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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
外伝 いろいろな物語
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理想の五人 後編

アクセスありがとうございます!



 レガートとの密談を終えた翌日、自分の中で今回面会した三人の候補者でほぼ確定はしたが、エレノアはリストに記されていた他の候補者とも面会を行った。

 残りの候補者は元より面識があるだけに学院で話しても怪しまれないこともあり、休憩時や昼食を使ってそれとなく学院生会についての展望を聞いて回った。


「ではその三人で決めたのですね」

「先輩方の手の平で踊らされた感じだよ」


 からの二日後、昼休憩を利用したティータイムにミューズを誘い、学院生会室で結果を伝えた。

 ミューズに関しては日頃から一緒に居る以前に、この時期だろうと怪しまれることはない。なんせエレノアが生会長に就任すれば精霊術クラス代表はミューズになると周囲は予想している。

 つまり個別で会ったところで代表打診の話だろうと思われるだけ。

 確かに以前のエレノアなら迷わずミューズを選んでいた。しかしこの一年で考えに変化が起きているわけで。

 故に呼び出したのは打診でもなければ、候補者を決めた報告でもなく。


「残るは精霊術クラスと精霊騎士クラスの代表だが、精霊術クラス代表はお前以外を選ぶつもりだ」


 残り二クラス代表に打診をする前に、断りを入れる為の呼び出しだ。

 もちろんミューズに不満はない。ただ自分の中でよりこれからの学院生会に必要だと思える人材が居ると感じたなら、そちらを選ぶだけ。

 それでも二学生になってから共に学院生会の手伝いをしていただけに、エレノアなりの誠意として伝えたのだが。


「わたし以上の適任者が居るのであれば当然でしょう」

「……気づいていたのか」


 特に驚くことなく、当然のように受け入れるミューズにエレノアは苦笑い。

 先日、ミューズの眼についてうち明けられたことで精霊力の輝きから感情を読み取れると知った。だが感情を読み取れるだけで心までは読められないなら、なぜ気づかれたのか。


「この一年……いえ、わたしが王国に訪れてから今に至るまで、あなたの傍で成長を見てきましたから。今のエレノアなら広い視野で物事を見るが出来るのであれば、わたしに固執する必要もないでしょう」

「なら誰を選ぶかも予想済みか」

「精霊騎士クラス代表も含めて。とにかくエレノアの思うままに、わたしは陰ながらお手伝いさせて頂きます」

「では今後も学院生会の手伝いを頼むとしよう」

「遠慮なくですよ」


 曖昧な理由ではあったが、親友から見ても自分が成長していると評価されたエレノアは素直に嬉しかった。

 とにかくミューズに対する懸念もなくなり、その日の学院終了後エレノアは早速残りの候補者に学院生会入りの打診を終えて。


「――ずいぶんと意外な選出だね」


 屋敷に帰宅後、選出した五人の代表をレイドに報告すれば予想通りの評価が。


「お兄さまは三人の代表をご存じですか」


 しかしレイドの意見を聞くことなく、エレノアは興味本位の質問を。

 最後は自分の意思で決断したならレイドの意見を伺う必要はない。元より報告だけで良いと言われたなら尚更で。


「これでも元生会長だからね。ただエレノアや前任ほどの情報はないから、新旧学院生会の顔合わせで三人を知るのが楽しみだ」

「そうですか」

「でも一番のサプライズは精霊術クラスかな? エレノアならミューズくんを選ぶと思っていたけど、まさかディーンくんを選ぶなんてね」

「候補に挙げられたカイルさまにも言われました」

「まさかランくんを精霊騎士クラスの代表にしたから、みたいな理由ではないんだろう? 良ければ選出理由を教えてくれないかな」


 故にレイドも当然のように受け入れ、お返しと言わんばかりな興味本位の質問を返されてしまう。


「ランとセットで、との考えはありません。カイルさまやミラーさんも評価していましたが、あの二人はこれからの学院生会には必要なんです」


 もちろんレイドの言うような短絡的な理由ではないとエレノアは首を振る。

 この二人を選んだのもエレノアの成長の証とでも言うべきか、序列保持者となり二人の為人を知ることで、朧気でも自分の目指す理想の学院生会に必要と感じたからで。


『ソフラネカは考え無しで威厳も無い。大凡代表という立場には不向きだが、周囲の機敏を感じ取って上手く立ち回れる広い視野と、冷静に物事を観察して判断できる決断力がある。あいつのような人材は一組織に一人は欲しいと俺は判断した』


