バレンシアは優良物件
部屋に戻るとユーバリーが来た。
「随分とオレンジが気に入ってるのね」
「食べ物がね。メロンじゃ海の魚がとか食べられないでしょ?」
「でも生魚は気持ち悪いわよ」
「他にも食べ方たくさんあるからね。明日は違う料理が出てくると思うよ」
お風呂もユーバリーと一緒に入り、夜も寝に来やがった。もう3人一部屋でもよかったんじゃなかろうか?
翌朝は部屋でモーニングを食べる。オレンジジュースはユーバリーも気に入って飲んでいた。
午前中は王宮の中を降るユズが案内してくれる。とても自慢げに見せてくれるけど正直メロンの方がすごいよとかは言わないでおく。
お昼ご飯を食べた後に天ぷらとかを作って貰って味見をする。外食の天ぷらではなくおウチ天ぷらだ。もう一度レシピをみると粉を混ぜすぎるとこうなるらしい。気の抜けた炭酸水とか氷水とかが良いみたいだ。
再度挑戦してもらうと随分と美味しくなった。晩御飯はステーキを予定していたけど、急遽天ぷらも追加。魚以外に野菜も天ぷらにしてもらう。
ステーキはガーリックバター醤油で頼んでおく。他の人は知らん。ゼルは同じベッドて寝るので同じソースにしとけと言っておいた。
晩御飯の天ぷらは好評。そしてガーリックバター醤油のステーキは皆も匂いに釣られて同じ物を頼んでいた。
「な、醤油って肉にも合うだろ?」
「本当だな」
「これ独占販売するからね」
「わかった。父上、宜しいですね?」
「任せる。シャルロッテ姫はもう商売を?」
「帰ったらやります。あ、それより先に契約の訴訟やらないとダメですね」
クインシーから問題が出てるのかと言われてイチバーンの事を話した。
「ほう、舐めた事をしてくれるな」
「まぁ、こちらは正攻法でやるから大丈夫」
「シャルロッテ、レモンジャムがそんな事になっているのか?」
バレンシアも驚く。
「そうなんだよ。イチバーンはタチが悪いみたいでね」
「ならうちも一肌脱ごう。それと父上、オレンジ以外の柑橘類の販売の許可を下さい」
「何を売るのだ?」
「シャルロッテ、何を売る?」
「柑橘類全般。何でも売れると思うよ。全部ジャムにもなるし調味料にもなるから」
「それも独占販売するのか?」
「そこまで扱いきれないからサバーンに卸してくれると助かる」
「わかった。調味料ってどんなのが出来る?」
「醤油と混ぜるのも出来るし、唐辛子と混ぜるのもいいよ」
レシピは予習済なのだ。柚子胡椒をゼルに作ってもらおう。
翌日からオレンジの街を案内してもらう。秋が深まると花が咲くように柑橘類があちこちになって実にきれいだそうだ。
漁港などにもいってみるが海藻を食べる文化はないようで寒天の元になる天草は手に入らなかった。ヤバンの商人に期待だな。
家畜の餌と言われた米は精米もしてないし炊く時に研ぎもしてないのが原因だった。精米機なんてないから帰ってから試す事にした。これも販売ルートに乗せてもらう。
翌日は玉遊び、つまりゴルフだ。
「何を賭ける?」
「ん?別に。柑橘類全般卸してくれることになったし、醤油とかも手に入るならもう別にオレンジに求めることもないよ」
「俺に求めることは?」
「もっと無い」
「酷い奴だな。なんか希望を言え」
「じゃあ、ヤバンとの直接交渉権。商人はオレンジの商人でいいけど関税無しとかどう?」
「わかった。俺はお前を希望する」
「は?」
「俺の婚約者になれ」
「まっぴらごめんでございます」
「だ、第一夫人だぞっ」
「全く興味もないし、嫁に行く気もございませんのであしからず。それにこんな事を賭け事にしてくるなんてアホ過ぎるだろ?」
