歓喜の乱入
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アヤトが回復するまでラタニの注意を引きつける役割に徹していたフロッツ、スレイ、ダリア、エニシも白い光の柱には気づいていた。
しかしラタニの攻撃をかいくぐるのに精一杯で気にする余裕も無く、ひたすら囮りに徹していたがそのラタニが突如光の柱に向かった。
フロッツが追いかけるも黒弾を放たれ最悪な結末が頭を過ぎるも、突如現れた黒壁が黒弾を阻み事なき得たのだが――
「今のはいったい……」
「……わからない」
黒弾を阻んだ黒壁は間違いなく精霊術。しかし土の精霊術士がいないのに誰が顕現したのか。
そもそも光の柱は何だったのか、ダリアやスレイは安堵よりも困惑が先行していた。
「まさか……ロロちゃんか」
空中にいるフロッツは見えているが故に別の困惑を。
なんせロロベリアの見目が変化しているのだ。従来の乳白色の髪は煌めきを帯び、地面に届くほど伸びている。
加えて遠目からでも伝わる神聖な風格、それがロロベリアだとすぐに理解できないほどで。
しかも何かを呟くなりロロベリアは飛び立ちラタニの元へ。
『ウ……アァァァァ――!』
威嚇するようラタニは吠え周囲に黒弾を顕現。
「やば――っ」
『――――』
慌てて退避するフロッツを他所にロロベリアが口を開くなり火球を顕現、黒弾が放たれる前に全て迎撃してしまう。
『アアアア――――ッ』
『――――』
更に黒刃を繰り出すもロロベリアの周囲に顕現された同数の風刃がやはり全て迎撃していく。
「……どう考えてもロロちゃんがやってるよな」
「そうとしか思えないが……しかし……」
「なにが起きている……」
そのまま合流したフロッツの意見にダリアやスレイも同意はするものの、空中で行われる攻防に理解が追いつかない。
タイミング的にラタニの攻撃を防いでいるのはロロベリアで間違いない。しかし黒弾、黒刃、黒雷と様々な攻撃を防ぐのは火球や風刃だけでなく水弾も含まれている。
更に最初の黒弾を防いだ黒壁、今のロロベリアは四大すべての精霊術を扱っているわけで。
しかもその全てがラタニの後に顕現している。あのラタニを上回る発動速度、正確な狙いと本来のロロベリアではまず不可能。
なによりロロベリアから感じられる精霊力だ。
ラタニ以上に感じられる圧倒的な保有量にも関わらず、恐怖よりも安らぎを与える不思議な感覚は何なのか。
「……原初の精霊力」
ただただ困惑する三人に対し、エニシはロロベリアの変化に思い当たるものがあった。
東国の教典か不明だが、ツバキから聞かされていた御伽噺の元となった原本には原初の精霊は自然で満たされた世界を見守る友として自身の精霊力を元に大精霊――四大の精霊王を産んだと綴られている。
更に大精霊の精霊力を元に産まれたのが四大精霊、精霊力の大本は白い精霊力『原初の精霊力』となる。
そして御伽噺の内容と浄化作用などからロロベリアの精霊力は原初の精霊力と関係している可能性が高い、というのが現在の結論。
つまり結論通りロロベリアが原初の精霊力を秘めているのなら、四大の精霊術を扱えても不思議ではない。
また瞳や伸びた髪に煌めきが帯びていることから、今のロロベリアは白い精霊力を解放した状態なのだろう。あの白い光の柱も解放された精霊力によるものとすれば納得もできる。
ただなぜ急に秘められていた原初の精霊力が解放されたのか。
『――――』
『ァァァァ――ッ』
予想はできるも状況が呑み込めずにいる間に戦況が一変。
目前まで迫ったロロベリアが触れるなりラタニの体が地面に吸い寄せられるよう落下。
『――――』
『グゥ……ヴゥゥゥ――ッ』
更に風の精霊術によるものか、四肢を地面に縫い付けられ身動きの取れないラタニに四大を駆使した様々な精霊術が襲いかかる。
『ァァァァ――――ッ』
『さすがにやばいだろっ』
一方的な蹂躙にラタニの悲鳴が響く中、堪らずフロッツが飛び立ちロロベリアの元へ。
「止めるんだロロちゃん!」
『なにを』
「……っ」
肩を掴んで制止すればロロベリアも答えてくれるが、抑揚のない声音や虚空を見ているような瞳にフロッツは息を呑む。
「なにをって……いくらラタニ殿でもこれ以上は死ぬかもしれないだろ!?」
それでも自分を認識しているのは確か、故にフロッツは必死に訴える。
『あれはただの穢れじゃない』
「は……?」
『放置するのは危険』
しかし話がかみ合わずロロベリアは地面で藻掻き続けるラタニを見据えて。
『穢れは排除』
「やめろって――ぐぁ!」
フロッツが強引に止めに入るも瞬時に起きた風に吹き飛ばされてしまう。
「それ以上はダメだ!」
「頼む……もう止めてくれっ」
「ロロベリアさま……正気にお戻りください!」
再び始まる猛攻にダリアやスレイ、エニシが制止を呼びかけるも反応はなく。
「お姉さま……っ」
同じく状況を見守っていたミューズも絶望から膝を突く。
このままではロロベリアがラタニを殺す最悪の結末を迎えてしまう。
「く――っ」
「お前のせいだろ! なんとかしろよ!」
「かもしれませんね」
堪らずカナリアが飛び出す中、ツクヨが詰め寄るもマヤは平然としたもので。
「ですが、お楽しみはまだ終わっていませんよ」
「テメェ……これ以上なにを――」
クスクスと笑うマヤに問い詰めようするもツクヨの言葉は続かなかった。
何故なら妙な精霊力を感知したからで。
「……っ。ツクヨさん、これは……」
「聖女ちゃんも気づいたか……どこからだ」
ミューズも感知したようで周囲を見回す間にも妙な精霊力は更に近づき――
「見つけたぁぁぁぁ――――っ!」
「「…………え?」」
どこからともなく聞こえた歓喜の声にキョトンとなる二人の上空を翠の煌めきが通過。
そのままロロベリアの目前に停止したのは、翠の煌めきを帯びたツーテールの髪をした少女で。
「……ご立派になられましたね」
状況も無視した呼びかけに反応したのか、それとも妙な精霊力に反応したのか、攻撃の手を止めるロロベリアを前にした少女――ミライは涙を零しながらも微笑みを浮かべて。
「やっとお会いできました……ローエルさま」
ロロが四大の精霊術を扱う理由がエニシの考察通りなのかはさておいて。
一方的にラタニを蹂躙するロロにそれぞれが絶望する中に場違いな乱入者……シリアス展開だったのになにかすみません。
それはさておき幕間で描いた御者の見た輝きの正体は予想されていた方もいるかもですがミライでした。
つまり訪れるアレとはミライがようやくロロと出会う瞬間でした。
同時にミライの探していた御子がロロとも判明しましたが、彼女が別の名前を呼んだ理由は後ほどとして。
ロロの秘密を知るであろうミライがついに合流。
彼女の乱入によって物語がどう動くのかをまずはお楽しみに!
ちなみに、ミライがホロアの元からロロたちに合流するまでの経緯はオマケで描く予定です。
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