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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
外伝 いろいろな物語
774/779

序章 気遣いから始まる

外伝開始!

アクセスありがとうございます!



 ロロベリアとアヤトを王都に残し、ミューズたちは一足先にラナクスへ戻った。


「送ってくれてありがとう。ミューズ」

「また明日、学院でな」

「感謝」


 まずラナクスに入ってすぐ馬車から降りたラン、ディーン、イルビナが送ってもらったお礼を伝えて帰路につく。

 それぞれの自宅まで送るつもりでいたが自宅前に貴族家の馬車が停まれば目立つと遠慮されてしまった。またイルビナはランの実家でもある食堂で昼食を摂るらしく、三人を降ろした馬車はそのまま工業区へ。

 ただニコレスカ姉弟はアヤトやロロベリアが戻るまでミューズの屋敷に泊まらせてもらう予定。なんせマヤと連絡が取れるのはミューズのみ、ラタニの容態を含めて王都の状況を早く知るなら一緒に居るべき。王都ではニコレスカ邸でミューズがお世話になったこともあり勧められ二人も了承。


「本当によろしいのですか」

「さすがに手伝わせるわけにもいかないんで」


 ただお世話になる間の準備だけでなく、予定よりも長く家を空けたことで掃除をする為に一度帰宅するのでミューズが手伝いを申し出るもユースは首を振る。

 ミューズを含めた使用人に家の掃除をさせるわけにもいかない。ただでさえミライを預かってもらえるのに、そこまで甘えられない。


「夕方までには終わらせるんで、それまでゆっくり休んでて下さい」

「そうですか……では夕食の用意をしてお待ちしていますね」

「助かります」

「お世話になります」


 なので自宅前で二人を降ろし、そのまま貴族区に向かった。


「……こっちも盛り上がってるな」


 のだが、商業区に入るなり街の様子を眺めつつフロッツがボソリ。

 復活した精霊種をラタニが再び討伐した、という情報は既に国内に伝わっている。故にその話題で持ちきりになるのも当然で、誰もがラタニを称えていた。

 しかしその裏で起きた事件、特にラタニが意識不明という情報までは伝わっていない。加えて多くの謎が残っていることもだ。

 ラタニを救えて一段落はしたものの、事情を知る側としては住民のように素直に喜べないわけで。

 王都に残したミライが目を覚ましたら何か分かるはず、それまではもやもやした時間を過ごすことになるがそれよりも。


「……ですね」


 同じく街中の様子を眺めるミューズの表情は沈んでいた。

 ラタニが心配なのもあるが、馬車が静かなのも原因か。

 王都滞在中は慌ただしくとも常に友人が居た。

 帰路の馬車でもランやディーン、ユースが率先して盛り上げてくれた。

 いくら兄や姉代わりのフロッツやダリヤが居ても寂しさはあるだろう。教国で暮らしていた頃、友人と呼べるだけ親しい間柄の存在がいなかったミューズにとって、彼らとの時間は特別なのだ。


「ダリーも学院の先輩方と会ったの何気に初めてだったな」

「それがどうした?」


 ミューズの心情を察したフロッツはダリヤ話題を振る。


「色々あってろくに話も出来なかったなって思ってよ」

「確かに……仕方ないとは言え、まともに挨拶もできなかった」

「そもそも俺なんてアヤトくんたち以外とまともに話したこともないけどな。ダリーは前の滞在で出来たけど、それどころじゃなかったし」

「……文句でもあるのか」


 以前王国に訪れた際、アヤトの提示した条件を元にリヴァイやギーラスと話し合う為にフロッツが飛び回っていた間、ダリヤはエレノアを含めた同年代の友人らと交流を深める時間はあった。

 だが、その見返りとしてフロッツとデートをしたのでダリヤは嫌味に捉えたようだがもちろん違う。


「ダリーとデート出来たんだから文句なんてあるわけないだろ。ただ妹分のお友だちについてお兄ちゃんだけ知らないってのは寂しいんだよ」

「……なるほどな」


 フロッツの言い分でダリヤも察したのか小さく頷き、今だ窓の外を眺めているミューズに声を掛ける。


「ミューズ、よければご友人についてフロッツに話してくれ」

「……え?」

「私ばかりが交流を深めていることが寂しいらしい。それに私もミューズがお世話になった先輩方について改めて知りたくなった」

「もちろん他のお友だちの話もな」

「はい。もちろん構いませんよ」


 ダリヤとフロッツの要望にミューズは少しだけ笑みを取り戻す。


(さすがダリー、まさに以心伝心だな)

(気持ち悪い……)


 対するフロッツは満足げに、ダリヤは視線から伝わる感情に眉根を潜めるも内心安堵を。

 要はミューズの気を紛らわせるためにフロッツが友人の話題を持ち出し、その狙いを察したダリヤが調子を合わせたのだ。

 それにミューズの大切な友人なら兄貴分、姉貴分としても良く知っておきたい。

 故に例え精霊力の色で感情を読み取られても構わない。そもそも細かな感情までは読み取れないなら関係ないがとにかく。


「そうですね……どのお話からしましょうか」

「迷わなくてもいいだろ」

「それだけ話したいことがたくさんあるってことだろ」


 嬉しげに語り始めるミューズに二人は微笑ましく耳を傾けた。




今回の外伝は前回の外伝と同じくちょっと趣向が変わったものになります。

つまり『いろいろな物語』と題しているように、時系列関係なく主要キャラ以外の内容を予定しています。なので今回はアヤトやロロはほとんど出てきません。

またミューズの語りとなっていますが、彼女の知らない話もあります……まあそこは導入部分として割り切って頂ければと(汗)。

とにかく誰のどんなお話になるかはお楽しみにと言うことで。

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