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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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長い一日も終わり

アクセスありがとうございます!



 王都に戻ったアヤトたちはまずニコレスカ邸に向かった。

 先に戻っているサクラやカイルたちとの合流とラタニの検査をするのが目的。なんせ表向きでは精霊種の討伐後、霊獣地帯の調査に向かったラタニが意識不明で医療施設に運ばれれば大騒ぎになる。

 故にアヤトの検査も担当したニコレスカ家お抱えの医師をクローネが呼んでくれている。お抱えの医師ならミライの検査も含めて内密に行える上に、後にレグリスと話し合い施設に移送するまでゆっくり休ませることも可能。

 ただアレクはこのまま王城へ。もともとサクラの招待を受けた体の外出だったが術士団を追い返した時点で行き先はバレてしまうなら早々に戻るべき。


「もちろんサクラ殿下に迷惑はかけないようにするよ」


 サクラの共犯については上手く対応するらしいが、処分が待っているはずなのに晴れやかな表情で。


「ラタニさんの容態は王城に来た時に教えてもらえるかな」

「約束しよう」

「ありがとう。ではラタニさん、また」


 ラタニをアヤトに託すその表情も優しく、ますます二人の関係が気になるも質問する空気ではなくそのままサクラが用意した馬車で王城に向かうアレクを見送った。

 そしてラタニの容態を確認した後、軍施設に帰還するカイルたちも含めて一同は屋敷へ。


「お疲れじゃった。医師は既に来ておるぞ」


 出迎えてくれたサクラの労いを受け、戦闘でボロボロになったアヤトたちも着替えなどを済ませるよりもまず医師の待つ客間に。大勢で見守るのも迷惑と代表してサクラとツクヨが立ち合う中、他の面々は廊下で待つことしばし。


「――随分と衰弱してるけど命に別状は無し、だってよ」


 廊下に出てきたツクヨから結果を聞いてみなが安堵したのは言うまでもなく。


「それとミライもだけど、精霊力の消耗以外の異常はなしだ」


 また一緒に診てもらったミライも問題はなく、とりあえず一段落。


「なら俺は出かけてくる」


 ……するなり早速アヤトが別行動を。


「むろん着替えてからだが、クローネには世話になったからな。礼も含めて早々に約束を果たしたい」


 ただ理由を聞いて納得。ラタニの救出が上手くいったら自身やマヤの秘密をうち明けるとクローネに伝えている。協力してくれたお礼も踏まえて早々に約束を果たすらしい。


「そのまま王城に向かい国王が帰ってくる前にアレクやエレノアにも話を付けておく。レイドの一件も確認したいしな」


 つまり屋敷に戻ってくるのは遅くなるわけで、ロロベリアやミライについてはツクヨに情報共有を任せるらしいがそれよりも。


「レイドがなにかしたのか」


 帰路での報告を知らないだけにカイルが訝みの表情。その件についての説明はサクラに任せることに。


「モーエンさんとジュシカが戻って来たらここへ来るよう伝えてもらえますか」

「構いませんよ」


 最後にカナリアがまだ王都に到着していない二人をマヤに頼み、着替えのために当てられた客間に向うアヤトを見送った。


「レイドについて話してもらえますか」


 遅れて同じくボロボロのフロッツ、ダリヤ、スレイ、カナリア、エニシも身支度の為に一度席を外す中、改めてカイルが質問を。


「じゃな。先にそちらの話をしておこうか」


 故にサクラの提案で場所を応接室に移してから事情を説明することに。


「妾もエレノア殿から聞いた故、本人から聞いておらんのじゃが、どうもルビラ殿と結託して()()()()()()()()()()()()


『…………は?』


 その物騒な切り出しに唖然となる面々に向けてサクラが続けるにはアレクを見送った後、レイドはルビラと接触したらしい。

 ルビラを選んだのはアヤトたちの事情をうち明けるに相応しい相手として。アヤトに対して好意的で交流のあるルビラなら信頼できる。

 しかしそれ以上にルビラは政務に関わり軍施設内部にも詳しい。何とかレグリスにこちら側の事情を伝えようと考えたレイドが協力を求めた。


 その結果、二人で計画したのが通信室への侵入だった。

 まずルビラと共に施設に向かったレイドは責任者に視察に来たと説明。急な訪問でも王族の視察を無下に出来ず、レイドの話術もあり責任者と内部を回っていたらしい。

 だが途中でトイレに入ったレイドが窓から離脱。

 急に姿を消したことで捜索が始まる中、そのまま通信室に向かったルビラが室内にいる者にも捜索を呼びかけ、誘い出した間に外から換気口で移動していたレイドが通信室に侵入。

