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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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認められた軌跡

アクセスありがとうございます!



 たくよー、アヤトの奴マジでやってくれたぜ。あたしのクッソ恥ずかしい本心をナーダさまにばれちゃったらもうオッケーするしかないじゃんよ。

 だってあたしがナーダさまのお誘いを断ろうとしてたのアレクが絡んでんだぜ? いや、たしかにアレクとは公園のベンチで茶をする約束はしたよ? そん時はもうちょい素直になってもいいかにゃーとも思ってたさね。

 でもさ、だからってアレクとそう言った仲になるかといえば違うくないか? 確かにあたしの為に王位継承権を辞退した気持ちはバカじゃね、と思う反面嬉しい……くもあったさ。ぶっちゃければいつかは受け入れるんだろうにゃーとも決めてるわけよ。あの子の男気に答えたいし、バケモノでも構わないってのも……ガラにもなく嬉しく……もあったよ。なによりアレクのことは諦めてたわけで、今さらこんな状況になればいくらラタニさんでも戸惑うし、諦めていた中でマジでいいのかにゃーと希望が見えたら……今までみたいにアレクに嫁の一人や二人を侍らせろとも言えんし、もしそうなればやっぱガラにもなくロロちゃんみたいにもやもやしそうで嫌だし、今さら乙女感情でもやもやするあたしがまたクッソ恥ずかしいんだよなぁ。

 だからいつかね、いつかはそう言った仲になりたいとは思うけどちょいと急展開すぎてまだ気持ちの整理が追いつかんからもうちょっと時間をおきたいわけよ。

 なのにあたしのクッソ恥ずかしい本心をナーダさまにばれちゃったら、もう言い訳できなくないか? 

 だってクッソ恥ずかしい本心がバレたのに、また断れば絶対に『今度はなにを理由に断るんだ』って聞いてくるぜ? むしろ『そんなに私を母と呼ぶのが恥ずかしいのか、恥ずかしがり屋で捻くれ者の娘よ』みたいな茶化ししてくるだろ。それも恥ずいじゃまいかはさておいて。

 そうなるとあたしは葛藤について話すしかない。王国最強の看板を失ったお荷物のあたしでも侯爵家の養子ならアレクと立場が釣り合うもんな、軋轢も最小限に抑えられるな、でもそんな理由で受け入れるのは不誠実だろうにって。もちね、もともとナーダさまの娘になるのもいいなーって気持ちはあったけども、なんかそれはそれってーか、そんな考えが過ぎっちゃった時点でやっぱ不誠実だろ。

 もちね、もし万が一にでもあたしとアレクがくっつけばナーダさまにも利点はある。養子だろうと王族に嫁入りする娘だ、侯爵家にとってもいい話だもんにゃ。ただこんな葛藤話せるかっての。あたしとアレクの関係知られるのもハズいし、知ったら知ったでナーダさまはノリノリ、それを知った国王さまもノリノリで気づけば外堀埋められそうじゃん。

 ならバカ正直に葛藤のこと話さなくてよくない、とは思われるけどナーダさまにはもう嘘つきたくないんよね。マジ今さらの誠意かもだけど、もうあの人に不誠実なことしたくないんよ。

 だからもうオッケーするしかない……もち素直な気持ちになれば良いわけで、これ以上気を遣うのも違うなら腹くくるのもいい……んだけど、やっぱもやもやするんよね。

 そもそもろんさ、あたしは普通ってのに憧れてるわけで。今までが今までだから余計にちょっとノンビリと過ごしたいなーと思ってたわけさね。アレクとの関係もゆっくりのんびりしたいのに……侯爵家の養子とか全然普通じゃないやん……さすがのあたしも少しは作法を覚えなきゃいけないやん……全然ノンビリできないやん……てのもある。

 あたしが軍を引退するならカナちゃん、モーちゃん、スーちゃん、ジューちゃんたちも部下じゃなくなって、今度はあの子たちが小隊長になる。だから隊長らしく最後に何かエモい話でもゆっくりしてあげて、あの子たちが巣立っていくのもちゃんと見届けたいからそういった時間を取ってあげたいってのある。

 なによりね、やっぱロロちゃんが気になるんよね。もうあたしは戦力になれないけど、それでもあの子が心配で、お姉ちゃんとして最後までやれることをしてやりたい。あの子やミューちゃん、アヤトの関係も最後まで見守ってあげたいんよ。あの子たちの面倒事も全部解決してから自分のことを考えよっかな、とぶっちゃけ思ってたわけさね。

 そう言った意味でもしばらくは療養としてラナクスに滞在するつもりでいたんよ。戦力にはなれなくてもナーダさまが言うように育成なら協力できるかもしれんし、あたしの知識も役に立つかもしれんやん。

 なのに侯爵家の養子になったらそういった時間の余裕がなくなるだろ。だから最後はナーダさまの提案を受け入れるにしても、ちょっと考える時間が欲しいって引き延ばすつもりだったのに……アヤトの野郎、余計なことしたもんだぜ。

 まあ……あの子としては、だからこそなんだろうけど。今まで可愛い部下や後輩たちのこと優先してたんだから、今度はテメェの幸せを考えろって逃げ道を塞いだんだろ? お前ほどじゃないけど恥ずかしがり屋の捻くれ者だから、逃げ道塞がないと素直になれないって分かってるもんなその通りだよチクショウめ! でもそれとこれとは話が別だろ、もう少しお姉ちゃんらしいことさせろよ!

