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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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手探りの価値

アクセスありがとうございます!



 ラタニを救う方法を模索する中でツクヨやミューズが視た一連の出来事から、サクラとシエンは黒い霧――黒い精霊力を取り込み、ラタニを変貌させたのは体内に移植された精霊石だと仮定。

 その上でマヤのヒントを元に、鍵を握るのは白夜だと当たりをつけた。


「白夜……?」

「教国で起きる現象?」

「そうそう。確か夜の間も昼間みたいに明るくなるって感じの……でも、それがどうしたの?」

「あ、そうじゃなくて……白夜はアヤトの切り札なんです」


 ただマヤの正体や擬神化などは共有しても、白夜については話していないだけに自然現象と勘違いをするディーン、イルビナ、ランにロロベリアは補足を。


「マヤちゃんとの契約でアヤトは精霊力を失った変わりに神気を保有していると話しましたよね。その神気を私の蒼月みたいに刀として顕現するのが白夜です」

「精霊力じゃなくて神さまの力を顕現した刀って……めっちゃ良く斬れそうだな」

「マヤちゃんが言うには斬れないものはこの世にないそうです」

「……マジ?」

「つってもオレは話を聞いただけで、擬神化すら見たことないけど」

「わたしも」

「自分は昨日サクラから聞いてるです」


 まあこの中で白夜を実際に見たのはロロベリア以外ではサクラとエニシのみ。実のところツクヨやミューズも擬神化は実際に見ているが、白夜はニコレスカ姉弟やシエンのように話を聞いているのみだったりする。

 滅多に顕現しないからこそアヤトの切り札と言えるが、なぜ白夜がアヤトの役割になるのかまでロロベリアも分からない。

 そもそも浄化対象をラタニではなく精霊石に限定したことで、問題視されている浄化方法に結びつくのかも不明で。


「それはアヤトとラタニ殿の精霊種、ノア=スフィネ討伐の違いじゃよ。ラタニ殿は圧縮した精霊力を撃ち放つことで精霊石を破壊したが、破壊した精霊石から黒い霧が溢れだしたであろう」

「でもアヤトが白夜で両断した時はそんな現象が起きなかったです」


 故にサクラとシエンが昨日の内に立てた仮定を共有。

 ラタニがノア=スフィネを討伐したのなら、精霊術か精霊力を利用した何かなのは間違いない。結果として破壊した精霊石から溢れた黒い霧がラタニを取り囲み変貌した。

 対する白夜で両断した際はそのような現象は起きず、精霊力を感じ取れても救援部隊は影響を受けず王都まで運搬できた。

 更にアヤトが朧月で一部を斬り取っても、研究施設に運ばれた精霊石の一部をサクラが譲り受けた際も黒い霧など発生しなかった。

 しかし王都に運ばれて間もなく、精霊石を研究していた者が次々と体調不良を訴えるようになり完全隔離、ついには精霊石から再びノア=スフィネが誕生した。


「なぜ前回と今回で全く別の現象が起きたのか。それは討伐方法による違いと考えるのが妥当じゃろう」

「精霊力も全ては解明できてないですが、神気はそれ以前ですからね。自分たちの予想もつかない影響を精霊力に与えても不思議ではないです」

「……かもしれません。アヤトさまが擬神化をされた時も、周囲の精霊力がざわついているような……精霊すら踏み込めない神聖な領域があるように感じられましたから」

「それはアタシも感じたわ。そういや聖女ちゃんの眼にはマヤはどう視えるんだ? アタシはヤバイって感覚しかなかったけどよ」

「わたしは世界に満ちる純然な精霊力に近く感じられました。ですがツクヨさんのような方に会った場合を想定して、精霊力を感じられるよう偽造したと後ほどマヤさんにお聞きしました」

「だから初対面以降は精霊力を感じたわけだ。まあ、余計にやばさが増しただけなんだけどよ……神さま」


 サクラとシエンの仮定を元にツクヨとミューズも神気について意見交換をするも謎が増えるのみ。

 しかし少なくとも神気が精霊力に何らかの影響を与えるのは間違いなく。

 更に特異な精霊力を秘めるロロベリアも入れ替え戦で精霊力を危険レベルまで枯渇させた際、神気と似たような現象が感じられた。

 そして似た現象を起こしたロロベリアの精霊力は黒い精霊力を浄化できるのなら。


「これは妾の臆測に過ぎぬが、神気に触れた黒い精霊力は()()()()()()()()()()()()()()()


 サクラが言うように神気は黒い精霊力の抑制が可能。

 もちろん所詮は臆測、実際はもっと別の影響を与えているのかも知れない。加えてラタニが精霊力で破壊した精霊石から黒い霧が溢れた理由も、完全に精霊力を失い無色透明な欠片になった理由も不明のまま。

 しかし状況証拠からして、少なくとも白夜で両断した精霊石からは黒い霧は溢れず、一時的にも秘められた精霊力の影響を周囲に与えていないのは確か。


 そしてマヤのヒント、黒い精霊力を吸収した精霊石がラタニを変貌させた元凶との情報を踏まえれば。


「ラタニさんの体内にある精霊石を白夜で斬るか突くかすれば、一時的にでも黒い精霊力は抑制される。つまりラタニさんの理性が戻るかもしれないってわけか」

「その間にロロベリアが黒い精霊力を浄化することも可能じゃろう」


 ユースが察したように、白夜で精霊石のみを狙えば一時的にでもラタニは黒い精霊力の影響を受けなくなり浄化も容易くなる。


「ここで確認するが、アヤトはラタニ殿の体内に移植された精霊石の位置、大きさを知っておるか」

「先ほど心臓付近にあるような話をミューズから聞いたばかりだ」

「じゃろうな。故にお主も自身の役割が白夜だと悟ったはずじゃ」


 ただラタニの体内に移植された精霊石の位置は心臓付近との情報しかない。詳しい位置や大きさを把握しなければ最悪心臓を傷つけかねない。

 そうなればラタニを救うどころか即死してしまうが、この問題もマヤのヒントで解消できる。


「ミューズ殿、先ほど距離を理由に良く視えなかったと言っておったが、近くであればラタニ殿の精霊石を完璧に把握するのは可能か?」

「……必ず把握してみせます」


 ミューズも理解したからこそサクラの問いに力強く断言するように、精霊力を感じ取ることが出来ないアヤトの眼となるのがミューズの役割。


「アヤト、手加減する余裕は無くともミューズ殿が視認した情報を元に、寸分違わず精霊石に白夜を突き立てることは可能か」

「やれる以外に答えられるか」


 つまりマヤのヒント通りラタニを救うにはアヤトの白夜、ロロベリアの精霊力、ミューズの眼が鍵となる。

 加えてミューズとは似て非なるも、精霊力の視認が可能なツクヨの眼も代役を務められる故にそれなりに役立つとマヤも口にしたのだろう。


 この役割分担が、工程が正しいか保証はない。

 なんせ臆測交じりのものばかり。事前に試すこともできないのだ。

 それでもここに居る全員が納得できる結論ならば――


「所詮は臆測だが、やる価値はある」




ほとんど状況証拠を元に導き出した結論ですが、精霊力以上に神気は未知の力ですからね。手探りになってしまうのも仕方ありません。

ですが一か八かの賭けでも、みんなが納得したことでアヤトも価値を見出しました。

果たしてこの結論が正しいか否か……は後ほどということで。



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読んでいただき、ありがとうございました!


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