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名言は借り物

今日は予めキャラメルソースも作っておく。


模擬店に行くと朝から行列だ。とっとと売り切ってしまおう。


あっという間に売り切れ。開始2時間も経っていない。後から来た人にブーイングを食らったので完売の看板を出してさっさとその場を離れた。


今日は最終日で料理対決があるのでそれを見に行くことに。パンケーキ屋にキャラメルソースを渡して、シドの所でポテチを買って会場へ向かった。


料理対決は始まっていてメロンの出番には間に合った。


料理勝負は特設女神像に捧げた後に神官達が一口ずつ食べて採点。神官は10人で持ち点は一人10点。


すでに審査を終えた国もあり、国名と点数が書かれていた。


今の所はピーチ国が一位の72点。オレンジとか結構下だな。コックが悪いのだろうか?


「ゼル、オレンジって評判悪いの?」


「甘いフルーツほど上位に来ます」


なるほど。桃は甘いからな。オレンジは酸味がある分点数が下がるのかな?

 

今からアップルか。林檎は昔の代表国だけあって甘い林檎が開発されてんのかな?甘さで言えば桃の方が上だとおもうけど。いや、元の世界の桃って外国のはそこまで甘くなかったんだっけ。外国人が絶賛してたからな。


アップルの点数が出る。80点数だ。桃を抜いたな。


次はストロベリー。おー!91点。リンゴを抜いたじゃん。


「ストロベリーはいい線行ったね」


「はい。年々甘さも大きさも増してましたから」


各国のデザートはフルーツそのものだ。アームスはそれをケーキにすると言ってたけどそれが吉と出るか凶と出るかわからんな。


ストロベリーの思わぬ高得点に会場がどよめく。


あ、豚君発見。ふんぞり返るようにして威張ってんな。イバリ子豚だ。


次はマンゴー。デザートに出されたマンゴーは立派だな。


10点 10点・・・・9点!


「99点ですっ!」


うわぁぁぁぁぁっ


会場から大喝采がおきる。過去最高得点らしい。実質100点だったのかも。最後にメロンが残ってるから勝ち負けの余地を残したのかもしれない。


「マンゴーの優勝かな?」


「まだメロンが残ってますよ」


そして事件はメロンの料理を供えたときに発生する。


(きゃー、なにこれっ!誰?これ作ったの誰?)


「わっ!」


「姫様、どうされました?」


「いや、何でもない」


俺にしか今の声聞こえなかったのか? ということは女神か? それにしても女神がめっちゃはしゃいでんじゃん。メロンケーキを食ったのだろうか?


神官達は何だこれはという顔をしている。デザートがメロンではなくメロンケーキだからな。


そしてそれを食べて固まった。旨いけどどう採点して良いのかわからないのだろう。


10点、10点、10点・・・・5点


「あーーっと、最後の得点は5点。優勝はマンゴー王国料理です」


「ばっ、馬鹿なっ!」


アームスが大声で叫んだ。


「アームス殿下が得点に何か疑問があるようです。神官様、5点を付けた説明をお願い致しますっ」


司会がアームスの大声に反応して神官に解説を求めた。


「説明致します。デザートは料理の華でございます。確かにメロン王国のデザートは大変美味しく今までに食べたものではありませんでした。しかしながらフルーツそのものではないので5点を付けました。神に捧げるデザートはフルーツそのものであるべきなのです。神はこのような物を望んではおられませんっ」


と言い切った時に


ビシャッと雷がその神官に落ちた。


(勝手な事を言うんじゃないわよっ)


あ、女神がめっちゃ怒ってる。メロンケーキを気に入ったんだな。ということは今の雷はバチか?


大きくざわつく観衆。慌てて治癒魔法をかけられているから死にはしていないだろう。


しかし、点数は変わらず、マンゴーが優勝ということになってしまった。


めっちゃ喜んでいるのはマンゴー王国のデルソル王子か。アームスは膝を付いて落ち込んでいる。女神が一番喜んだのに負けたから可哀想だな。


料理対決の興奮が冷めやらぬまま、表彰式になりアームスは相当落ち込んでいた。自分が提案したしたメロンケーキを出すというのが原因で負けたのだからな。


これ、試合に負けて勝負に勝ったという感じ?


(あれ、作ったの誰?)


