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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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呆れる真相

アクセスありがとうございます!



 ロロベリアの交渉によってマヤから情報を得た後――


「持ってきたぞー」


 浴室までアヤトを送り届ける間に一通りの説明を終えたユースは一度客間に戻り衣服を手に脱衣所へ。


『ご苦労』


 ドア越し返答するアヤトの声以外にシャワーの音が聞こえるなら入浴まではしないらしい。


「お前が風邪引くと姫ちゃんが責任感じるから、よく温まれよ」


『へいよ』


 病み上がりで大量の水を浴びただけに本当は湯船に浸かった方が温まる。ただ応接室にロロベリアたちを待たせているのなら無理強いもできないと注意に留めた。


「それとお前は姫ちゃん以外に朧月を触らせたくないらしいから、得物は後で取りに行こうぜ」


 更にユースが用意したのは衣服のみ。朧月や月守は妙な拘りを尊重して置いたままとも伝えておく。


『ツキにも触れさせているがな』


「ツクヨさんには構わんだろうけど、なんで姫ちゃんだけ特別扱いなんだ?」


『たいした理由じゃねぇよ。朧月にはジンの魂が込められているからな』


「……どゆこと?」


『刀を打っている間に少しばかり腹を割って話したことがあってな。むろんジンだけでなく俺も当時は白いのの存在を知らなかったが、恐らくその話からジンは朧月と命を付けた』


「…………」


『故に特別扱いと言われても否定せんが、ジンの命を意識してなんとなく白いの以外に触れさせたくないと感じた程度の拘りだ。要は絶対でもねぇよ』


「お前の拘りは理解するの難しいわ……」


 端的過ぎて分からないとユースはため息一つ。

 ただジンとどんな話をしたかも気になるが、それ以上にアヤトが質問に答えてくれたのが珍しい。


『つーか、なんの用だ』


 いったいどんな心境の変化かと思っている中、今度はため息交じりにアヤトから質問が。

 脱衣所から離れないことや、付き添いに名乗り出たことから二人きりになるタイミングを狙っていたとばれていたらしい。

 つまりユースは誰も居ない場所で確認したいことがあったわけで、ばれているなら遠慮なくと切り出した。


「お前が姫ちゃんを鍛えてたのって、ラタニさんとの約束が理由か」


 教国からの帰路で自分やリースを鍛えている理由はロロベリアを守る戦力として見込んだとは聞いていた。しかしロロベリアに関しては利用できる期待としか教えてくれなかった。

 だがラタニの出生、交わした約束を考慮すればユースなりの予想が立てられたわけで。


「元よりラタニさんが暴走する可能性があったのは何年も先だ。それまでに戦力として期待できる姫ちゃんを鍛え上げて、協力させようと考えた。いざって時の為に精霊術士の味方が一人でも多く必要だからな」


『…………』


「ただし協力させるのは約束通り殺すためじゃなく、今みたいに救う可能性を見つけた時の為だ。なんせお前は精霊力を感じられない、様々な可能性を考慮して自分の都合良く動いてくれる精霊術士が欲しかったんだろう?」


 もちろんアヤトがロロベリアの好意を利用して巻き込もうとは思っていない。なんせ鍛え始めた頃はロロベリアもアヤトがクロの可能性がある、という理由で接触していた程度だ。

 ただロロベリアは元平民、ラタニに対しても好意的な感情を抱いていた。ニコレスカ家の方針も知っているなら尚更そういった差別意識に染まっていないと分かるはず。

 要は思想と将来的な伸びしろ、自分が一方的に持ち出した訓練にも積極的に参加するとなればアヤトにとってロロベリアは理想の協力者に見えただろう。


 まあ最終的にラタニを救う為の協力者は多く集い、戦力とは別の役割を担える力をロロベリアが秘めていたのなら、この現状はアヤトの期待以上にもなっているわけで。


『他にもあるがな』


「……そうなのか?」


 否定こそしないが、アヤトなりに別の狙いもあったらしくユースが問えば苦笑交じりに答えてくれた。


『ラタニを殺せば王国最強の座が空白になるだろう。むろん変わりの誰かがその座に就くが、国の貴重な戦力をこの手で殺めて終わり、というのも無責任な話だ』


「…………ん?」


 ……のだが、その狙いを聞いてユースはすぐに理解できず首を傾げるもアヤトは構わず続ける。


『それにラタニや前最強のワイズのように、地位や名誉に拘らず民を第一に考えるような実力者というのも希有な存在だ。なら適任な奴がいれば、詫びついでに育てておきたくもなる』


「…………」


『結果的に白いのはラタニから後継者と目を付けられる程の逸材だったのなら、俺の見立ても悪くなかったようだ。むろんまだまだひよっこに過ぎんがな』


 気のせいかドアの向こうでアヤトがどや顔をしているのが見えるのはさておいて。

 つまり思想や実力共にラタニの座を継ぐに相応しい人物としても目を付けたアヤトはロロベリアを鍛えることにした。


『つけ上がるから白いのには言うんじゃねぇぞ』


 切っ掛けは最初の模擬戦か、なんにせよアヤトは最初からロロベリアの可能性をかなり高く評価していたらしい。

 どんな理由であろうといつかラタニを殺める可能性があるのなら、責任を持って新たな王国最強を育てようとした律義な考えは実にアヤトらしいが。


「……回りくどいというか、無駄にお前らしいと言うか」


『無駄は余計だ』


 常人では理解しがたいその理由にユースが呆れたのは言うまでもない。




オマケその一は『報い方』の後書きでユースが時間操作以外の何を疑問視していたのか、についての真相でした。

今まで隠していたロロを鍛え始めた理由や、期待という言葉の意味は、ユースが当てたような戦力として以外に、ラタニの後継者を育てるものでした。

実のところそれだけ初期からアヤトはロロの可能性に期待してたわけですけど……本当に回りくどいというか、無駄に律義な理由にユースが呆れるのも無理はありませんね。

ただアヤトにとってラタニを殺める罪悪感がそれだけ重く、少しでも和らげたい感情から思いついた贖罪の表れなのかも知れません。

またついでというわけではありませんが、朧月をロロ以外に触れさせない理由についても明かされました。こちらは端的に言えば後に朧月が誕生した理由がロロだと分かった結果の拘りですかね。独特の拘りを持つアヤトらしいと言えばらしいものでした。



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