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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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求める協力者

アクセスありがとうございます!



 ダリヤとフロッツがニコレスカ邸に訪問して間もなく、グリードは一度宿泊施設に戻っていた。

 外出中にラタニの居場所に関する情報を耳にし、そのままニコレスカ邸に向かったので同じ宿泊施設を利用しているジュードとルイはまだ独自のルートで捜索中。

 故にニコレスカ邸で話し合った内容やアヤトの考えを伝えて協力してもらう為だ。


「やはり、運はこちらに向いているようですね」


 唯一の懸念は二人の外出だったが使用人に確認したところ丁度二人は帰ってきたところらしい。

 報告時にエレノアと出会えたことと言い、こうした些細な出来事は悪くなりつつある流れが変わっていく兆候にレガートは思えた。

 まあアヤト側には言葉通り神が付いている。気分屋で契約者と同じく捻くれているようだが、神のお陰で好転している部分はあるだけにある種の恩恵と言えるだろう。

 しかし最後に運命を左右するのは人の力。その為にも一丸となって行動する必要があるわけで。


「お二人とも成果はありましたか」

「残念ながら」

「使える人員が限られているだけに難しいな」


 故に情報交換という体で部屋に集まるも、二人から良い返答はないが仕方のないこと。

 なんせ今回は秘匿にしなければならない部分が多すぎる。加えて貴族といえど所詮は子息、ただでさえラナクスではなく王都に居るのだ、使用人も数人しか同行していない状況ではやれることも限られてしまう。

 それでもレガートがある程度の居場所を特定できたのは単に本人と家の特性によるもの。ジュードやルイは本人同様実家も武芸特化、対するレガートの実家は代々政事に関わる家柄で本人も仕官クラスに在籍している。

 要は普段から情報収集を意識した人脈を形成しているか否か。二人に比べて情報源を多く持ち合わせているお陰でレガートは成果を上げられたに過ぎない。


「そう難しい顔をしなくても宜しいですよ。アーメリ特別講師の居場所は私の方で見つけられました。もちろんアヤトさんたちにも報告済みです」

「……そうなのか」

「さすがレガートくんだね」


 それはさておき、まずは自身の成果を報告することで二人を安心させるも本題はここから。


「ですが少々厄介な出来事が起きています」

「厄介な出来事だと?」

「……それはなにかな」

「そちらについては今からお話しします。お二人はまだやって欲しいことがありますからね」


 故にレガートは簡潔に現状況を説明。二人の表情にみるみる焦りが滲んでいくも、続いて地図を広げてアヤトの考えを伝えていく。


「私たちの役割は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、つまり人払いです。なのでお二人も手伝ってください」

「もちろん構わないけど……広すぎないかな」

「さすがに人手が少なすぎる。カルヴァシアの事情も分かるが、アーメリ殿を救いたいのならもう少し協力者を増やすべきだ」


 だが役割を知るなり二人は困惑。特にジュードの意見は最も、本当にラタニを救いたいのなら仲間内に拘っている場合ではない。

 なりふり構っていられないのはアヤトも承知の上。それでも本当の意味でラタニを救おうと拘っているからこその理由がある。


「確かにアヤトさんの人脈、エレノアさんやレイドさまにもっと協力を仰げば簡単に人手は集まるでしょう。ですがアーメリ特別講師がそれを望んでいません」


 レガートが反論するように協力者を増やせば増やすだけ秘密が明るみになるリスクも増える。いくら人払いという役割だろうと、理由を説明するのも難しいのだ。

 そしてラタニはアヤトの平穏を望んでいる。もし今回の一件にアヤトが関わっていると知られれば、救われたラタニは自分のせいでと後悔を残すだろう。

 故にリスクを最小限に抑える為に協力者は慎重に選ぶ必要がある。


「私たちはロロベリアさんの決断で偶然知ることになりました。ですがアヤトさんも私たちは信頼できると判断したからこそ、こうして協力を仰いでくれたんですよ」


 例え切っ掛けは本人の意思を無視したものでも、アヤトは自分たちなら問題ないと判断してくれた。頭を下げてまで協力を求めてくれたのだ。

 去年から交流のある面々だけでなく、まだ関わりの浅い自分たちにも信頼を向けてくれたことがレガートは嬉しかった。

 だからこそ出来る範囲でも全力で協力するつもりで。


「それに人手についても問題ありません。アヤトさんの信頼を得て、私たち以上に頼れる方が居ますからね」


 なにより適材適所、この難しい役割を自分たちよりも上手く担える存在がいるなら無理に増やす必要もない。


「ですが一人でも多く必要なのも事実。なので私たちも急ぎましょう」

「良いだろう」

「時間も限られているからね」


 二人もその存在を思いついたのか、これ以上は時間が惜しいと立ち上がった。



 ◇



 一方、ユースもまた人払いの協力を求めに向かっていた。

 相手はレガートが口にしていた信頼できる存在であり、交渉には二人が最も適任なのだ。

 なんせ目的地はニコレスカ商会の本部、つまりクローネで――


「それで、わたしになにをして欲しいのかしら」

「……ここでなにしに来たって言わないのがお袋殿か」


 応接室に入って来るなり挨拶無しで用件を求めるクローネの察しの良さにユースは苦笑い。

 

