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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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回想 悲しみの欠片 一方的な決別

アクセスありがとうございます!



 ラタニと別れた後、家臣の元へ戻ったアレクを待っていたのは無事の安堵とお叱りだった。

 また一時間近く行方を眩ませていたこともあって国王にも報告されていて、裏では大捜索が始まっていたらしい。ラタニの判断が少しでも遅ければ見付かっていたと知った時はアレクこそ内心安堵していた。

 約束していたのもあるが、やはりラタニを余計な面倒事に巻き込みたくない。故に家臣の追求や国王への報告にもラタニの名を伏せて郊外まで行っていたと嘘を吐き、騒がせた罰として謹慎処分を受けることに。


 ただこの出会いによってアレクの意識が変わったのも確か。

 今までは王族として生まれ、また息苦しく感じていた周囲の期待が苦ではなくなり自ら次期国王を目指すようになった。

 正直なところ長男だから自分が、ではなくレイドやエレノアがより民を導くに相応しい器ならばどちらかが継げば良いと思っていた。

 しかしレイドやエレノアが自分よりも相応しい器なら、更に相応しい器として認められるような自分になりたいと。その為か義務として淡々と熟していた教育や鍛錬にも身が入るようになり、むしろ今まで以上に厳しくするよう頼むほど。

 この意識変化に周囲は今回の一件を反省したからか、それとも王族としての意識が芽生えたのかと囁かれたが、アレクを突き動かしているのはやはりラタニの存在。


 また二人が気兼ねなく笑い合えるよう、身分の壁を越えようと頑張ってくれるのなら自分も頑張りたい。

 それにラタニは必ず約束を果たし、王国最強の座を手に入れるまでに成長するだろう。そんな彼女を迎え入れるのなら、自分も相応に相応しい男に成長したい。


 要はラタニに惹かれたのだ。


 自分を王族と知りながらも自然で、対等に振る舞ってくれた。

 楽しくて美しい精霊術をたくさん見せてくれた。

 なにより他にないラタニの強さ。自分を持ち、周囲や環境に揺らがない凜とした強さに惹かれたのかもしれない。

 だからこそもしという夢を抱いたのだろう。

 今は平民でもこれから精霊術士として成長し、功績を挙げていけばラタニにも相応の階級が与えられる。それだけのポテンシャルが彼女にはあるのだ。

 王国最強の座を勝ち取り、最低でも伯爵の位になってくれれば自分の婚約者として迎え入れるのも難しくない。もちろんラタニにとって自分などわがままな王子、程度にしか思われていないだろう。

 それでも成長し続ければいつかは認めてくれるかもしれないと、そんな可能性からアレクは国王を目指すと口にした。

 故にレイドやエレノアが精霊術士に開花する中、アレクは開花できなくても構わずひたすら己磨きを続けていた。


 それから六年後、先にマイレーヌ学院に入学したラタニが事故で両親を失い、自らも重傷を負ったと聞いた時はさすがに気が気では無い毎日を過ごした。

 しかし半年後、復活したラタニが早速約束を果たすとは思いも寄らず。

 宮廷魔術師団長であり王国最強のワイズ=フィン=オルセイヌを打ち倒しただけでなく、学院生でありながら術士団にスカウトされるという大出世。まあ驚きこそしたが、何となくラタニらしいと嬉しくもあったが先に約束を果たしたことでアレクもよりやる気に満ちあふれたのは言うまでもなく。


 また最終的に学院生を兼任するという条件で術士団の入団を受け入れたことにアレクは密かな期待を寄せていた。

 なぜなら後に王族としてラタニの実力を知る機会で、顔を合わせながらも余所余所しい態度で接したのは公式の場だけでなく、約束に拘っているのかもしれないと感じて。

 次はマイレーヌ学院の先輩後輩で会おうと約束したのなら、その時まで本当の再会はお預けにしよう、みたいな感覚もラタニらしいと。

 なら今は敢えて互いに知らぬ振りを貫くことにした。

 ラタニが王城に訪れても、レイドとエレノアの講師として頻繁に訪れてるようになってもアレクは会いに行くこともなく、希にすれ違っても会釈程度に留めて。


 そして出会いから八年、ついにアレクもマイレーヌ学院に入学。


 残念ながら軍務との兼任で多忙のラタニが学院に来たのは入学式から一月後の年度最初の入れ替え戦で。

 更に入れ替え戦に参加はしたが、研鑽を積んでも序列入りは果たせず無様な姿を見せてしまったが。


 それでも最初の約束、マイレーヌ学院の先輩後輩として再会できると。

 精霊の導きか、偶然にも帰宅途中でラタニと出くわし。


『らーちゃん……お久しぶりです』


 八年ぶりの再会を噛みしめて声を掛けるアレクだったが――


『……らーちゃんってのはあたしのことですか? ()()()殿()()


 対するラタニは呆れたような表情で首を傾げる。

 もしかすると周囲の目を気にしてとも思った。

 いくら身分関係なく学ぶ信条の学院内でも、さすがに愛称呼びは違うと。

 ただ周囲の目を気にするのはラタニらしくない。


『し、失礼しました……ラタニさん、お久しぶりです』

『別に謝らなくてもいいでしょうに。つーかお久しぶりもなにもつい最近、王城ですれ違ったさね』

『…………』

『それともお喋りするのがお久しぶりかにゃー? 確かに()()()殿()()とお喋りするのはあたしが術士団に入団した時くらいだからねん』

『…………』


 妙な胸騒ぎを振り払うよう言い直すも、アレクは違和感が込み上げるばかり。

 周囲の目を気にするのなら言葉遣いにも気を配るはず。

 にも関わらずフランクな対応でケラケラと笑いながらも、ラタニから一線を引いているようで、八年前の出来事も無かったかのような振る舞い。


『ラタニさん……あの――』

『殿下にさんづけされるのもむず痒いものがあるねぇ。でもまあ? 学院の信条ならあたしは先輩、殿下は後輩だから当然か。てなわけで今後はアレクって呼ばせてもらうよ』

『……アレクですか』

『無理にとは言いませんよ』

『構いません……ですが――』

『悪いけどもう行くよん』


 更には問いかけようにも一方的に話を切り上げられてしまう。


 突き放すような振る舞いにショックを受けるアレクに追い打ちを掛けるよう、去り際にラタニは自分にだけ聞こえるように。


『……これは独り言だけどさ』


 まさに独り言のような呟きは。


『あたしとの約束なんざさっさと忘れろよ』


 アレクにだけ伝わる決別の意が込められていた。




前話後のアレクさまの信条と、二人がマイレーヌ学院で再会するまでのお話しでした。

元々長男だから、ではなく最も相応しい人が王位を継ぐべきと考えていたアレクさまの意識が変化した理由、王位を目指す理由は不純かもですが敢えて置いといて。

またアレクさまの不純な理由をどことなーく察している人も居ましたがそこも敢えて触れないとして。

自ら提案した約束をラタニさんが一方的に破棄した理由こそ、ラタニさんの秘密に繋がります。

その秘密については、時系列が戻り次回から本格的に触れていくのでお楽しみに!



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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