 こうなったらナーダさまに養子の話はもう少し後にしてもらうよう交渉するしかないか? 良くも悪くもナーダさまはアヤトやロロちゃんの事情も知ってるし、あの子たちを最後まで見守って上げたいって正直に話せば受け入れてくれるだろうから……なら困ったことがあれば何でも頼れって言いそうでもあるからそれこそ困るんだけど。


 なんて今後についてガチどうしようか考えてたのによ……アヤトの野郎……やってくれたな。

 つーかこれは絶対に嫌がらせだろ!? あたしのことよく分かってるならむしろ止めるだろ!? なのに国王さまにわざわざ確認取るとか――



「……お主は予を笑わせたいのか」


 現実逃避がてらアヤトの所業を愚痴っていたラタニと向き合うレグリスは言葉とは裏腹に渋い表情。

 というのも式典中に主役が我関せずで百面相をしていれば呆れもするがそこはラタニ、反省どころか口を尖らせて反論を。


「国王さまこそあたしに対する嫌がらせですか」

「今回の一件で散々振り回されたからのう、いい気味よ」


 負けじとレグリスもしてやったりとどや顔で返すも、見据える眼差しは優しさを帯びていて。


「ただお主に対する嫌がらせを否定はせんが」

「否定しないのかよ……」

「予やアヤトが持ち出すよりも先に、民が望んでいたことよ」


 そのまま視線を横へ向ければ、多くの民衆が歓声を挙げてラタニを称えていた。

 精霊種の復活で中断した勲章授与についてアヤトからやり直しの打診はされていた。しかし精霊力を解放できなくなり、精霊術士として生きられなくなったと知っても尚、最後まで授与式を執り行って欲しいと民から声は上がっていたのだ。

 故にラタニの退院に合わせて授与式のやり直しを行うと掲示、先日よりも更に多くの民が集まっていた。

 ちなみに授与式のやり直しはラタニに伏せたまま準備を行っていたりする。知られれば逃げる可能性が高いと判断で、つまりラタニにとっては不意打ちの状況なのだ。


「バカ共もアヤトがしっかりと対処しておるから安心せい」

「……あの子も抜かりなしっすね」


 しかも前回は精霊種の復活による混乱で完全に追い詰められなかった反ラタニ派も、ラナクスに戻る前にアヤトが必要な情報を集めてくれたお陰で授与式前に処分済み。

 お陰で懸念もなく執り行えるとレグリスは上機嫌だが、この手の祝い事が苦手なラタニはゲンナリしていた。


「予の判断は間違っていなかったようだ」


 そんなラタニの心情を他所にレグリスは満足げで。


「お主は王国の未来に必要であった。こんなにも多くの民を笑顔にしてくれたのだからな」


 出生を知り、不安材料は多くともレグリスはラタニを王国軍に引き入れた。

 ワイズの推薦や打算的な考えもあったが、ラタニは想像以上の成果を上げたのだ。

 民の幸せを第一に考えるレグリスにとって、バルコニーから見える景色こそ望んでいたもので。


「要はワイズさまの判断じゃないですか」

「かもしれん」


 故にラタニの嫌味も笑って一蹴。

 これ以上の抵抗は無駄と判断したのか、観念したようにラタニが民衆と向き合うなり拍手喝采で応えてくれた。

 半ば自棄で王国最強の座に就いた七年をラタニがどう過ごしたか。

 その答えがこの景色なら。


「むず痒いから嫌なんだけど……悪い気はしませんね」

「ならばこれ以上待たせるでない。予も暇ではないのだぞ」

「わっかりましたよ」


 レグリスに急かされるままラタニは跪き、同時に民衆もその瞬間を待ち望むよう静まり返り――


『レグリス=フィン=ファンデルの名の元に、王国の英雄に相応しいラタニ=アーメリの軌跡を称えこの勲章を与えよう』



 

オマケのラストはまさかのラタニさんのもやもや、これで今章も無事もやもやシリーズを入れられました……なにか済みません。

またオマケでミライの事情について描く予定でしたが、構成上別の機会が良いと判断して変更してしまい申し訳ありません。

もちろんもやもやシリーズを入れたいだけではありませんよ? 前章と今章はラタニ編ですし、色々なしがらみから解放されたラタニさんの本心を少しでも描きたかったのもあります。

その上で中断したままの授与式と絡めたのも、精霊力を解放できなくなってもラタニさんが守り続けたものは多くの民衆の心に刻まれています。

だからこそ王国最強の座から退いても、多くの民衆がラタニさんの晴れ舞台を祝いたいと望んだのでしょう。まさに強さだけでは決して得られない瞬間でしたね。


そしてオマケも終了したことで第十六章及び第四部も終了、次回から第五部と新章突入……ではなく外伝を予定。

というのも第十七章以降は外伝を入れるタイミングがないんです。なので第五部を前に外伝を楽しんで頂ければと思います。


それでは最後の外伝(予定)『いろいろな物語』をお楽しみに!


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!


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