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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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先輩たちの答え

アクセスありがとうございます!



 リースやイルビナと共にニコレスカ邸を後にしたエレノアが向かったのは軍施設だった。

 目的はラタニを救う為の協力者に会うためで、事情を知るメンバーの中ではエレノアが適任だった。

 まあそれぞれが行動を始めた後、リースやイルビナに加えてミューズから預かった神気のブローチでマヤへ直接質問することでエレノアも事情を知ることになったりする。


「……だからカルヴァシアはあのような態度をしていたのか」


 また事情を知ったからこそエレノアは新入生レクリエーションでの代表を打診した際、アヤトの持ち出した案を思い出す。

 あの投げ遣りな態度はいつかラタニを殺す日が来ることを、その時受けるであろう周囲の反応を考えていたからかもしれない。


「師匠がどうかしましたか」

「……なんでもない」


 ただこの話を今さら広める必要もないとリースの問いにエレノアは首を振る。

 もしそうならばラタニを救えた時、アヤトの本心を聞くことも出来るのだ。

 ならいまは任された役割に集中するべきと、軍施設に到着したエレノアは責任者と掛け合い、協力者を呼び出してもらった。

 それはカイル、ティエッタ、フロイス、グリード、ミラーといったアヤトとゆかりのある卒業生たち。父のレグリスがラタニと深い関係にあるカナリアたちにラタニが見付かったことを伏せ、わざわざ遠ざけたのならこの五人も同じ対応をする。加えて五人ともまだ軍に所属して間もない、そもそも何も知らされていない可能性もある。

 そして軍施設でもこの五人を面会目的で呼び出すこともエレノアなら可能でまさに適材適所の役割だった。


「……急にどうしたんだ」


 読み通り五人とも通常通りの訓練に勤しんでいたようで、急な訪問に訝しみの表情を向けるカイルを含めた五人にエレノアは挨拶も無しに本題へ。


「先生を救うために先輩方の力が必要なんです」

「先生を救う? どういうことだ?」

「実は――」


 率直な切り出しに眉根を潜めるカイルらに向けてエレノアは現状況を関係に説明。

 ロロベリアの精霊力やミューズの眼については敢えて省き、ラタニがノア=スフィネ討伐後、溢れ出た黒い霧によって暴走していること。

 居場所を特定したレグリスが精霊の咆哮で殲滅する目的で現在ダラードに向かっていること。

 もちろんレグリスにもラタニの出生を踏まえた事情があっての判断。しかしいまは時間が限られているのでエレノアと同じく、詳しい説明は後ほどとして。

 アヤトの過去やマヤの正体を明かした上で、他の面々が情報収集をしたことで現状を把握できたこと。


「ユースはニコレスカ商会、つまりクローネさんに、レガートはジュードやルイに、シエンはシャルツさんやズークさんに協力を求めています」

『…………』

「そして私は五人の協力を得るために来ました」


 マヤの正体も含めて信じがたい内容ばかり、端的な説明が故に理解しがたい部分も多くあるだけに五人とも言葉を失っている。

 なによりこの行動はレグリスの意向に背いたもの。いくら全てを終えた後、事情を説明しても軍所属の五人が勝手に行動すればそれなりの懲罰は免れないし、エレノアも同じ。

 それでもまだ状況を呑み込めない立場でも、ラタニを救えるのならと自分が迷いなく判断したように、五人も協力してくれると信じて。

 そんな五人だからこそアヤトも自身の重大な秘密をうち明けても構わないと、協力者として選んだわけで。

 

「だからお願いします。先輩方も力を貸してください」

「お願いします」

「です」

 

 頭を下げるエレノアにリースやイルビナも続く中、真っ先に口を開いたのはカイルだった。


「頭を下げる必要はない」

「可愛い後輩たちが助けを求めるのなら、手を差し伸べることも先輩の役目であり真の強者のあるべき姿。でしょう? フロイス」

「お嬢さまの仰る通りです」

「まだ疑問は多くあるが、カルヴァシアが助けを求めていると分かれば充分だ」

「だよね。それにラタニさんにもいっぱいお世話になってるもん。わたしたちだってお返ししたいんだよ」


 更にティエッタ、フロイス、グリード、ミラーも笑顔で同意。


「故に俺たちが何をするべきか、それを教えてくれ。時間がないんだろう?」

「……ありがとうございます」

「「ありがとうです」」

「礼もいい」


 やはり信頼できる先輩だと感謝を述べるも、代表してカイルが照れくさそうに首を振る。


「カルヴァシアの言葉を借りるなら、これは俺たちがやりたくてやっていることだ」

「……遠慮なくお言葉に甘えさせてもらいます。カルヴァシアは先生を精霊の咆哮の射程範囲外まで誘い出す為、既に森林地帯に向かっています。そして先生をこのポイントまで誘い出し、先生の暴走である元凶を取り除くつもりです」


