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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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成否の行方

アクセスありがとうございます!



 モーエンとジュシカの力添えでアヤトたちの元に駆けつけたスレイとカナリア。


「……あれが隊長か」

「…………」


 フロッツの危機を救った後、改めてラタニを視野に入れた二人は複雑な表情。

 実際に見るとその変わり果てた姿に言葉が見付からない。普段は豊かな表情も無、伝わる精霊力は禍々しく身震いするほど。


「助かったぜ二人とも!」


 変貌について聞いてはいたものの、まさにバケモノ染みた姿に衝撃を受ける中、避難してきたフロッツが感謝と共に二人の前へ降り立った。


「二人はどこまで情報共有してる」

「簡潔ですがアヤトさんの提案は一通り」


 からの情報交換を求めるフロッツにカナリアは即座に返答。

 思うところはあるが今は非常事態、何よりも優先するのは目的の達成。その為には私情など後回しだ。

 対するフロッツはカナリアの反応に満足の表情。実力は当然、場慣れしているだけあって思考の向け方も出来ている。

 加えてカナリアクラスの精霊術士が二人も援軍として参加、一人でも居れば現状を打開できると考えていたフロッツにとって渡りに船で。


「今はミューズちゃんが見つけた精霊石をアヤトくんが狙う段階だけど、神気に敏感なのか無意識に脅威を感じてるのか、ラタニ殿の注意をアヤトくんから引き剥がせないんだ」

「それで?」

「ただ精霊力の高まりにはそれなりに反応する。だから俺が足止めの精霊術を放つ時間が作れないって状況」

「つまり私たちの役目はあなたが精霊術を放つまでの時間を作る囮ですね」

「話が早くて助かる。生半可な精霊術じゃ今のラタニ殿には利かないから遠慮なく派手にやってくれ。出来れば一定の位置に縛り付ける感じで――『頼んだぜ!』」


 故に無駄口もなく最小限のやり取りで理解してくれて、フロッツも安心して囮役を任せて上空へ飛び立つ。


「……サポートを頼む」

「派手を希望されるのならあなたが適任ですね」


 また同じ小隊として手の内は知るところ、頼まれた内容から打ち合わせ無しで役割分担を決めたカナリアはポケットから精霊器を取り出す。

 それは捜索任務のため支給されていた声を拡張する精霊器で。


『囮役は私たちが受け持つのでエニシさんとダリアさんは一端下がってください! アヤトさんはフロッツさんが隊長を足止めしてくれるので準備を始めて下さい!』


「へいよ」


「畏まりました!」

「任せます!」


 カナリアの呼びかけにアヤトはラタニと距離を保つよう立ち回り、その間にエニシとダリアは離脱。

 入れ替わるようスレイとカナリアがラタニの元へ。


「この辺りでいいか……『顕現するは炎の結界・我の意思に従う鏃となりて――』」


『ウ……アアアア――ッ』


 二〇メル付近まで近づいたところでスレイが詩を紡ぎ始めればラタニが反応、迎撃の黒弾を放ってきた。


『氷弾よ!』


 しかし精霊力の高まりに反応するのは了承済み、スレイを守るよう冷静にカナリアが対応していく。

 黒弾の数や速度から下手に迎撃するよりは逸らす方が確実と判断。精霊力の消費を抑えて発動速度や命中率を優先した的確な援護はラタニ小隊の十八番、更に唐突に御放たれる精霊術にも対応できるわけで。


『アアアア――ッ』


「く……っ『氷壁よ!』」


 だがいくら十八番と言えど、これだけ不規則かつ激しい攻撃に晒されれば捌ききるのも難しくカナリアは苦悶の表情を浮かべる。


『爆炎に包まれ灰となれ――爆炎舞踏(エクルドフレム)


