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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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その声が届く時―

アクセスありがとうございます!



 命懸けの時間稼ぎを覚悟したのもつかの間、負傷したアヤトが戦線に復帰。


「……もう大丈夫なのですか」

「なんとかな」


 フロッツやエニシ、ダリアが安堵する中、まず体調の心配をするカナリアに背を向けたままアヤトは返答を。


「それよりも俺が寝ている間になにが起きた――」



『アアアアア――――ッ』



 改めて状況説明を求める間にラタニが黒弾を放つも、アヤトは肩に乗せていた朧月で冷静に対処。


「――なんざ聞いている暇もないようだ」



『アアアア――ッ』


 そのまま場を離れるために駆け出せば、やはり神気に反応しているのか釣られるようにラタニも追っていく。

 確かに情報共有をする暇はないが、これだけは伝えるべきとカナリアは精霊器で声を拡張。


『隊長の精霊石を完全に両断して下さい!』


「あん?」


『そうすれば隊長の意識は戻るとマヤさんが言っていました!』


「随分とサービスがいいじゃねぇか」


 意識を失っている間に得た重要な情報にアヤトは苦笑を漏らす。

 マヤの気まぐれで同じミスは防げるが、だからといって簡単ではない。

 ロロベリアの猛攻によるものか、僅かながらでも浄化した影響かラタニの精霊力は弱っているがアヤトも大量の出血でかなり衰弱している。


 なにより自分たちの状況だ。

 それなりに余力を残しているカナリアですら既に三割程しか精霊力がなく、常に飛翔術を扱い続け、アヤトが復帰するまで最も精霊術を使い続けたフロッツは更に消費している。加えてここまでの激戦で荒れ放題の地面ではエニシやダリアも囮役を担えない。

 むしろ擬神化の恩恵があるにしても、これだけ不安定な場でラタニと渡り合えるアヤトはさすがと言えるが、逆にそれが仇となっていた。


「……さっきの方がやりやすかったぜ」


 フロッツがぼやくようラタニの動きが変わっているのだ。

 先ほどまでは空中に留まり近づく者に向けて黒弾や黒刃を乱射させていたにも関わらず、今はアヤトを追尾しながら攻め立てている。

 弱っているが故に最大の脅威を確実に仕留めようとしているのか、とにかくこれだけ縦横無尽に動き回れては介入する余裕がない。


「このまま見てることしかできないのかよ……クソッたれ」


 最後の最後でアヤトに全てを任せるしかない現状に、思いを代弁するようフロッツは吐き捨てた。



 ◇



「厄介なことこの上ねぇ」


 一方、ラタニの執拗な追撃から逃げつつアヤトも同じ結論に達していた。

 意識を失っている間に何が起きたか分からないが、精霊力を感じられなくともラタニは確実に弱っている。しかしそのせいか攻め方が変わってしまった。

 お陰でフロッツたちも静観している。まあ無理に介入されると自由に動けなくなるだけに見事な状況判断か。

 とにかくカナリアから得た情報でラタニを止める方法は確立された。

 後は実行するのみだがフロッツたちの援護を期待できない今、自分でスキを作る必要がある。


「……やるしかないか」


 その方法も既に思いついている。

 故にアヤトは逃げ回りながら神気を両手に集約させていた。

 この方法はラタニとの約束を破ることになるが迷っている暇はない。

 周囲の消耗に加えて自身も限界に近いのだ。

 このまま何も成せず、みんなの協力を無駄にするくらいなら拘るまでもない。


 つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 一時的な使用ならマヤ以外に気づかれることもないと、白夜の準備をしつつチャンスを窺い。

 やがて白夜を抜くほどまで神気を集約させたアヤトは速度を上げてラタニと距離を取り。


「さて……」


 朧月を鞘に納めると同時に反転。

 迫り来るラタニと向き合い。


『アアアアア――――』


「……済まない」


 約束を破ってしまうことをラタニと、協力してくれた仲間たちに向けて謝罪を口にする。


 そして己の寿命(未来)を対価に時間を止めようとした瞬間――



 ()()()()()――――



「…………っ」


 微かに聞こえた声にアヤトは意識を奪われてしまう。


 それはロロベリアが放った白い輝を前に胸騒ぎを抱いたアレクの声で。

 ラタニを心配する思いが故に暴走し、カイルたちの制止も振り切ってまで来てしまった。


「――ラタニさん! ラタニさん……!」


 思いのまま何度も叫ぶアレクの介入はアヤトのスキを生む結果となったが。


「……やれやれ」


 その無謀な行動をアヤトは咎めるどころか苦笑を漏らす。


 何故ならアレクの声はアヤトだけでない。

 変わらず黒焔を纏わせたまま、完全に意識を取り戻しているようにも見えない。

 しかし黒い精霊力に囚われていようとラタニにとってその声は、アレクの存在は無視できないのか。



 ……あれ…………く…………



 空中で静止したままラタニはアレクの呼び声に答えようとしていた。


「最初から参加させれば楽に済ませたのかもしれんな――っ」


 もちろんそんな単純な話ではない。

 僅かでも精霊石を傷つけたことで黒い精霊力の影響が弱まっていたのか。

 それともロロベリアの浄化が僅かながらでも効果があったのか。


 どちらにせよアレクの声がラタニを制止させたのは間違いなく。


 この好機を逃すはずもなくアヤトは両手を合わせて白夜を抜いて跳躍。


「惚れた男が迎えに来てくれたぞ」


 迎撃もなく悠々とラタニとの距離を詰め、左胸に狙いを済ませ白夜を振るう。


「幸せになれよ……姉貴」


 そのまま横を通り過ぎる際、満足げに微笑む。

 全てが終われば少しだけ己の心に正直に生きると決めたからこそ。


「……()()()()()


 最初の一歩としてラタニに対する素直な気持ちを口にした。



 


約束を破り自らの寿命を犠牲にしてラタニを救おうとしたアヤトでしたが、結果は読んで頂いた通りです。

とにかく時間を止めるまでもなく、アレクの呼び声によって最後はラタニを救うことが出来ました。

なぜラタニの意識が一時的にでも戻ったのかについてですが、作中での考察は無粋でしたかね。

やっぱりラタニを救うにはアレクという存在が最後の鍵だったと言うことで……どうでしょうか(汗)。

それはさておき、アヤトが素直な気持ちを口にしましたが後日談も含めて今章はもう少し続きます。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!


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