶が次々と呼び起こされる。これが走馬灯というやつなのだろうか。


 夕陽が差す丘の上で誰かが笑いかける。朱い空と重なるような儚く明るい微笑み。

 この場所を僕は覚えている。孤児院を抜け出して少し歩いたところにあるこの場所で、晴れた日はいつも『先生』が迎えに来るまで誰かと他愛もない会話に身を委ねていた。


「「僕は人と違う」なーんて……どうして男の子はそんなに特別な存在に憧れるのかしら。そういうの、確か……チュウニビョウって言うのかしら?」

「……ふん、君はいつも少し主語が大きいよね」

「あら、怒らせちゃったかしら。そうよね、私にとって今日の夕食がカレーかシチュー、どちらなのかと同じぐらい、あなたにとっては大事な事なのよね」

「……どうやら、今日の夜はシチューらしいよ」


 その時は、真剣な悩みを揶揄われたような気持ちになり、ほんの些細な意地悪のつもりで朝に聞いた献立を告げた。


「まぁ、思わぬネタバレを受けちゃったわ……けれど、どちらも好きだから構わないわね」

「じゃあ大事なことじゃないじゃん」

「うふふ……いいえ、大事なことよ。例えばカレーで溢れた世界があって、その中にシチューがあったとしたら具材は同じだけどそれは特別なものよね」

「カレーで、溢れた世界……?」

「いいから聞いて。……でも、私はそのどちらも大好き。貴方がシチューでも、私が美味しく食べてあげる。だから周りと違うことを卑下する必要はないの。カレーにはカレーの、シチューにはシチューの美味しさがあって、それぞれ好きな人がいるから」


 彼女の話はいつもユニークで捉え所がない。

 とはいえそれは本来の意味、つまり特有という要素が強いのだが。

 そしてその事を、彼女のユニークな世界観から引用して伝える。


「なら、そうだなぁ……カレーで溢れた世界なら、君は肉じゃがだ」

「うふふ、私、肉じゃがも好きよ。でも、こーんなに可愛らしい女の子を肉じゃがに例えるなんて少し失礼だわ。もっと可愛らしい響きの……そうね、ポトフとかで例えてちょうだい」





 僕より後に孤児院にやってきた彼女は気付けばいつも僕の隣にいた。

 人は脆くて、すぐに傷ついてしまう。

 しかし巡る淡い記憶の中で彼女はどんな時でも楽しそうに笑っていた。


「――だって、笑っている私が一番可愛らしいでしょ?それにあなたがよく目で追ってくれるから、レディとして恥ずかしくない姿を見せないと」

「へぇ、女の子は視線に敏感ってほんとなんだね」

「うふふ、乙女の見せる姿は完璧でなきゃね♪」


 彼女の笑顔は外の世界に出ても変わらなかった。

 そして僕にとって僥倖だったのは孤児院を退所して先生の教えが受けられなくなっても、彼女の導きがあったこと。


 彼女に倣えば人らしく生きるのに大きな問題はなく、ヒトデナシの僕でも人の営みに混ざることができた。与えられた役割を熟すことで誰かの役に立つことができたように思う。


 彼女に手を引かれながら踏み入れた外の世界で、僕はさまざまな人の営みを知見した。

 案外こんなものかと思うこともあれば、人でなしと言われた僕ですら及びもつかぬような悍ましい姿を見てしまうこともあった。時には感謝され、逆に助けられたことも。






 彼女に倣って人らしく。

 所詮それは人のフリでしかなかったが、人のフリは学習を重ねていくにつれラグなく実践できるようになる。手本は常に隣にあったから、ヒトの行動の分析力はどんどん身につく。


「……ねぇ、もし来世というものがあるならあなたは何になりたい?」

「……来世、か……」


 そして掲げた命題に対して数多の解を出力した。

 されどこの世界に対する異物感は拭えず、結局生きる意思や、大切なものといった存在とは出会えないまま終わりを迎えた。僕は最後まで『人』としての命の輝きを自ずから放つことはできなかった。


「……欠陥だらけでみんなにとって当たり前のことを当たり前にすらできない僕の隣で、君だけはしゃがんで僕の目線に合わそうとしてくれた。そして、世界はこんな色をしているんだよって優しく教えてくれた。……君が僕を、人の世界に導いてくれたんだ」


 人間は一人ひとりが持つその光を頼りに世界を見通す。その輝きは一等眩いものだったり、淡く儚いものだったり、綺麗だったり汚かったり、十人十色ではあるが共通して存在するものだ。……僕を除いて。


 頼るべき己の光がない僕には世界の色が見えない。だからみんなが見ている景色と整合性が取れないの だろう。


「そして、君を通すことで知識として『人』を知った僕は――」


 だが決して何も得られなかったわけではない。

 退屈で矮小なこの生命体の記憶の始まりから終わりにかけて燻っていた、あるいは新たに芽生えた気持ちの証明。

 それはなんて事ない、単純なこと。





「僕は、君たち()に憧れた」





 ずっと憧れていたんだ、人の放つ命の輝きに。

 たとえ世界に色がなくても、彼女たちの命の輝きを感じることはできた。そのたびに人への羨望が強くなる。


 僕も、全身全霊で世界に己の存在を刻むべく生きてみたかった。

 制御できないほどの激情や愛情にこの身を動かされてみたかった。


「自分自身の輝きをもって、君たちと同じ景色を視てみたいと思うようになった」


 生まれた時から空っぽで灰色な僕は、その空虚な胸の内を埋めるため人心を求めて彷徨っていたんだ。




 