 それでも必死に耐え続ける間にスレイは詩を紡ぎ終え、顕現した無数の火球を放つ。

 放たれた火球はラタニの周辺を囲うよう浮遊するも次の瞬間――



 ボボボボボボボ――――ッ



 火球から拳大の鏃が一斉発射。

 しかもラタニに被弾させるだけでなく、鏃同士をぶつけることで煙幕を張っていく。

 もちろん炎鏃を被弾させたところでラタニには通じない。だがフロッツの要望通り注意を引きつけつつ、一定の位置に縛り付けるには十分な効果で。


『ヴゥゥゥ――アアアァァァァ――ッ』


「私を忘れるとはつれないですよ隊長――『氷剣舞え!』」


 更に距離を縮めたカナリアが氷の剣を顕現、ラタニの下方から応戦。

 ただしカナリアの狙いはあくまで囮、精霊力を高めることでラタニの注意を自分にも無向けさせるのが目的で。


 二人が稼いだ時間は二〇秒も満たない。

 しかしフロッツにとっては充分な時間。


『押し留めよ・束縛せよ・四肢に無の枷を――』


 近場にある二人の精霊力を感知しているのかラタニからの反撃はなく、遙か上空へ飛び立っていたフロッツは落下しつつ詩を紡いでいた。


 このまま上空から風の精霊術を放ち、ラタニを地面に落とすのは難しくないが風圧からアヤトや浄化の役割を担うロロベリアは近づけない。

 しかしミューズの役割に協力し、傍を通り過ぎた時に感じた風の流れからラタニが浮遊しているのは飛翔術で間違いない。

 ならその風を自身の精霊力で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 更に操った風で拘束すればアヤトも役割を果たしやすくなる。


 相手の精霊力を利用し、尚且つ風で拘束する精霊術となれば詩を紡ぐ必要があり。

 加えて完全無防備になるので強力な囮が必要だった。


 しかしスレイとカナリアのお陰でどちらの問題もクリアしたことで。


「スレイさん!」

「……ん」


 囮を果たせたとカナリアとスレイは精霊術を解除、邪魔にならないよう即座に離脱。


『――ッ』


 途端に攻撃が止みラタニも上空の精霊力を感知したのか黒焔が膨張するも、先にフロッツは間合いの中へ。


『自由な風を我が物に――()()()()!』


『グ……ォォォォ――――ッ』


 同時に詩を紡ぎ終えるとラタニの両手足首に竜巻が顕現、更に糸が切れたように地面に落ちていく。

 狙い通りの成果を上げるも、フロッツの見立てでは拘束できても二秒が良いところ。


『今だアヤトくん――!』


「これで――っ」


 故に言霊で飛翔すると共に合図を送るも、既に白夜を抜いていたアヤトはラタニが地上に降り立つタイミングに合わせて疾走。


「終いだ」


 目前に姿を現した時にはラタニの左胸に白夜を突き立てていた。

 ミューズの示した位置に寸分のズレもなく、周辺の臓器や骨を傷つけないよう的確に。

 後は憶測通りラタニの意識が一時的に戻るか否かだが、精霊力を感じられないアヤトでも分かる変化が起きていく。

 全身を覆っていた黒焔が薄らぐと同時に、漆黒の瞳や髪色が徐々に元の紫眼や赤髪へ。


「ぁ………………やと………」


「なんだ」


 なにより名を呼ぶラタニの掠れ声が第二段階の成功を教えてくれた。



 ・

 ・

 ・



 一方ロロベリアは上空からフロッツが詩を紡ぎ、アヤトが好機を窺っている時点で行動を始めていた。

 一時的にでも白夜で黒い精霊力が無力化されてラタニの意識が戻るとしても、どれほどの時間か分からないだけに成功すれば即座に浄化を始めなければならない。

 万が一を考えエニシを護衛に、出来る限りラタニとの距離を詰め機会を窺っていた。


「ロロベリアさま!」

「はい!」


 そしてアヤトが白夜を突き立てるなり二人は両足に精霊力を集約させて疾走。

 ラタニの全身を覆っていた黒焔が霧散した上に動きが止まったのなら憶測通りの展開、後は残っている黒い精霊力を浄化するのみ――


「…………え」


 だが伸ばした手が届く寸前、霧散したはずの黒焔が再び膨れあがり拘束していた竜巻が消失。

 しかも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ごほ……っ」


 吐血と共に崩れ落ちるアヤトの姿を、ロロベリアは茫然と眺めることしかできなかった。




フロッツ、スレイ、カナリアの連携によってラタニを地面に拘束させることに成功。

そしてアヤトも役割を果たし、ラタニは意識を取り戻しました。

ですが成功に歓喜する間もなく再び黒焔を纏ったラタニによってアヤトが重傷を負う悲惨な結果に。

マヤのヒントを元にした作戦が間違っていたのか、それとも別の理由があるのか。

なにより鍵となるアヤトが倒れピンチに陥ったロロたちはどうするのか。

それはもちろん次回で。



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