「わっ」


「どうされました?姫様」


「い、いや何でもない・・・」


(早く答えなさいよっ。聞こえてんでしょっ)


無視だ無視。聞こえないフリをしなくては。


「そろそろ帰ろうか」


いででででででっ


「耳を引っ張んなっ」


何しやがんだこいつ。


「誰も何もしてませんよ」


「あ、あれおかしいな。虫にでも刺されたかな?」


と誤魔化す。


「ゼル、ちょっとトイレ」


と、トイレに連れてって貰ってそこで女神に怒鳴る。


「耳引っ張んなっ。痛いだろうがっ」


(聞こえないふりするからでしょうがっ。あんた神を無視するとかいい度胸ねっ)


「あんな所で神と話したら大事になるだろがっ」


(いいから早く教えなさいよっ)


「教えてどうすんだよ?」


(毎日お供えしてもらうのよ)


「なら、自分で神託しろよ。俺が伝えたら何でそんなことがわかるんだって怪しまれんだろが。俺は神官になるつもりはねーぞ」


(分かったわよ)



「姫様、何を叫んでおられたのですか?」


「メロンが負けたから叫んでストレス発散してきた」


「そうでしたか。残念でしたからね」


ゼルとリーリャにアームス達の所に慰めに行こうと言ってそこへ向かった。



あー、アームス目汁溜めてんじゃん。コックもガックリしてるな。クインシーもアンデスもユーバリーもいる。皆暗い顔だ。


「残念だったね」


「俺がケーキにしろと言ったばかりに・・・」


「いえ、私の腕が足りなかったのです。申し訳ございません。いちご姫様が教えてくださったメロンケーキでよもや敗北をするとは・・・」


(あれ、あんたが考えたの?) 


だからこんな所で話し掛けんな。


「試合には負けたけど、神様はメロンの料理を一番喜んでたと思うよ」


「シャルロッテ、変な慰めはいらん」


「いや、本当に。コックさんもメロンケーキを神様にお供えしてあげてね」


これで俺の役目は終わりだ。あとはなんとか自分で神託しろ。


「いえ、お供えは今まで通りメロンそのものを致します。神官が言った事は神の声なのです」


(そんな事ないわよっ。あいつが勝手に言っただけよっ。そのメロンケーキを毎日供えなさいっ)


「勝手な事を言ったからバチ当たったんじゃない?」


「シャルロッテ、今日のお前は優しいな。そんなに負けた俺が哀れか?」


いかん。何を言ってもネガティブに取られる。アームスが負の世界に行ってしまった。


「うわぁァァァん。シャルロッテぇえ」 


 ユーバリーまで泣き出したじゃないか。この対決ってそこまでたいそうなことなのか?


「アームス。メロンそのものを出しても勝てなかったかもしれん。マンゴーを一口試食させてもらったが、相当に味が濃く甘かった。甘いマンゴーを作ろうと努力を重ねた結果であろう。年々マンゴーは旨くなって来ていたからな。それに比べてメロンはここ数年変わらぬ。ここの差が出たのだ」


クインシーがそう言うと、また神の声が聞こえる。


(そうそう。マンゴーとイチゴは美味しくなって来たわよね。でも私はメロンのケーキが一番美味しかったからあれを毎日供えてね)


クインシーにもこの声は聞こえてないんだな。これを伝えてもネガティブモードのみんなは慰めとしか受け取らないだろうし、神の声が聞こえたとか言ったらエライ事になるからな。


そんな事を考えているとアームスがグっ、ウッと男泣きしだした。


「アンデス、そんなに悔しいことなのか?」


と、コソッと聞いてみる。


「これからの一年間、アームスあにぃは学園内でデルソル王子より下に見られます」


学園内のヒエラルキーが変わるのか。こういう経験も必要だろうけど、これが卒業まで続いたら拗らすだろうし、品種改良はすぐに出来るものではない。クインシーがマンゴーを褒めたということはフルーツそのものの旨さで拮抗しているかやや負けてるといったところか。これはアームスが在学中どころか王になって連合の代表を決める時にまで影響するかもしれん。元の世界の高いメロンは相当甘かったんだけどな。クソ高いマンゴーは食べたコトないから最高峰になるとどっちが旨いかわからん。そのうち桃や葡萄も旨くなって来るだろうし、メロンがこの先ずっと一番でいられるのも難しいかもしれない。


「アームス、嘆くより次の事を考えな。敗北は人を成長させる。より高く飛ぶには一度しゃがむ必要があるんだ。これからの一年間はより高く飛ぶ為の期間だと思え。しゃがんた後、飛べるか転ぶかはお前次第だ」


「シャルロッテ・・・」


「勝ち続けられることなんてない。糧にするも傷にするのもお前の心次第だな。しばらく落ち込んだらどうするか行動で示せ」


と、何かで読んだ事を言ってみる。


「分かった。料理に頼るのではなく、素材そのものを旨くする方法を考える。ケーキは封印だ」


(は?何言ってんのオマエ?私はケーキが食べたいんだけど?)


ヤバっ。アームスの決意は真っ当だけど、女神は気に入らないみたいだ。早くこの場を去らなくては巻き添えを食らう。


「じゃね、あとは宜しくっ」


「シャルロッテ、ダンスパーティーの前に各国のフルーツ試食がある。採点が正しかったかどうか含めて皆が味を確かめるのだ。それには参加しろ」


はーいと返事をしてその場を離れた。


(ちょっと、ちょっとぉ!なんとかしなさいよっ)


そんな声を無視すると耳を引っ張られるが気にせずその場を離れたのであった。


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