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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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光明に続く不穏

アクセスありがとうございます!



 確信はなくとも、みなが納得できる結論に至った。

 もちろん他の可能性や役割も無視できないが、まずはいま導き出した方法を成功させる確率を少しでも高める為の話し合いを。


「マヤ」


「――お呼びですか」


「こちらの方針は決まった。ラタニはどこに居る」


 だがその前にやるべきことがあるとマヤを呼び出したアヤトはラタニの居場所を問う。

 猶予は二日、しかし居場所次第ではすぐにでも出発しなければならないのだ。

 故に当然の確認と一同が注目する中、マヤは周囲を見回しクスクスと笑った。


「ラタニさまは王都から東南にある森林地帯に潜んでおられます」

「あそこなら馬車で半日もかからないぜ」


 ユースが安堵するようマヤが告げたのは海岸沿いにある小規模の森林地帯。


「森林地帯ってことなら、精霊力に引き寄せられたのか」

「さて、どうでしょうか」


 ツクヨの疑問は交わされてしまったが、自然の多い場所は自然界の精霊力も濃い。精霊石もそれだけ浄化作用が速まるだけに、もしかすると残されたラタニの僅かな意思が黒い精霊力に抗うために自然と向かった可能性もある。 


 とにかく思いの外近い場所なだけに、とりあえず時間的な問題はないわけで。


「アヤト、先ほどの役割を完遂するにどれほどの休息が必要じゃ」

「半日あれば充分だ」

「つい先ほどまで意識を失っておったにも関わらずか」

「さすがはバケモノ」


 更に鍵となるアヤトの体調も問題ないようで、サクラやユースが冷やかす程には心に余裕が持てた。


「じゃが夜中に向かうのも危険、出発は明朝としよう。万全を期すために馬車も用意しておく」

「むろん御者には何も伝えず、送り届けた後も即座に撤退させます」

「話が早くて助かる」


 また移動手段もサクラが用意してくれるので秘匿も可能。

 残る問題は同行者だ。

 鍵を握るアヤト、ロロベリア、ミューズは言うまでもなく決定。ただこの三人だけともいかない。

 なんせアヤト以外は戦力ではない。特にミューズは可能な限りラタニに近づかなければならない。

 更に少しでも成功の確率を上げるならラタニの相手をアヤト一人に任せるわけにもいかない。

 故にロロベリアやミューズの護衛とラタニの注意を惹きつけ、アヤトの負担を軽くする役割が必要で。


「お嬢さま、私に同行のご許可を」

「……むしろ妾から頼むつもりでおったわ」


 その役割として真っ先に名乗り出るエニシにサクラは先に言われたと苦笑い。

 防戦に徹すればラタニの攻撃をかいくぐれるのはアヤトもお墨付き。精霊術も斬れる技能も持ち合わせているので護衛も担えるのだ。

 なによりラタニを救う為に自身の力が役立つのなら、危険な役割だろうとここで名乗りを上げることこそアヤトの恩義に報えるというもの。

 エニシの心意気を酌んでサクラも当然のように受け入れる。


「必ずお役に立ってみせるので、どうかこの老骨をお使いください」

「言うまでもないが意気込みすぎるなよ」

「畏まりました」


 またアヤトも牽制するのみでエニシの心意気を受け入れた。

 元より誰も傷つけたくないとアヤトに約束を持ちかけただけに、エニシに万が一があればラタニの心は完全に救えたとは言えないのだ。


「わたしも行く」

「却下だ」


 だからこそ続けて名乗りを上げたリースに対して即座に否定するのも当然で。


「……姉貴、気持ちは分かるけど今回もお留守番だ。それがオレたちに出来る唯一の役割だって受け入れようぜ」

「むう……」

「悔しいけどね」

「……だな」

「むねん」


 ロロベリアを守りたい気持ちはユースも痛いほど分かるも、エニシクラスの実力と経験がなければ足手まといになるだけ。故にランやディーン、イルビナも名乗りを上げたい気持ちを抑え、不満げなリースを宥める。


