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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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もう一度約束を

アクセスありがとうございます!



 空中でアヤトと交差するなりラタニの全身を覆っていた黒焔が消失、漆黒の瞳や髪色も元の紫眼や赤髪に戻った。

 一度目の時よりも完全に黒い精霊力の影響が見えなくなったのは、マヤの情報通り精霊石を両断した結果か。

 つまり今度こそ作戦の第二段階は成功、後はロロベリアの精霊力で浄化するのみ。

 また黒い精霊力から解放されたことで飛翔術も維持できず落下していくラタニを地面スレスレでフロッツが救出。

 アレクの声によってラタニの動きが止まるなり、後の展開を踏まえてアヤトと同時に飛翔術で向かう判断は見事で。


「頼むぜロロちゃん!」

「はい!」


 とにかくラタニを救出したフロッツがそのままロロベリアの元まで送り届けることで時間のロスなく浄化を開始。


「そう急ぐ必要はありませんよ。なのでまずは斬り傷を治療した方が良いかと」


 ……する前にクスクスと笑いつつマヤが助言を。

 確かに白夜で斬られたのでラタニの左胸からは血が流れている。それでもミューズの情報を元に三センメル少しと最小限の傷で、的確に精霊石を両断したアヤトの技量はさすがの一言はさておいて。


「なら先にっと」

「んな悠長な……」


 助言通りに治療を始めるロロベリアにフロッツは呆れから肩を竦める。

 まあここに来てマヤが大丈夫というなら本当に急ぐこともないとロロベリアは思うわけで、傷の治療を終に改めて浄化を開始。

 現に精霊力を流し込んでもラタニから拒絶反応の類いはなく静かな物で。


「……お姉さまの体内から黒い精霊力は完全に視えなくなりました」

「アタシの眼にも白い精霊力しか視えねーな」


 またミューズやツクヨの眼によって黒い精霊力の完全消滅も確認。


「お疲れさまでした。わたくしとっても楽しめましたわ」


 後半の言葉はこの際良いとしてマヤのお墨付きも得た。

 つまりラタニの救出は成功した。


「……隊長」

「よかった……本当によかった……」

「やっと終わったぜ。あー……しんどかった」

「少しは空気を読め……と言いたいが、私もだ」

「これでお嬢さまに顔向けできますな」


 歓喜のあまり涙を零すスレイやカナリアを他所に、地面に倒れ込むフロッツを窘めながらもダリアやエニシも笑顔で座り込む。

 もちろんロロベリアやミューズ、ツクヨも手を合わせて喜びを噛みしめる中、最後に合流したアヤトはため息一つ。


「なら残りの面倒事も終わらせるか」

「……あのね、アヤトくん。もっと言うことあるでしょうに」


 無粋な発言にフロッツは抗議するもアヤトは止まらない。


「ラタニの身を案じていたのはお前らだけじゃねぇよ。今回の一件に協力した連中にも知らせるべきだろう」

「……それもそうだわ」

「後はま、今くらいは譲ってやれ」


 正論を述べた後ほくそ笑み、背後で茫然と見守っていたアレクの背中を押した。


「ラタニを頼む」

「私で……いいのですか」

「つーかあんたがいなけりゃ簡単に終わらなかった」


 もしアレクが来なければアヤトは約束を破り寿命を消費していたのもある。

 しかしラタニが目を覚ました時、最初にアレクの顔を見せてやりたい。


「また拒絶されるかもしれんがな」

「……構いません。その時はその時です」


 皮肉めいた一押しにアレクも吹っ切れたのか、そのままラタニの元へ。


「……お姉ちゃんとアレク殿下ってどんな関係なの?」

「こんな時くらい構ってちゃんは抑えろ構ってちゃん」


 元学院の先輩後輩としての関係にしては妙に親密な感じに見えるだけにロロベリアは疑問視するも、アヤトはお約束で交わすのみ。現に同じ認識な他の面々は空気を読んで二人と距離を取っていた。


