初見の攻防
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「ミューズ、治療を頼む」
「はい!」
誘い出したラタニの対応をエニシとダリアに任せたアヤトは即座にミュースの治療を受ける。
治療術で体力は回復しないが無理を続けて足腰が悲鳴を上げている。またロロベリアから水筒を受け取り少しでも心身の回復に努めていた。
「フロッツさん、ちーとばかしきばってくれよ」
「どうせ本気出すなら格好いいところを見せないとな」
更にエニシとダリアの援護にフロッツが回る手筈。
二人ならラタニの猛攻に対処できると判断されても、さすがに初見で全てを任せるのは危険。万が一の可能性からロロベリアやミューズの護衛にも回るが、難しい立ち回りでもフロッツなら可能なわけで。
「まったく……やはり実力を隠していたか」
まあラタニを吹き飛ばした初手の精霊術を見たダリアは見直すどころかあきれ顔。元より実力を隠していると察していたが、精霊力の保有量といい想像以上なので当然の反応。
「ですが心強い限り。お陰で安心して挑めますからな――っ」
「それはそうですけどっ」
しかしエニシの言い分も一理あると切り替え、迫り来るラタニ目がけて二人は桜花と煌刃に精霊力を纏わせ放つ。
前回王国に訪れた際、なし崩しで行われた三大大国の近接戦最強同士の模擬戦で力不足を痛感したダリアも秘伝を習得。
聖剣の使用で武器に精霊力が流れる感覚を掴んでいたことや、フロッツにデートの見返りとして精霊力の扱いを教わったこともあり習得できたらしい。
お陰でエニシだけでなくダリアも攻撃手段が出来たことで、ラタニの注意を惹きつける役割も担えたのだが――
『アアアア――ッ』
「……効果なしか」
「あれだけの精霊力を纏っていれば仕方ないかと」
精霊力の斬撃に怯みもしないラタニにダリアは冷や汗が。
そもそも斬撃が届く直前、何かに阻まれるよう霧散したようで秘伝による攻撃は無意味。生半可の精霊術も今のラタニには通じないだろう。
「ですが狙い通りラタニさまの関心は引けたようですな」
「いいのか悪いのか悩むところです――がっ」
それでもラタニの注意を惹きつけられたようで二人に向けて黒弾が雨のように降りそそぐ。
「このような攻撃を耐えず付けろとは……アヤト殿も酷な注文をしてくれたものだ!」
「それだけ期待されていると捉えましょう――ダリアさま、精霊術にも警戒を!」
「むろんです!」
アヤトの見立て通り二人は縦横無尽に駆け回つつ回避。合間に織り込まれる精霊術も精霊力の感知で予想できるが回避に専念してもギリギリで。
「ラタニ殿、俺を忘れてもらっちゃ『困るぜ』!」
見かねたフロッツがラタニより更に上空から風刃を放ち援護を。
飛翔術を扱いながら精霊術を放てる二重発動が可能なフロッツならではの援護射撃だ。
『ウゥ…………アアアア――ッ』
「おわ!」
「お前は私たちの援護だろう! バカなのか!」
「もっと攻撃を分散させてるよう立ち回って欲しいものですな!」
「ごめんて!」
……なのだが、そもそも生半可な精霊術は通用せず、むしろ更に激しくなる猛攻にダリアだけでなくエニシまで批判を浴びせる結果に。
「……やっぱスゲーな」
そんな状況を視力強化で眺めつつツクヨは称賛を。
フロッツも初手こそミスをしたがラタニの周辺を飛び回りかく乱することで上手く攻撃を分散、エニシやダリアも連携を取りながら回避していた。
さすが大国を代表する強者というべきか。正直なところツクヨではあの猛攻に一分も耐えられない。
それでも精霊力や体力は有限、このままではジリ貧で。
対するラタニの精霊力は一向に衰える気配もない。加えて広範囲を更地に変え、アヤトに重傷を負わせた精霊力の拡大をされれば全滅は免れない。
「そろそろ行くか」
同じく懸念していたアヤトも休息を早めに切り上げ朧月に手を掛ける。
「もう行かれるのですか」
「あまりフロッツに無理もさせられないだろう」
「…………」
「それに交代で休めるのも今の内だ」
「そう……ですね」
アヤトの言い分に心配の引き止めようとしていたミューズも頷くのみ。
なんせフロッツのメインはミューズの護衛。
ラタニの体内にある精霊石の正確な場所や大きさを掴むためには出来る限り近づかなければならない。その方法としてフロッツがミューズを抱えて飛翔術で近づきつつ攻撃を精霊術で対処する。これもまた二重発動が可能なフロッツだからこそ可能な役割、ここで精霊力を消費しすぎるわけにもいかないのだ。
またエニシやダリアは精霊力の消費は少なくとも常に走り回っている分体力の消耗が激しい。二人には精霊石の確認後、アヤト抜きで注意を引きつけてもらわなければならないだけに出来る間は回復もするべきで。
「なにより他の連中も役目果たしてるんだ。俺だけいつまでも休んでられねぇよ」
「王女さまたちが頑張ってるみてーだしな」
「それ含めた連中だがな」
「……相変わらず細かい奴」
誘い出す役割も含めてアヤトが最も負担を強いられているだけに休んでも構わないが言うだけ無駄とツクヨは苦笑。
それにこの場を用意した仲間は当然、未だ追ってくる気配すらない術士団らはエレノアとサクラが中心になって上手く対処しているからこそ。
他のメンバーが尽力している状況で自分だけ楽をするアヤトではない。
「アヤト、しっかりね」
「ご武運を」
「へいよ」
故に擬神化するアヤトをロロベリアやミューズも最後は笑顔で見送った。
まずは順調な滑り出しとなりましたが本番はここから。
ラタニを救う為にはまずミューズが任された役割を完遂すること、その手助けをフロッツが担うわけですがその前に。
次回は少し時間が遡り、術士団の足止め役を任されたエレノアとサクラが何をしていたのか。そちらについて触れることで、メインストーリーのラタニVSアヤト達をガッツリ描いていく予定です。
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