「こうでもしないとお前は手に入らんだろうが」
「あのさ、王族の結婚とは国の利益になるためにするものだろうが。それなら大国メロンの姫、バリ姉を口説けよ。俺はメロンの籍に入ってないんだぞ」
「く、国の事より、お、お前の事がす、す、す、」
「はい、失格。王子なら個人の感情より国を優先しろ」
シャルロッテはバレンシアの言葉を遮りそう言い放った。
バレンシアが好意を向けて来てたのは理解しているがなぜ嫁に行かにゃならんのだ。
「バレンシア、お前何を抜け駆けしようとしているのだ」
「アームス、お前はすでにフラレたんだろうが」
「ふ、ふ、ふ、フラレてなんかないっ」
「姫様、モテますね」
「うん、ぜんぜん嬉しくない」
とりあえず、婚約とか結婚とか賭け事にすんなと怒鳴ったことで、俺が負けたらオレンジの発展につながるレシピを考えてくれということになった。
醤油や柑橘類だけでも十分影響出ると思うんだけどね。
で、ゴルフ開始。バレンシアは賭けようと言い出したくらいの腕があった。よく自力であれだけのスコア出すよな。剣や弓の腕もあるし、賢さもある。考え方の柔軟性もあるし能力は相当高いのだろうな。俺様系だけど別に横暴なわけでもないから男としては優良物件だな。
ま、ゲームとしてプレイしている俺の敵ではなかったけど。
「ば、馬鹿な・・・」
最後の旗包みで圧倒的に負けたバレンシアはその場で膝を付く。
「バレンシア、俺もシャルロッテには玉遊びで負けたのだ」
「お、お前はいったいなんなのだっ。俺は剣、弓、玉遊び、勉強で負けた事はなかったのだ」
「良かったね。敗北を知らない人はより大きくなれないからね」
「敗北を知る・・・」
「そうそう。よりいっそう努力する気になったろ?」
そのまま立ち直れなかったバレンシア。
ちょいと可哀相になったので、オレンジを使ったレシピというかめっちゃ簡単な物を教えた代わりに追加で魚介類を俺専用に持って来て貰うことで話が着いたのであった。
教えたのはパンにカスタードクリームを乗せてその上にオレンジをあしらう物。自分が子供の頃に好きだったパンだ。乗ってたのは缶詰のミカン一つだったけど、ここではオレンジがみっちり乗っている。
それと調味料としての柚子胡椒も教えておいた。肉にも魚にも使えるから重宝するだろう。クインシーも気に入ってたしな。
こうしてオレンジでは色々と利権を手に入れてガーデンに戻る日が来たのであった。
帰りはクインシーと同じ馬車だ。
「シャルロッテよ、あのオレンジのパンはガーデンで売るのか?」
「オレンジは外に出さないみたいだから他ので代用するでしょうね。レモンジャムとかでも出来るし」
「ふむ、ガーデンでオレンジの存在が大きくなっていくな」
「メロンは外に出すの難しいんでしょ?」
「そうだな。アンデスとユーバリーがどうするか考えてはいるがすぐには無理だろうな」
「他の国がフルーツを出し始めたらどうするの?」
「まぁ、独自で出す事はないだろう。連合国全体の問題になるから先に話し合いになる」
「なるほどね。メロンは先に手を打っとく?」
「何かあるのか?」
「メロンそのものは出さなくてもメロンを意識付けておくものはあるよ」
「それはなんだ?」
「メロンパン」
「は?メロンはまだ出せんと言ったろうが」
「メロンは使わずにメロンを模したパンだよ。戻ったら誰かに作って貰うよ」
頭にはてなマークが浮かんだクインシー。しばらくクインシーのフワフワに甘えられていなかったので膝の上に座ってフワフワ枕をしてもらいながら馬車ゴトゴトと揺られてガーデンに帰ったのであった。