「それよりも他の連中に報告しておけ」

「……はーい」


 故に詳しい事情は本人の口から聞けばいいとアヤトは指示。

 相変わらずマヤ伝手の連絡はアヤトのみ対価が必要なのでロロベリアが受け持つことに。


「モーエンやジュシカはどこにいる」

「ここに私たちを送り届けた後、そのまま王都に戻っていますよ」

「時間的にまだ到着はしてない……早く教えてやらないと」


 別行動中のモーエンとジュシカには王都で合流次第の報告になるだけに、カナリアやスレイは気もそぞろ。


「アヤト、カイルさまたちはもうこっちに向かってるって。それと予定通りお義母さまが用意してくれた馬車でグリードさんたちが迎えに来てくれるわよ」

「帰りの足も確保できたな」


 またカイルたちは自らの足で王都に戻る予定だがやはり一端合流するらしく、クローネが集めてくれた商会員にはグリードから任務終了を伝えた後にイルビナ、レガート、ズーク、シエンと共に数台の馬車でこちらに合流。

 作戦終了後、さすがに自らの足で戻るのは酷と事前に人数分の馬車を用意してくれたクローネには感謝しかない。


「あとサクラはもうすぐ王都に着くみたい。途中で見つけたランさんとディーンさんも一緒にいるって」


 既に王都付近まで帰っているサクラがレイドやエレノアに報告してくれるらしい。


「後はそいつか」


 報告も一段落したところでアヤトが話題に取り上げたのはスレイに背負われ眠っているミライについて。

 見目の特徴からロロベリアを探している少女だと察するも、なぜここにいるのか。


「つーか俺が無様にくたばっていた間に何があった」

「それが私もさっぱりで……」


 ミライの乱入時に意識を失っていたアヤトは当然ながら、ロロベリアも暴走していたので説明が出来ない。

 ただ直接言葉を交わしたフロッツはいくつかの情報を伝えることはできても、他の面々はミライについて詳しい事情は把握していない。

 もちろんマヤは何か知っているはずだが、言うまでもなく質問したところで教えてくれないだろう。


「ま、詳しい話は帰りの馬車内にするか」


 故に今はここにいる面々での情報共有を優先。

 なんせ王都に戻れば事後処理が待っている。今後の対策も視野に入れれば口裏合わせも必要、特に国王への対応を務めるアヤトは全てを知っておく必要があった。


 とにかく迎えを待つ間、ロロベリアやミューズが怪我の治療を始める中――


「……んん」

「ラタニさん……? 目を覚ましたのですか」


 抱きかかえるラタニがもぞもぞと動き、アレクは優しく声を掛ける。

 対するラタニと言えばアレクの顔を認識するなり驚いたのかパチパチと瞬きを。


「……なーんでアレクがいるさね」

「よかった……」

「なにがさね……」

「いえ……それよりも、覚えてないのですね」


 弱々しい声音でも本来のラタニであることにアレクは涙が零れそうになるも、首を振り強引に話題転換。

 その問いにしばし目を閉じていたラタニは苦笑を漏らす。


「どうだろうねぇ……ただなんとなーくだけど、あたしが迷惑かけたのは覚えてるよん」


 黒い精霊力に囚われている間のことは断片的にでも記憶にあるらしい。

 しかしまだ思考がハッキリしていないようで、開かれた瞼が徐々に閉じられていく。


「だから後で詳しくだ……ぶっちゃけいま、めっちゃ眠いんよ」

「ならゆっくりと休んでください」


 故に今は無理せず休むべきとアレクは促すも、最後に一つだけ伝えたい。


「落ち着いたらラタニさんに話したいことがあります」

「……聞かなきゃダメ……なんだろうね」

「もう逃がしませんよ」


 ラタニが現状を知った上で、すれ違い続けた時間について。

 なにより自身の気持ちを伝える時間が欲しい。

 強引に約束を取り付けるアレクの眼差しに、どこか観念したようにラタニは笑って。


「んじゃ、目を覚ました時にでも……お話ししますか」

「はい」


 満足げなアレクの笑顔を見詰めつつ再び眠りについた。




まずはラタニさんが元のラタニさんに無事戻りました。

さすがにここに来て波乱は勘弁ですからねはさておいて、まだやるべき面倒事はありますが一先ずめでたしでしょうか。

またアヤトの望んだ通り、目を覚ましたラタニさんが最初に見たのはアレクの顔で。

一方的に決別を宣言されたアレクも今度こそ逃がさないとラタニに約束を取り付けましたね。

改めて二人が向き合い、どんな話をするかはもちろん後ほどです。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!


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