 ならばとエレノアは地図を広げて役割の説明に入る。

 先ほどミューズから借りた神気のブローチでユースからクローネの協力を得たとの情報が入った。シエンの方は連絡手段がないので未確定だが、少なくとも想像以上の協力によってかなりの広範囲をカバーできる。

 ただ詳しい事情を知らない商会員に任せるには危険な区域がある。

 それはアヤトが合流ポイントにラタニを誘い出すまでの動線。もちろん距離を取って人払いをするが、暴走しているラタニがどんな行動を起こすか分からない。

 またラタニが森林地帯を抜け出せば包囲していた術士団らが追ってくる。要は危険の高い動線と、術士団と鉢合わせするエリアは事情を知るメンバーで固めるべきで。


「森林地帯から合流ポイントまでは新旧の序列保持者とミラーさんの精霊力持ちで固めます。なのでグリードさんとイルビナはクローネさんとの連携をお願いします」

「……確かに荒事が起きる可能性があるなら、精霊力持ちが担うべきか」

「すみません……」

「謝る必要はない。こればかりは差別でもなんでもない、適材適所だ」

「ご理解頂けて助かります。それとグリードさんはユースから神気のアクセサリーを受け取り、カルヴァシアに現状報告もお願いします」

「……商会員を動かすと言ってもクローネさまは現場に居ない。仕方ないか」

「そうではなく……神気のアクセサリーの譲渡を許されるのはマヤの誕生日会に出席した者に限られているからです」


 故に商会員と一緒に人払いに回るイルビナやレガートには資格がなく、ズークは可能でもまだ協力してくれる以前にシエンが無事会えているか分からないので現状グリードにしか頼めなかったりする。


「もしズークさんやシエンと合流できなくても、そのブローチでマヤから色々と聞けるので」

「……マヤ嬢が神さまってのもまだ信じられないが、少なくともカルヴァシアみたいに妙な拘りがあるのは理解した」


 その条件に呆れながらもグリードは了承、エレノアの口添えで施設を出たらまずユースと合流する為にニコレスカ商会本部に向かうことに。


「そして私がミューズから預かったこのブローチはカイルさまに渡しておきます。使用方法は後ほど、同じく解消しきれない疑問についてはマヤから直接聞いてください」

「それは構わないが……お前はどうするんだ」

「あと術士団と鉢合わせしたらどうするの? わたしたちでも引き止めるのは難しいと思うけど……」


 続けてブローチをテーブルに置くエレノアにカイルやミラーから最もな質問が。

 確かにカイルが侯爵家の子息でも軍所属としては新人。鉢合わせした術士団を抑え込むような力も権力もない。

 またブローチを渡すならエレノアは動向しないとの意思表示にもなる。

 ただその辺りは王城に向かったサクラ次第で。


「術士団については私が対処する予定ですが、まだ確定していないのでとりあえずカイルさまに託します」

「まだ確定していない?」

「どういうことかな?」

「……カルヴァシアがその役割を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 なぜアレクかレイドに拘るのか、アヤトの狙いを聞く暇がなかっただけに、エレノアも上手く答えることが出来なかった。




エレノアサイドの動向でした。

この要請もある意味アヤトが素直になった証拠ですかね。役割に適任と言えど、卒業前に先輩方が意地を示し、少しは周囲に頼れと助言してくれたから遠慮なく頼ったのかと。

ただそんな先輩方の一人、レイドや直接的な関わりのないアレクに重要な役割を任せたいと主張しているのは何故か。

まあアレクに拘っている理由はある程度予想できるかもしれませんが、その辺りは次回のサクラサイドをお楽しみに。



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読んでいただき、ありがとうございました!


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