『ランちゃんは分け隔てなく面倒見が良いからねー。特に序列保持者になってレイドくんやエレノアちゃんと仲良くなってからは、貴族とか平民とか関係なくハッキリ物事が言えるし、エレノアちゃんが暴走したら真っ先に止めてくれそうだよー』


 カイルやミラーの評価が自分と同じと分かって確信が持てた。

 そしてもう一つ、二人に期待しているものがある。


「今までの学院生会は敷居が高く、気軽に相談できるような組織ではありませんでした」

「つまり、学院生会と学院生の橋渡しとして二人を選出したと」

「お兄さま方を始めとした先人が少しずつ学院を導いてくれたからこそ、このような舵取りが出来ました」


 レイドも察したように、今までの学院生会は優秀な者、身分の高い者が中心で関わっていたことで神聖化されている面がある。特に平民は及び腰になり、不安や学院の改善案を相談できなかった。

 だからこそ二人を選んだ。家業から人と接する能力に長けている上に、この一年で身分関係なく友好的に接している二人なら、学院生会と学院生の距離を縮められると。 


「威厳を捨てるつもりはありません。ですが私は今までとは違う、親しみのある学院生会を作りたい」


 そして様々な意見を取り入れることで、学院をより良い方向に導く。

 二人だけでなく、他三人の候補者と面会したことで、おぼろげだった理想の学院生会が明確になったとエレノアは胸を張って伝えた。


「それが学院の理念を、より良い形として実現できると信じています」

「キミが決めたのなら、ボクからはなにも言うことはないね」


 エレノアの決意を聞き遂げたレイドは善し悪しについて触れることなく。


「新学院生会の発表前に、一度六人での顔合わせを済ませておくように」


 しかし満足げな笑みで新たな生会長の門出を祝福した。




 そして休養日を挟んで、朝の学院生会の報告会でいよいよ新学院生会のお披露目となり――


「みんな集まっているな」

「エレノア遅い! なにしてたのよ」


 報告会を前に学院生会室に訪れたエレノアはいきなりランからお叱りを受けた。

 というのも大事な事前顔合わせで二〇分の遅刻、生会長として示しが付かない以前にランとディーン以外は面識がないのだ。

 自身で選出した五人なだけに唯一エレノアのみ面識があるので、いきなり放置されれば戸惑うもの。


「急な用件が入って講師舎に立ち寄っていたんだ」


 まあ講師舎に立ち寄ったのは本当だが、実のところまず五人だけの場を作る為に敢えて時間をおいてやって来たりする。これも相性の見定めにはいいと判断してのことで。

 

「私を待っている間、少しは交友は深められたか」


 もちろん事実は告げず、五人に問いかければ――


「問題なく」

「そうかぁ……?」

「おや? ディーンさん、何か問題でもありましたか」

「問題というか……シエンはずっと本読んでるし、イルビナはぼーっと窓の外見てただけだし。お前に至っては怖いというか……」

「怖いとは心外ですね。私はこれからは学院生会の仲間として、気軽に名前で呼び合いましょうと提案しただけですよ」

「したしこっちは了承したけども……」

「ぶっちゃけあんたの作り笑いが気味悪い」

「ランさんも心外ですね……」

「というかエレノアが来たんだからイルビナは席に付く、シエンは本読むの止めなさい」

「わかった」

「ですね」


 若干ギスギスはしているも、レガートの提案からそれぞれ名前で呼び合う仲になったのなら相性も良いのだろう。

 またこのわちゃわちゃした様子は旧学院生会を彷彿とさせるが、先人に比べればまだまだ足並みは揃っていない。

 だが始まってすらいないのなら当然の結束、つまり自分も含めてこれからだ。


 それでもこの五人となら、先達に負けない学院生会として学院を導けると信じて。


「じゃあエレノア、まずは新生会長としてなにか一言お願い」

「びしっと締めてくださいよ」

「期待しています」

「どんな話をするですか」

「ぱちぱち」


 生会長の席に座ったエレノアは各代表席に座るラン、ディーン、レガート、シエン、イルビナの順に目を合わせて。


「今さらだが私が生会長のエレノア=フィン=ファンデルだ。これから私たちは――」


 生会長としての第一歩を踏みしめた。



 

最後はランとディーンの選出理由、そしてエレノアが目指す理想の学院生会でした。

初登場時では固すぎて余裕を感じられなかったエレノアも、この一年で本当に成長したと思います。

その結果が親しみのある学院生会で、貴族平民問わず気軽に学院生会室に訪れては相談したり、お茶会をしたり、みたいな時間を目指しているんでしょうね。

もちろん簡単にはいきませんが、一年後そのような学院生会になっていればまさに学院の理念が実現した光景だと思います。



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