 ……嗚呼、忘れたくないな。彼女のことも、この願いも。


「もし……もしも本当に来世なんてものがあって……そして、こんな分不相応な願いが許されるのなら」





 ――僕は君たちと同じ、『(ヒト)』になりたい。





 ***





 記憶の始まりを特定できないことと同じように、ヒトは記憶の終わりを自覚できない。

 僕も例に漏れず死の瞬間の記憶はない。


 しかし、本来あり得ないはずの続きがあった。


 神と呼ぶべき存在との『拝謁』を果たして言葉を交わしたり、特別な力――いわゆる『神通力』というものを授かったりもした。

 そんな少し一般的とは言えない経験をした僕だが、今は意識だけの存在となっている。

 とある男の子の中に精神だけ寄生しているような状態だ。


 その少年は現在一人で家のソファに身を預けながら読書に励んでいる。その字の形は僕にも見覚えしかないもの、すなわち日本語であった。

 僕はこの子と視界を共有しており、彼の感じたものを追体験できる。その視線がつい、と手元の本から流れテレビに映っている時刻を表す四桁の数字に流れる。


 気もそぞろであり、本に集中できていないことは僕からすれば手に取るようにわかる。

 しかしその理由に検討がついている僕は続きが気になるものの、これほど視界が揺れては読めるものも読めないため、盗み見による読書を諦める。


 それからしばらくして、


「――だ、はぁぁぁ……ッ!!久しぶりの我が家よ、やっぱ安心すんなぁ!おーい、楓眞(ふうま)はいるかぁ?」


 ガチャ、という家の玄関扉が開いた音とハスキー気味の女性の声が響く。

 待ち望んだ声と気配に、楓眞はわかりやすくぴくりと反応して立ち上がる。顔には満面の笑みを浮かべている。


「おかえり、お母さん!!」

「おう、ただいま。仕事が長引いちまってよ、悪かったな。どうだ、寂しくなかったか?」


 パンツスーツに身を包んだ女性がリビングに足を踏み入れる。

 引き締まった身体に、キリッとした凛々しい表情がよく映える。


「もう!ボクも十歳、この前学校で二分の一成人式したんだよ?そんなの……そんなの、寂しかったに決まってんじゃん!!」

「〜〜ッ!ほんとに可愛いなぁ、うちの子は!ちょっと抱き付かせろッ!!」

「ッわぁ……ッ!!」


 共有した視界いっぱいに宿主と会話に興じていた女性の顔が迫る。

 さらにその瞳の中で光が反射して、小さな人影が映る。


 肩まで伸ばした明るいブラウンの髪に目の前の女性と同じ茜色の大きな瞳。

 所々彼女との血のつながりを感じさせる、瞳の中に映ったこの少年こそ、僕が現在宿主としている人物であり、名を門浦楓眞(かどうらふうま)という。


 そしてその楓眞に抱擁を続け、少々ガサツな所作で彼の頭を撫でまわす彼女は門浦玲沙(れいさ)、楓眞の母親である。


 転生?を自覚して五年の月日が経つが、僕の知る限り父親の姿を見たことはない。所謂母子家庭というやつだろう。

 そして玲沙はよく仕事で数日間続けて家を空けている。今回は海外に仕事で行くこととなっていたようで一ヶ月近く家を留守にしていた。


「それにしても二分の一成人式か、お母さんも行ってやりたかったが……」

「そうそう、圭さんが代わりに来てくれたよ。めっちゃ浮いてたけど」

「フハッ!まぁ、姉にしても母親にしても年齢が合わねぇ……いや、それ以前の問題か。なんにせよあいつも忙しいだろうに。今度礼言っとかねぇとな」

「この家にも来てくれてね、稽古つけてもらってたんだ!それからね――」


 それから二人は会っていなかった空白の期間を埋め合わせるかのように語り合う。通常の親子よりかなり仲が良さそうに見えるのはきっと、会えない時間が親愛を深めるという事例だろう。





「――あ、そうだ。最後にずっと言おうと思ってたんだけどさ」

「ん……?なんだ」


 楓眞がここで少しだけ距離を取り見上げる。

 玲沙も優しく息子の後頭部を撫でていた手を止め離す。


「……お母さん、お風呂入ったほうがいいかも」

「……え゛」


 玲沙の穏やかな表情は一気に凍りつき、人形のようにハクハクと言葉を紡げずにいる。


「くっつく前に入って欲しかった。もし久しぶりじゃなかったら避けてたから」

「お、おま……一ヶ月ぶりの最愛の母からの抱擁を臭いとはなんだ!!」

「だから我慢したじゃん。それに臭いとまでは言わなかったのに」

「言ったようなもんだろ!!」

「もうわかったわかった。臭いからお風呂入ってきて!」


 玲沙の背中を取り、風呂場のある方向へ押し出すように誘導する。


「このッ……せっかく本部にも寄らずに後処理ぶん投げて帰ってきたってのに……はいもうお母さんショック受けましたー!楓眞くんが謝ってくれるまで今日はご飯作りませーん!」