 そのまま精霊器を使ってダラードに連絡、レイドからの連絡に驚く相手側に対しレグリスに言伝を頼んだ。


『白銀が王国の英雄を救った、父上にそう伝えてくれないか』


 同時に施設関係者に見付かるもレイドは平然としたもので。


『この精霊器には前から興味があったんだ。だから使ってみたくなってね』


 もちろん謝罪はしたものの精霊器の勝手な使用や一時的な混乱を招いたことで責任者は激怒、いくら王族とは言え見過ごせないと視察も中断。国王にも報告すると追い返されてしまったが――


「レイド殿の言伝はレグリス陛下の耳にも届いておったんじゃよ。故にレグリス陛下もアヤトがラタニ殿を救ったと察したそうじゃ」


 白銀とは帝国での一件から使用しているアヤトの別称、王国の英雄もラタニとレグリスも察するには容易い。

 またレイドが精霊器を使用したタイミングはアヤトがラタニと接触した頃、にも関わらず救ったと断言したのは作戦が成功すると信じてのこと。

 しかし白銀について知らないレイドがこの言伝を託せたこと。

 なにより自分たちが移動している間に何が起きたのかが分からないからこそ、事情を確認するべく王都にとんぼ返りすることになったわけで。


「今回のやんちゃはレイド殿の独断とされておるのでルビラ殿に処罰はないらしい。まあ本人はノリノリで協力していたそうじゃが……」

「……あのバカがっ」


 お陰でラタニの異変やアヤトの存在を隠した上でレグリスやマーレグにもラタニの無事を報告できたが、その強硬策にカイルは素直に喜べない。

 後にアヤトが事情を説明してくれればレグリスも納得してくれる。しかし代償としてレイドに対する軍関係者の心証は最悪だ。

 次期国王の座を目指すレイドにとってかなりの痛手になるだけに、もっとやり方を考えるべきだとカイルが憤るのも無理はない。


「レイド殿については以上じゃ。次は妾にも説明してくれぬか」


 とにかくレイドやアレクの所業についてはレグリスの判断を待つしかなく、予定通りミライやロロベリアの話題になり。


 情報共有を終えた後、軍施設に戻るカイルたちや研究施設に戻るシャルツとズークを見送り、残る面々はアヤトの帰宅を待つことに。

 その間にミューズは改めてレムアに事情を話したり、マヤから報告を受けてニコレスカ邸にやって来たモーエンやジュシカに顛末を伝えたりと過ごし。


「帰ったぞ」


 夕食後にアヤトも帰宅。

 レグリスと話し合った結果、とりあえず翌朝ラタニは軍の医療施設に移送されることが決まった。またロロベリアの精霊力についても知られたことで落ち着いたら一度王城に来るよう指示。

 ミューズの眼についても話したらしいが他国の令嬢と配慮したのか、詳しい事情を聞くつもりはないそうで。

 今後についてはラタニが目を覚ました後に改めて話し合いが行われる。つまりアヤトとロロベリアはもうしばらく王都に滞在、残りの面々は学院もあるので明日ラナクスに戻ることが決定。

 ミライはこのままニコレスカ邸に。約束したのもあるが、ロロベリアが居なければまた姿をくらます可能性がある。故にロロベリアの近くに置き、目を覚ました本人の口から得た情報はアヤトからレグリスに報告、指名手配についても解除するらしい。


 そして翌朝、移送されるラタニを見送った後、ニコレスカ姉弟とミューズ、ラン、ディーン、イルビナ、フロッツ、ダリヤはラナクスに出発。


「お姉さまが目を覚ましたら連絡をください」

「もちろんです」


 後ろ髪を引かれる思いで馬車に乗り込むミューズと約束を交わし、ミライの様子を確認しつつ屋敷で過ごしていたロロベリアとアヤトの元に朗報が届いたのは夜更け頃で。


「ラタニさまが目を覚ましたと連絡がありました」


 その報告にロロベリアは安堵するが、朗報にも関わらず使用人はどこか戸惑っていて。


「ですが――」


 アヤトが質問するよりも先に告げられたラタニの容態は()()()()()()()()()()()()()()



 

レイドさまがルビラさんと協力して行ったやんちゃですが、大きな代償を負う結果にレイドさまならもっと上手く立ち回れると応援をしていたカイルが怒るのも無理ありませんね。

そんなレイドさまが強硬策に出た理由もありますが、アヤトと国王の話し合いについても踏まえて、詳しい内容はオマケで描く予定なのでもう少々お待ち下さい。

そして長い一日も終わり、ラタニも目を覚ましましたが全てが丸く収まったともいかず。

いったいラタニさんに何があったのか、そちらについては予告通り次回の終章で。



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みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!


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