「一応程度に聞くけどアタシを置いていく、って考えはないよな」

「一応程度でもそれなりに役立つらしいからな」


 対しツクヨの発言には挑発込みで了承。

 実力こそエニシに劣るがツクヨの視認性ならミューズが気づけない部分を補填できる。また精霊術を斬れるのなら護衛としての役割も可能、元より同行を頼むつもりで居た。


「後はカナリアたちが居れば充分か」

「戦力としても充分、話も早いし当然の人選だな」


 そしてカナリア、モーエン、スレイ、ジュシカの四人なら事情を知る上に戦力として申し分ない。


「つーわけだ白いの。カナリアと連絡を取ってくれ」

「……ああ」


 まあアヤトが神気のアクセサリーを持つ者とマヤを通じて連絡を取るには対価が必要。


「マヤちゃん、カナリアさまを呼び出してもらえる? さすがに拒否しないよね」

「もちろんです。では少々お待ちください」


 故に目の前にマヤが居るにも関わらずカナリアとの連絡はロロベリアが担当、今回は素直にカナリアを呼んでくれるようで待つことしばし。


「兄様になにかありましたか、とカナリアさまが問いかけておられますが」

「急に呼び出したら驚くよね……えっと、まずはアヤトが目を覚ましたことと、どこに居るか聞いて」


 タイミングがタイミングなだけに心配させたらしく、アヤトが無事なことと居場所を聞き出すことに。


「現在は軍の命令を受け、ラナクス付近を捜索する為に向かっているそうです」

「ラナクス? 真逆になるけど……」

「居場所がまだ見付かってないんだろ。それよりも他の小隊員も一緒かどうかを確認、居るなら王都に戻るよう伝えろ」

「そ、そっか……」


「……変な光景だよな」

「便利といえば便利なんだけど……」

「妾が担当すれば良かったのう」


 アヤトの指示に従うままロロベリアがマヤに伝えるという微妙な光景を見守ることになったが、マヤを通じた連絡手段が便利なことは確か。

 とにかく詳しい説明は後程としてラタニの居場所や救う方法が見付かったこと、その為に協力して欲しい旨を伝えればもちろん了承、小隊で捜索していたこともあり四人ですぐに王都へ引き返してくれることに。


「国王陛下にも伝えておくか。むろん詳しい説明は伏せておくべきじゃが……アヤト、そちらも任せるぞ」

「へいよ」


 そしてある程度でも事情を知る国王にも安心してもらうようアヤトが報告に向かうのも忘れない。

 もちろんマヤの協力を得たことは当然、ロロベリアの精霊力やミューズの特異性は伏せての報告になるがアヤトなら上手く言いくるめるだろう。


「カナリアさんたちが合流次第、役割分担や作戦を煮詰めないとな」

「万が一に備えて、他の可能性も話し合う必要はあるぞ」


 まだ楽観視はできないとサクラがクギを刺すも、前途多難な状況から光明が見出せた。


 後は導き出した結論が正しいかどうか。


 そして成功させられるかどうかの勝負になるハズだった。


「俺は国王のところに行ってくる」

「少し休んでからでもよかろうに」

「王城に忍び込むくらいは問題ねぇよ」

「……相変わらず感覚がおかしい奴じゃ」


 コンコン


「……あん?」


 王城に忍び込む云々はさておき、早速行動に移すアヤトに呆れこそすれ誰も止めず見送ろうとしたがドアを開けようとした瞬間ノックが響く。

 訝しみつつアヤトが対応すれば執事長のゼルジが立っていて。


「アヤトさま……お出かけでしょうか。お客人が来られているのですが……」

「……そのようだな」


 ゼルジの背後に居る客人が見えるなりアヤトは道を空けるよう再び壁にもたれ掛かり、続いて客人も応接室に入ってきたが――


「レガートさんに……エレノアさま?」

「どうしてエレノアが……?」


 レガートはまだしもエレノアまで訪問してきたことにロロベリアやミューズ以外も虚を衝かれ中、ゼルジが下がるなりアヤトはドアを閉め。


「カルヴァシア……無事でなによりだ」

「そりゃどうも。で、なにがあった」


 適当な相槌を打ちつつ用件を促すアヤトに対し、エレノアに変わって深刻な表情でレガートが切り出した。


「アーメリ特別講師の居場所は特定できたのですが……どうも()()()()()()()()()()()()()()()




ラタニを救う光明が見えて動き始めたところで、レガートだけでなくエレノアさまが訪問しました。

順調に進んでいる最中にエレノアさまが同席している理由やレガートの告げた厄介な事態については次回で。



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