表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
760/779

混乱と共闘

アクセスありがとうございます!



 ロロベリアの一方的な蹂躙にラタニも危うい状況下で突如現れたのは謎の少女。


「もしやあの少女は……」

「……多分、そう」


 突然の乱入に呆気に取られていたエニシとスレイは少女の見目からその正体に気づいた。

 ツーテールの髪型や年頃、なにより新解放をしながらも精霊術が扱える風の精霊術士はロロベリアを探している少女の特徴そのもの。


「……あの嬢ちゃん、だよな」


 また空中に居るフロッツも特徴から同じ判断を。

 ただ地上の三人よりも近くに居るだけに疑問が増えるばかり。

 というのも歓喜のあまり涙まで零していることから、少なくとも少女はロロベリアの敵ではない。むしろ言葉遣いから敬意や慈しみを感じられる。

 しかしロロベリアを『ローエル』と呼び、白い精霊力による変化を前にしても全く動じない。

 本人の精霊力も含め、少女は何者なのか。

 ロロベリアとどのような関係なのか。

 いったい何を知っているのか。


「ですが驚きました。いったにどのようにして()()()()()()()()()()


『…………』


「お陰でローエルさまの()()()()()()()()()()()()()()()()


『…………』


「……ローエルさま?」


 フロッツの疑問を他所に少女は変わらず言葉を投げかけていたが、ようやくロロベリアの状態に気づいたのか訝しみの表情を。


「……どうされましたか、ローエルさま」


『穢れは排除』


「え? ローエルさま?」


 対するロロベリアは興味をなくしたように再び地上に拘束しているラタニ目がけて精霊術を発動。


『――ォォォォ……っ』


「なにをなさっているのですか! ていうかあの人間は――は? どうなってんの?」


 続いて地上のラタニも今さらながら気づいたようで少女は混乱。


「あの人間はローエルさまの知人ではないのですか? そもそもなぜあの人間が…………あれ?」


 更になにか気づいたのか突然ロロベリアを凝視、みるみると表情が青ざめていく。


「……()()()()()()()()()()。むしろ……この歪な流れは……っ」


「嬢ちゃんはいったい何を気づいた」


 堪らずフロッツが少女の元に。

 聞きたいことは色々あるが今はラタニの安否が最優先。ロロベリアを止められる方法を知る少女に賭けるしかない。


「はあ? アンタ誰よ!」

「それは俺の台詞……だけど、それよりも教えてくれ。ロロちゃんはどうなっちまったんだ?」

「ロロちゃん……ああ、ロロベリア=リーズベルトだから……」

「納得するよりも早く教えてくれって! このままじゃロロちゃんが傷つくことになるんだぞ?」


 故に少女については後に回しフロッツは訴える。

 言葉の節々から少女は相当ロロベリアを大切に思っているはず。


「嬢ちゃんもラタニ殿のことを知ってるみたいだけど、ロロちゃんにとってラタニ殿は姉のような存在なんだ」

「…………」

「でもあの状態になってからおかしくなって……だから頼む、止める方法があるなら教えてくれ」


 ならばロロベリアを助ける為なら協力すると頭を下げるフロッツの読み通り、少女はため息一つ。


「ローエルさまとアタシを引き離さないって約束して」

「は?」

「アタシって指名手配されてるんでしょ。だから何があっても引き離さないって約束するのよ!」

「……交渉成立だな」


 どちらにせよ少女には聞きたいことは山程ある。

 約束の件はアヤトらに任せてフロッツも了承すれば、少女は簡潔にでも教えてくれた。


「今のローエルさまは自我を崩壊しそうな程に精霊力の流れがおかしくなってるの。だから穢れだけに反応しちゃって……アタシに興味をなくしてるような状況よ」

「……それで」

「出来る限りでいいからローエルさまに精霊術を使わせないで。そうすればアタシが正常な流れにしてみせるわ」

「出来る限り……か」


 ロロベリアの暴走が精霊力の流れに関係しているなら精霊術を控えさせるという理屈は分かる。

 ただ妙な力で近づけない上に周辺には様々な精霊術が飛び交っている状況。フロッツ一人ではさすがに荷が重い。

 それでも地上に居る三人に合流したカナリアに向けて耳を指させば返答の頷きが。

 エニシかダリアが聴覚に精霊力を集約してこちらの会話を聞いていたのだろう。


「頼んだぜ嬢ちゃん!」

「嬢ちゃんじゃなくてミライよ!」


 故に四人の援護を期待してフロッツは少女――ミライの叱咤を受けつつ一度距離を取った。


「いきますぞダリアさま!」

「了解した!」


 合わせてエニシとダリアがそれぞれの武器に精霊力を纏わせ放つ。


『爆炎よ!』


『氷塊よ!』


 更にスレイとカナリアは精霊術でロロベリアの放つ精霊術を打ち落としていく。

 穢れに反応しているのなら自身の目的を邪魔すればどうなるか。


『……邪魔しないで』


 思惑通り四人の横やりにロロベリアの注意が向けられ一時的に猛攻が止まった。

 下手をすれば四人も攻撃対象に入ってしまうが、その前に決着をつければ良いだけ。


「ちょいとばかり荒っぽいけど――『許してくれよ!』」


『――――ッ』


 勢いを付けてロロベリアに急接近したフロッツは両手から暴風を繰り出した。

 この不意打ちにはさすがのロロベリアも対処できなかったようでされるがまま吹き飛ぶ。

 加えてその先にはミライが待ち構えていて――


「失礼します――ローエルさま!」


 そのまま抱きかかえるなり両手に精霊力を集約、翠の濃い煌めきがロロベリアの体内に吸い込まれるよう流れていく。


『ゥゥ――ッ』


 同時にロロベリアが呻くも徐々に白い輝きが消滅。


「…………ここは……?」


「よかった……お目覚めになられたのです……ね」


 やがて元の乳白色の髪に戻り、意識も取り戻したようでロロベリアから感情がこもった呟きが漏れる。

 その声に安堵するようミライは微笑むも、彼女の髪からも翠の煌めきは消えていた。

 ロロベリアの暴走を食い止めるためにミライは精霊力の解放を維持できないほど精霊力を消耗したのか。

 つまり飛翔術も維持できず二人は落下していくわけで。


『先に言っておけよ!』


 慌ててフロッツが救出に向かう中、ロロベリアと共に落下していたミライは歪な精霊力の流れを感じ取る。

 しかもその流れはミライの知る限り一つの存在しか起こせないもの。


「……やっぱり……いた、のね」


 確信を得たミライはツクヨやミューズが居る方向を見詰めつつ。

 

「…………()()


 苦々しい呟きを残して意識を失った。




ミライのお陰でロロも元に戻りましたが、意味深な情報ばかり残したミライはここで一先ず退場となります。

その情報に触れるのは後程として、暴走したロロの猛攻を受けていたラタニはどうなったのか。

ラタニ救出作戦も残り僅か、最後までお楽しみに!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