「こんな状況で急にあなたがわたしに会いにきたもの。リースやロロも居ないなら、ただ顔を見に来た、なんて理由でもないでしょう」


 やはりクローネと言うべきか見事な状況判断。

 恐らくアヤトやマヤのことも薄々なにか感づいているはず。それでも今まで何も聞こうとしなかったのは本人の意思を尊重してくれたのだろう。

 こうした姿勢や配慮、何より子に対する愛情の深さがアヤトの信頼を勝ち取ったとユースは誇らしさを感じつつテーブルに地図を広げた。


「詳しい話は上手くいった後、アヤトが直接話すらしいんで今はなにも聞かず協力して欲しい」


 そう前置きするユースにクローネは頷くのみで地図に注目。

 ロロベリアも自身の精霊力について話す良い切っ掛けになったとると了承したように、全てが終われば本人の口から直接話すつもりだ。

 もちろんサーヴェルにも伝えるつもりだが今は居場所が分からないだけに、情報収集の為に本部待機しているクローネに助けを求めたで。

 限られた時間で広範囲の人払いをするにはとにかく人手が必要。王国屈指と呼ばれる商会の代表なら人手を集めるのは容易。

 

「要はこのエリア一帯に人が入ってこないようにすればいいのね」

「ラタニさんを救うために必要なんだ。お袋殿、頼む」


 なにより事情説明抜きでこんな無茶を聞いてくれる人物などクローネしか居ない。それでも誠意として深く頭を下げるユースに対し、クローネは呼び鈴を鳴らした。


「如何なさいましたか」

「今すぐ人を集めなさい。現在職務中の者だけでなく、休暇中の者にも声をかけるのよ。もちろん休暇手当は出すと伝えてね」

「……全ての商会員をですか?」


 現れた従者は急な注文に眉根を潜めるもクローネは穏やかな笑みを浮かべて紅茶を一口。


「どうしても応じられない者に無理強いする必要はないわ。ただニコレスカ商会の未来に関わる重要な案件なの、だから出来る限り集めなさい」

「畏まりました……今すぐ呼びかけます」


 しかし有無も言わせぬ圧に従者は頷くしか出来ず即座に退室する中、ユースは唖然となった。

 まさか商会員全てを集めるとは予想外。例え一時的でも商会の損失はかなりの額になるはず。


「なんて顔してるのよ。普段以上にバカ丸出しよ」

「ひでぇ! じゃなくて……良いのかよ」

「良いもなにも人手が必要なんでしょう。心配しなくてもこの程度で商会は簡単に揺らがないわよ」


 にも関わらずクローネは平然としたもので。


「それにラタニちゃんの為だもの。娘たちや息子だけでなく、お友だちの為となれば損失なんて二の次よ」

「…………」

「要は()()()()()()()()()()。だから気にしなくていいのよ」

「……ありがとう、お袋殿」


 やはりクローネに頼って正解だったとユースは心からの感謝を告げた。

 もちろん問題はまだ残っているが、少なくとも人払いは予定通りに勧められる。


「ところで他の子たちとはここで合流する予定なのかしら?」


 などと安堵するのもつかの間、クローネから尤もな疑問が。

 自分以外に人手を集めているリースやレガートはまだしも、別行動中のエレノアやサクラとも上手く連携を取らなければならない。更に準備が整ったことをアヤトにどう知らせるか。

 各々で別行動をしているだけにタイミング勝負だが既に対策済みと、得意げにユースが取り出したのは先端に白銀の玉を結わえた金色の髪紐で。


「その点についてはご安心を」


 つまりツクヨから借りた()()()()()()()()()()()()()()()()()




ラタニさんの拘り、つまりアヤトくんに少しでも平穏な日々を過ごして欲しい、という願いを叶えるのなら仲間内のみで対策する必要はありますね。

そんな中でもクローネさまなら問題ありません。本当に男前と言いますか、人情に厚い御方です。だからこそアヤトくんも遠慮なく頼りました。

そして他の子がなにをしているかは後程として、レガートやユースの言うラタニを救う為の場を用意について詳しく触れつつ次回はアヤトサイドの内容となっています。



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読んでいただき、ありがとうございました!


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