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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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幕間 託された想い

アクセスありがとうございます!



 ラナクス周辺の捜索を行っていたカナリア、モーエン、スレイ、ジュシカにマヤ伝手でロロベリアから連絡が入った。

 最初は意識不明のアヤトに何かあったのかと焦るもマヤとの交渉でラタニの居場所、そして救う方法が分かったと伝えられた。

 ただし救う方法はヒントを元にみんなで導き出した推測なので絶対と言い切れないと補足されたが、絶望的な状況から希望が見出せたのは確か。カナリアたちが歓喜したのは言うまでもなく。

 また救う為には戦力が必要なので協力して欲しいらしく、レグリスには後ほどアヤトが弁明してくれるも職務放棄になるのでそれなりの処罰はあるだろう。しかし四人にとってはラタニの無事が最優先だ。

 故に二つ返事で引き受け、詳しい話を聞くために王都へ戻っていたが――


「――お前さんたちはどう見る!」

「アヤトさんが隊長を誘き出す時間を考慮しても難しいかと……っ」

「ぼくが足を引っ張ってるからだよねごめんね。ほんとうになんでぼくが副隊長なんだろうお荷物な副隊長なんか必要ないよ――」

「ぶつぶつ言う前にもっと速く走るのだ兄ちゃん!」


 二度目の連絡を受けるなり四人は焦りを滲ませていた。

 当初の予定では夕刻までに王都へ到着、改めて作戦を練って明朝に作戦決行だった。しかしレグリスの動向によって事態は一変。

 運良くダリアとフロッツの協力を得たので何とかなる、と後に連絡はあった。二人の実力も信頼できるが作戦内容から戦力は多いに越したことはないはず。

僅かな可能性があるのなら急ぐべきと全力で向かっていた。


 ただカナリアは難しいと判断しているが、自分たちの居る場所からラタニを誘導するポイントまでの距離を考慮すればどうしても間に合わない。例え間に合ったとしても長距離を全力疾走した後、休まず戦闘参加なら体力的に役立てないだろう。

 つまり精霊力や体力を極力温存しつつ、今以上に速度を上げなければ向かう意味がない。それを理解してもラタニが窮地に陥っている中、何もせずにはいられないのだ。


「俺も同感だが……やりようによっては何とかなるかも知れないぞ」

「なにか良いアイデアがあるのですか!?」


 だがモーエンにはこの不可能な状況を覆す方法があるらしくカナリアは即座に問い詰める。


「ああ、よく聞けよ――」


 時間が惜しいので走りながら耳を傾ける三人にモーエンはその方法を説明。


「それではモーエンさんとジュシカが……」

「カナリアはまだしもぼくが向かって役に立つかな。それよりもぼくを残した方法を考えた方が良いよ」


 モーエンの提案した方法はまさに精霊力と体力を最小限に抑え、今以上に速く到着できるかもしれない。ただモーエンとジュシカを置き去りにした方法で。

 二人もラタニを救う為にアヤト達の手助けをしたいハズ。もっと他に方法はないかとカナリアとスレイは難色を示す。


「むしろ二人に大役を押しつけて申し訳ないほどだよ」


 しかし、ラタニを救いたいからこそ拘っている暇はないとモーエンは首を振る。

 ただでさえ急遽変更した作戦、救う方法も絶対ではないのなら不測の事態に備えて出来る限りの準備をする。二人だけでも間に合う可能性があるのなら迷っている暇はない。

 なにより結果的に自分とジュシカを置き去りにする方法になってしまったが、モーエンからすれば戦力として参加させるならこの二人が相応しく思う。


「今優先するのは確実に間に合わせることだ。スレイ、カナリア……俺たちの分まで役に立ってこい」

「あたしからも頼むのだ! 兄ちゃん、カナリア先輩、隊長を助けて欲しいのだ!」


 ジュシカも同じ気持ちなのか、モーエンの激励に続き笑顔でエールを送る。

 ラタニが副隊長に選んだスレイ。

 そして小隊員を選考する際、真っ先に思いついたカナリア。

 実力も小隊の中でラタニに次ぐ二強となれば安心して想いを託し送り出せるわけで。


「すぅ……」


 パン――ッ


 二人の思いを聞き、スレイは深呼吸と共に両手で頬を叩く。


「カナリア、これ以上の迷いは二人に対する冒涜だ」

「……ですね」


 同時に普段の卑屈なスレイは成りを潜め、その変化にカナリアも覚悟を固める。


「始めるぞ――」


 二人の表情を確認したモーエンは提案した方法を決行、立ち止まり詩を紡ぐ。


『――黒砲台架(ガォルオーナ)!』


 大地に手を突き顕現したのは砲身十メル越え、砲口も直径三メル以上の巨大な砲台。変換術で黒金石にしたことで強度も充分、ただし形だけの物でしかない。


『氷壁よ!』


 だがモーエンの役目は砲台の顕現、続いて砲身内の隙間を完全に塞ぐようカナリアは分厚い氷を顕現。その氷を台座にスレイとジュシカも砲口に飛び込む。


『爆ぜろ!』


 更に耳を塞ぐと同時にスレイが言霊を紡ぐ。

 爆破によって押し出された氷台座の勢いのまま三人を射出。


『舞うのだ!』


 最後に二人の手を握っていたジュシカが風を操り射出速度を維持、速度が落ちれば飛翔術に切り替え二人を運んでいく。


 要はモーエンが簡易砲台を作り、カナリアが爆破によって押し出される台座を作り、火薬代わりの精霊術をスレイが紡ぎ三人を射出、勢い維持しつつ精霊力が尽きるまでジュシカが飛翔術で運ぶ方法。

 特にカナリアやスレイの役目は僅かでも制御をミスれば惨事を招く危険な方法。しかしラタニに鍛えられただけあって即興の作戦だろうと不可能では無く、また普通に飛翔術を使うよりも精霊力を抑えたまま一気に距離を稼ぎ、その分だけ二人も体力を温存できる。


「兄ちゃん、カナリア先輩……後は頼んだ……のだ」


「ジュシカ、ありがとう」

「あなたたちの分まで役に立ってきます!」


 精霊力の限界まで飛翔したジュシカに礼を伝え、スレイとカナリアは疾走。


「そろそろか……カナリア」

「もう連絡済みです」


 合流ポイント付近でマヤ伝手に人払いを担当しているグリードに通してもらうよう連絡を取り、包囲網を一気に駆け抜けた。


「……あれか」

「どうやら間に合ったようですね」


 激しい爆音が聞こえると同時に上空のラタニを目視。

 状況的にまだ作戦は続いているらしく。

 時短だけでなく走る距離も短くなったことで体力も最小限に抑えられた。

 これなら充分戦力になると気合いを入れるも――


「スレイさん!」


『堕とせ!』


 迫る黒弾を避けようともしないフロッツを確認するなりスレイは走りながら言霊を紡ぎ火球を顕現、ギリギリの所で黒弾を打ち落とす。


「ふう……間に合った」

「フロッツさん、すぐに退避してください!」


 モーエンとジュシカの想いを背負い、二人はアヤトたちとの合流を果たした。




スレイとカナリアが間に合った方法でした。

時間的に間に合わない状況下でも諦めず、最善の方法を導くだけでなく、即実行できる連携や技量とさすがラタニさんに鍛えられた四人ですね。

とにかくモーエンとジュシカに託された想いを胸にスレイとカナリアも到着、これで役者も揃いました。

二人の参戦で事態はどう動くのか。

そしてラタニを救う為の作戦第二段階は成功するのか、次回をお楽しみに!



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読んでいただき、ありがとうございました!


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