「はいはい、お仕事お疲れ様。あとご飯はボクが作ってもう置いてあるからほら、はーやーくー!」

「やだ、うちの子がスパダリすぎる」

「目の前にズボラな反面教師がいるからね」


 玲沙は渋々風呂に向かい、楓眞はそれを呆れた様子でため息を吐き見送る。しかしそのため息に安堵の気持ちがこもっていたことを僕は分析する。

 この子は賢いから、母の仕事が危険と隣り合わせであることを知っているようだ。先程のやりとりも照れ隠しだろう。


 あまりにも平和な母子の姿。これが門浦家に久しぶりに訪れた本来の日常だ。










 僕が楓眞に寄生する形で転生したこの世界、どうやら幾らか差異はあれど、前世と凡そ同程度の文明レベルを持った地球のようだ。

 そして楓眞たちが暮らす国の名前や地名も日本国は東京都。


 時間は少しだけ経過して現在、テレビのバラエティ番組をBGMに久しぶりの二人揃った食卓を囲む。

 清潔感のある白を基調としたダイニングと広々としたキッチン。

 母子家庭といったが母の稼ぎは相当なものなようで、かなり裕福な暮らしをしている。


 一体何の仕事か、という話ではあるがちょうどそれに関する話題を繰り広げている。


「それで、今回は結局どんな任務だったの?海外だし、難しい任務だった?」

「あぁ。……とはいえ、面白い話じゃねぇぞ?

「それでも聞きたいんだ。ボクも、『退魔師』に憧れたから」


 僕の前世での地球と違う点として、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして人類の秩序と安寧を守る『退魔師』という職業が生まれた。


 退魔師という公人の一人として任務に身を投じるのが玲沙だ。時に命懸けとなる退魔師は当然それなり以上に給金を貰える。

 己の生活を支えていると同時に、その背中で多くの人々の安全をを守る姿に楓眞も憧れを抱くのは自然なことであった。

 楓眞も『魔力適正』を示し、才に溢れてもいた。


「――と、まぁ今回の顛末はこんな感じだな。蓋を開けて見れば『魔』の魅惑に取り憑かれた人間の、薄汚い本性が表層化しただけだ。……きっと圭のやつにも言われただろう。『力』を持って生まれた人間には責任が伴う。この犯人みたいに『力』に取り憑かれた末路は、無惨で孤独な最後……って、賢いお前のことだ。言わなくてもわかってるか」


『魔力』は新エネルギーとしてあまりにも便利で、魅力的なものである。

 しかし同時に、『魔』にまつわる事象は容易にヒト一人の人生を破滅させることもできる。

 生まれ持った、あるいは身につけた『力』は何であっても、振るうことはあれど振るわされてはいけない。

 玲沙はその事を楓眞によく言い聞かせている。この子もまた、『力を持つ者』であるがために。


「ま、お母さんよりしっかりしてるしね!」

「自分で言うんじゃねぇよッ……まぁ一人にしてるのは悪いと思うがな、すまん!!」

「気にしないで。ボクがしっかりしていれば、お母さんは助けを求める誰かを守ることに集中できる」

「はッ……本当に、こんなあたしには勿体無いぐらい立派に育ってくれた」


 対面に座る玲沙は茶碗や箸をコト、と置いていつになく真剣な目でこちらを見据える。


「……楓眞、お前は人一倍できた子だ。――でもな、矛盾するかもしれねぇが、責任感が過ぎて空回ることや、頭が回り過ぎてその身に余りあることを考えて込んじまうこともある。……人ってのは思ったよりもずっと生きるのが難しいんだ」


 楓眞に訴えているはずなのに、まるで僕の存在すらも見据えているかのような超然とした雰囲気を纏っている。


『(……この目、この雰囲気……どこかで見たことがある)』


 黄昏時の地平線に寄り添うような優しい眼差し。


「それを踏まえて……まぁ安っぽい言葉かもしれねぇが、あたしの本心からの想いとしてこれだけは覚えておいてくれ――」





「世界中がお前を敵視したとしても、お母さんだけは絶対に何があろうとお前の味方だ。お節介かもしれねぇが、退魔師である前に一人の親として、あたしにも可愛い息子を心配させてくれ」


『私がどんな時でもあなたのそばにいて、『人』を教えてあげるわ。それが来世でも、そのまた先でもずっとよ♪』





 はて、一体誰の言葉だろうか……?

 ヒトデナシの僕なんかに寄り添う人なんていないはずなのに……とても、懐かしい気がする。


 そして存在しないはずの記憶の先で、僕は分不相応な願いをその誰かに告げていた。

 本当に次の命なんてものを経験している今、果たして僕は『人』になりたいなんて願う資格があるだろうか。


 世界を渡ってなお、命の輝きどころかヒトの身体すら満足に持ち得ないこの僕に――。

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