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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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幕間 胸騒ぎの光景

遅い時間の更新に鳴って申し訳ありません!

アクセスありがとうございます!



 ラタニとアヤトたちが激戦を繰り広げている場所から東へ数キルメ地点ではアレクを中心にカイル、ティエッタ、フロイス、シャルツ、リース、ユース、ジュード、ルイ、ミラーで人払いを続けていた。

 邪魔にならないよう合流ポイントとはかなり距離を取っているのでアヤトたちの様子は視認できないが、合間に微かでも響く音からまだ作戦は続いているのだろう。まあ終了すればマヤ伝手で連絡が来るはずなので、今は成功すると信じて役割を担うのみ。

 ちなみにアレクの送迎を手伝ったサクラは途中で王都に戻っている。事情が事情でもやはり王族を王都外に連れ出すのは問題と、アレクが強く勧めて渋々サクラも従った。

 そして広い範囲を少人数で行うなら王族だろうと陣頭指揮以外も担うのは当然。


「様子はどうだい」

「問題ありません」


 故に自らの足でそれぞれに任せた範囲を周り状況確認をしながら周辺に対する注意も怠らない。


「……本当に宜しかったのですか? いくら緊急時とはいえ陛下の命と偽るなど」


 ただカイルは気になることがあり、報告時に疑問をぶつける。

 そう、アレクの役割は森林地帯を出たラタニを追跡する術士団の抑制。

 予想通りアヤトとラタニが通過してしばらく、鉢合わせした術士団はアレクが居ることに驚いたものだ。

 しかしそれ以上に驚いたのはアレクの説得方法。

 なんせアレクは王都にレグリスから連絡が入り、名代として来たと術士団に説明。その変更内容もラタニの件は解決したので至急王都に戻るよう指示。自分は護衛として同行させたカイルらと共に周辺の調査をしつつ戻るとも。

 もちろん術士団も困惑した。ラタニの件を知っているのはレグリスから連絡があったならおかしくないし、国王の名代として第一王子のアレクが派遣されたのも妥当ではある。

 ただラタニの件がどう解決したのか、そもそも急に森林地帯から飛び出したことを把握しているのか、まだ入隊していないカイル達のみを同行させたのか等々、疑問を抱かれるのは当然。


 それでも最終的に指示に従い撤退したのは、術士団たちもラタニの件が解決したからだろう。術士団にとってもラタニは憧れの存在、不可思議な形で暴走したとはいえ命を取る作戦に対する忌避はあったのだ。それは術士団たちの安堵の表情で読み取れた。

 また国王を含め、作戦を知る一部の者しか知らない情報をアレクが知っているのもあるが、なにより国王の名代という言葉が大きい。

 例え王族だろうと国王の言葉を偽り使用するなどあり得ないからだ。

 だからこそ術士団も解決したと安堵し、アレクの言葉を信じて撤退してくれたのだが、いくら緊急事態とは言え国王の言葉を偽り術士団を欺いたとなれば重罰は免れない。

 結果的にラタニを救い、アヤトが擁護しようとアレクの嘘は王都に戻れば知られてしまう。つまり穏便に済ませるならアレクの独断行動とするしかないわけで。

 どんな理由だろうと国王の言葉と偽り軍を動かしたのだ。そのような王族を民も軍も信用しなくなる。王位継承権の剥奪すら覚悟しなければならないだろう。


 レイドを王位につかせたいカイルとしては最大のライバルが居なくなるので望ましい結果ではあるが、それでも複雑な気持ちはある。


「この状況では最も有効な方法だったからね。構わないよ」

「ですが――」

「それに私は王位に相応しい器ではなかった。私自身が自覚し、決めたことだ」

「…………」


 にも関わらずハッキリと言い切るアレクにカイルは言葉が続かない。

 そしてアレクの言葉に偽りはない。

 王位よりもラタニと歩む道を選んだ自分に民を導く資格などない。

 例え後ほどラタニに拒否されようと、正直な気持ちのまま決めたのなら悔いもないと。


「だからカイルも気にする必要はない。分かったのなら警戒を続けてくれ」

「……畏まりました」


 むしろ吹っ切れた面持ちを前にカイルもこれ以上の追求をやめて、周辺警戒に戻ろうとしたが――


「アレク殿下!」

「なにかあったのか!」

「あ、あちらを……っ」


 近辺を回っていたフロイスの呼び声にアレクだけでなくカイルにも緊張が走るも、指を差す方向に視線を向けるなり表情が強張った。


 何故ならアヤトたちが居る辺りから天を突かんばかりの白い輝が伸びているのだ。


「アヤトくんたちがいる辺りだよね……」

「何なのですの……あれは」


 かなりの距離を空けているにも関わらず視認できる不可思議な輝き。

 明らかな異常事態に判断を求めようと次々と他の面々もやってくるが、アレクも何が起きているのか理解できず。


「……ラタニさん」


 妙な胸騒ぎが込み上げるままその名を呟いた。



 ◇



 一方、王都に戻っていたサクラといえば――


「まさかお主らと鉢合わせするとはのう」

「本当に。でも助かったわ」


 偶然にもランと出くわしていたりする。

 まあ別方向に出発したとは言え帰る場所は同じ、御者が見つけてくれたお陰でディーンを背負い徒歩で戻っていたランは大助かりだ。

 そのディーンは未だ意識不明、今もランの方を借りて眠ったままで。


「そちらの方に連絡は――」

「あったら教えてる。つまりそういうこと」

「じゃろうな」


 とにかく再会を喜ぶのもそこそこに二人が気にするのはやはりラタニ。

 時間的にも合流して随分と経っているはずだが未だ音沙汰はない。


「わ!」

「おっと……」


 それでも信じて待つしか無いと無言になる中、不意に馬車が停車。


「し、失礼しました……お怪我は」

「問題ないが、どうしたのじゃ」


 即座にドアが開き頭を下げる御者に手を振りつつサクラが状況確認を。


「それが……空を何かが通過したように見えたもので……」

「空をじゃと?」

「はい。美しい翠の輝きが……ですが一瞬そう見えただけなので見間違いかも知れません」


 故に驚き馬を操り損ねたと改めて謝罪するも、サクラは眉根を潜める。


「その輝きはどこに向かった」

「……あちらの方角に」


 申し訳なさそうに指を差すのは今まさに通ってきた方向、つまり()()()()()()()()()()()


「もしや誰かが飛翔術を使っているのではないか」

「……もしそうであっても、精霊力の色が輝くことはないかと」


 御者の言う通り飛翔術を扱っても精霊力の輝きは見えない。

 そもそも一瞬で通過する速度で扱える者などサクラの知る限りラタニくらいだ。


「……あたしからマヤちゃんに伝えておくね」

「じゃな」


 それでも万が一を考え、マヤ伝手に報告するべくランは神気のブローチを手に取った。



 

ロロの様子も気になるところですが、今回は他の視点を挟みました。

アレクさまも思い切った方法で撤退させましたが、彼からすればサクラの提案に乗った時点で覚悟はしてますからね。例えラタニさんに今さらと拒否されようと、自分の意思での決断ですし、救う為の手助けが出来たのならと後悔はないでしょう。

そんな中で見えた白い輝きにアレクさまたちも戸惑いますが、一方でサクラさまやランです。

御者が見た輝きはただの気のせいか、それとも二人が懸念する何かが起きているのか。

その答えはついに訪れるアレな次回で。

なにがアレなのかは是非読んで頂ければと……(汗)。

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