第8話:水神少女シグリエス
「えええぇぇぇ!? じょ、女王様?」
あれ? こんなに驚くの? ヘルヴィの話では女王には配下がいて、ほとんどは眠ってる……だったけど。
転生ラスボス女王ではあるけど、女王配下だったなら顔くらいは見たことあるんじゃないのかな。
「……ええ、そうよ。あなたは水神シグリエス……で合ってるかしら?」
「そ、そそそそ、そうです。こ、光栄です……まさか女王陛下がシグをお叱りしてくれるなんて!!」
この反応……配下というだけで実は顔を合わせたことも無いとか? 転生前の女王がどんな姿をしていたのかなんて分からないけど。
それにしても驚きすぎじゃない? ヘルヴィに聞きたいところだけど、攻略本を見る方が早いよね。
【水神シグリエス:神話に出て来る竜殺し戦士シグルズとの関係は不明。主な棲息地は人里の沼。眠り続けていることで水を浄化する。未熟な少女の為、配下にして育てれば強くなれるかも? オススメ度★★★★】
攻略本にしては情報が足りないけど、スキルが足りないとか?
「あ、あのあの、女王陛下さま。シグがしたことで人間はどうなりますか?」
「あなたがしたこと? あぁ……あなたは何も悪くはなくってよ。悪いのは無駄にゴミを捨て続けた村人たちだわ」
ゴミというか武器というべきか。このまま沼を涸らせば荒らすことも無いだろうけど。
「眠っていたシグの頭にたくさんたくさん落ちて来ました。でもでも、沼が微妙な所にあったのが良くなくて、人間だけが悪くなくて……」
水神というだけあって邪悪な存在では無さそう。そうなると沼を村人から取り上げるのは、良くないことになりかねない。
それなら、
「シグリエス。あなたはどうしたい?」
ヘルヴィに相談するでもなく、起こした以上配下として連れて行くのは確実。それでも意思は尊重しなければ。
「じゃあじゃあ、人間の村にそれぞれ沼を作っていいですか? そしたら争いも多分、無くなる……です」
争っていた経緯は分からないものの、沼が村同士の行き来を阻んでいた。それが無くなり、お互いの弊害が無くなればいい方に向かう可能性がある。
沼はこの娘に作ってもらうとして、そこら中に散乱した武器は資源に戻してあげないとね。
「分かったわ。それならシグ。あなたは両方の村に小さな沼をお作りなさい。そこを汚すのも汚さないのも人間の勝手ですもの。それと、人間の武器は全て山に返すわ。それでいいかしら?」
攻略本は私の元の知識とスキルアップの運任せになりそうだけど、それ以外はラスボス女王としての力を見せつけた方が良さそう。
私の言葉を聞き、シグリエスは納得した表情で村の方に飛んでいった。そして大した時間も経たないうちに、それぞれの村から歓喜の声が聞こえて来た。
その合間に散乱した武器を一か所にかき集め、木材、鉄材を分けた後、山や森に。鉄材は争いの素材となりかねないので、とりあえず消失。
「アリーア様、戻りました」
「――ヘルヴィ!」
「そのご様子では、シグリエスをお許しになられたのですね? わたくしが見張っていた村にも変化が訪れておりましたので、上手く働いているものと思われます」
ヘルヴィは戦うことには一切関与しない。私がすることを全てお見通しかのように。
「ねえヘルヴィ――」
「はい。何なりと」
「シグリエス……あの娘は女王配下なのでしょう? でも私を見て初めて会った顔をしていたけど、どういうこと?」
「そうでございます。わたくしとカーグ以外の配下は女王配下の魔物ではありますが、実を申しますと直に会わせたことはございません」
ということは、転生前の女王の意思によるものかな。とはいえ今は私が女王で、しかもラスボス女王。以前はどうか知らないけど、配下はちゃんと身近な仲間としてそばに置くべきだよ。
「ふぅん、まぁいいわ。私があの娘を連れて行きたいのだけれど、いいのね?」
「もちろんでございます。わたくしはアリーア様のご意思に従うのみ。逆らいの意思など存在いたしません」
「それならいいわ」
あれこれ考えてもどうしようもないし、気にすることでも無いか。
「それにしてもアリーア様。随分と板についてこられましたね! さすがでございます!」
「え? 何が?」
私の首傾げにヘルヴィは顔を紅潮させながら、興奮気味にはしゃいでいる。
「ラスボス女王としての雰囲気、貫禄……だいぶサマになっておられます!」
自分でも気づかないうちに女王様っぽくなって来たのかな。それなら調子を崩さずにどんどん配下の魔物たちを起こそう。




