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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十六章 いびつな絆を優しい未来に編
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前途多難

アクセスありがとうございます!



 ラタニとの戦闘で重傷を負ったアヤトだが、合流したカナリアのお陰で一命をとりとめた。

 ミューズの治療術は精霊力の視認を活かしたもの。精霊力の無いアヤトでは相応の腕でしかなく、更にボロボロになったアヤトの姿に冷静さを欠いていた。

 対しラタニの元で基礎から学び、国内でもトップクラスの実力を身に付けたカナリアは経験値もあるだけに突発的な状況でも冷静な対処。


 ただ治療術では失われた血液までは戻らずアヤトは意識不明のまま。またノア=スフィネの討伐が確認されれば王都から使者が派遣される可能性もある。

 なにより精霊力を爆発させた後、姿を消したラタニの行方も気掛かり。故にサクラと情報交換をした結果、一端王都に戻ることになった。


 アヤトについては一度医師の診断を受けさせる為ニコレスカ邸へ。使用人がある程度融通が利くこともあり、ボロボロのアヤトについてロロベリアやミューズが詳しい事情を説明するまでもなく医師を手配してくれた。

 カナリアとツクヨは王城へ。ノア=スフィネ討伐報告というより、ラタニの変貌について国王に報告するためだ。

 しかし変貌の理由が理由。王都で避難誘導をしていたカナリアが目撃したというのも違和感があるためツクヨが同行する形に。

 国王とは面識はなくともレイドやエレノアとは面識があり、ラタニとも繋がりがあることから心配して戦闘区域に向かったことにすると自ら名乗り出てくれた。


『話の分かる国王さまみたいだからな。アタシの秘密を知ってもどうこうすることもねーだろうし、なによりラタニさんが心配だ』


 余り表舞台に立ちたくないが今回は事情が事情、自身の特異性を打ち明けるのも辞さないつもりでいるらしい。

 なので王都でカナリアと会い、情報提供者として同行する体で王城に向かうことに。



 そして一時間後――



「アヤトの様子はどうっすか」

「……ユースさん」


 未だ意識が戻らず客間で眠っているアヤトの看病していたミューズの元に王城からユースが帰宅。

 王都滞在中はニコレスカ邸でお世話になっているラン、ディーン、シルビアは運良くノア=スフィネ復活で破壊された研究施設一体の瓦礫撤去などに協力すると名乗り出たお陰で別行動。

 ちなみにバルコニーから姿を消したロロベリアとミューズについてだが、ノア=スフィネの出現でニコレスカ邸のみんなが心配だと走り去ったとの言い訳を。二人の無鉄砲さに他の面々は呆れたものの、自分たちが引き留めなかった責任もあるとサクラやエニシが擁護する形で何とか許された。

 そしてユースとリースは二人の安否を確認するため先に帰宅することになったのだが――


「リースさんはどうされましたか」

「姉貴なら先に姫ちゃんの様子見に」


 リースの行き先を聞いてミューズも納得。

 ロロベリアはアヤトの診断後は自室で眠っている。精霊力の消費による疲労もあるが、精霊力の回復を最優先するためだ。

 なんせラタニの変貌はノア=スフィネの精霊石から湧き出た黒い霧、黒い精霊力の影響である可能性が高い。現に事情を知ったアヤトがロロベリアの保有量を確認したのも、その可能性を見越してのこと。

 詳しい原因が分からなくとも、黒い精霊力を浄化できるロロベリアの精霊力がラタニを戻す鍵になるかもしれない。

 つまりいつラタニの居場所が分かっても良いように、万全な状態にしておくべきとアヤトの看病をミューズに任せたのだ。

 眠っているとは言えアヤトよりもロロベリアの様子をリースが優先しても不思議ではないわけで。


「カナリアさんの治療術のお陰で命に別状はないそうです。ですが、いつ目を覚ますかは……」


 続いてユースの質問に答えるミューズだが表情は優れない。

 と言うのもカナリアが合流しなければアヤトは確実に死んでいた。治療術を精霊力の視認に頼っていた弊害か、治療術の精度の差が大きく出てしまった。

 もちろん合流するまでミューズが治療術を施してなければ出血多量で死んでいる。しかし自身の力量不足でアヤトの治療が出来なかった無力さ。

 加えて偶然でもアヤトの悲惨な人生の一部を知ってミューズの心は沈んでいた。


「それは待つしかないってことで、とりあえず王都の状況をお話しますよ」


 サクラから状況を聞いているだけにミューズの憂いを察したのか、ユースは敢えて気づかぬふりで話題変更を。

 なんせノア=スフィネ討伐の報を受けたことで再びラタニが称えられてはいるが、そのラタニの状況を知るのはツクヨから報告を受けているであろう国王と宰相のみ。ラタニが戻って来ない点は、念のため王都周辺の様子を確認していることになっている。

 研究施設に残されていた精霊石の透明化や、職員らが周囲で倒れているのも発見されてしまい王都は未だ混乱状態だ。


「その辺りはカナリアさんやサクラさんが何とかしてくれるらしいけど、問題は先輩方が戻ってきたらどう説明するかだな」

「……ですね」


 ただ王都の様子よりも懸念すべきはベッドで眠っているアヤトについて、ランたちにどう説明するか。

 ボロボロの衣服は着替えているし、外傷も治療術で消えているが使用人たちとは違い、この状況を知ったランたちはまず不審がる。さすがに変貌したラタニと対峙して負傷したと伝えるわけにもいかない。

 またサクラとの情報交換に協力こそしてくれたが以降は応答もせず、姿も見せないマヤについてもどう説明すれば良いか。


 せめて三人が帰るまでにアヤトが目を覚ませばとも思うが、それはそれで心配な面もある。

 ラタニの変貌を知った際、真っ先に駆けつけたアヤトは様子がおかしく、暴走を止めるというより殺そうとしていたらしい。

 またロロベリアが聞いたマヤとのやり取りで出てきた約束の意味。恐らくその約束が関係しているが、目を覚ましたところで話してくれるだろうか。

 そもそも目を覚ましたアヤトが大人しくするとは思えない。目を覚ましたところでまともに動けない状態でも関係なく、なにも言わずラタニを探すために飛び出す可能性が非常に高い。


 しかし今はとにかく情報が欲しい。その為にもアヤトから知っていることを聞き出したいところ。

 要はいつアヤトが目を覚ましても良いように、看病兼引き留め役としてもミューズが傍に居るわけで。


「ならオレがアヤトの面倒を見てるんでミューズ先輩も少し休んでください。ラタニさんの件もあるし、精神的にも疲れてるでしょ」

「ですが……」

「今は分からないことだらけでお先真っ暗。でも光明を見いだせた時に即行動できるようにしておくのも大事、姫ちゃんみたいにね」

「…………」

「なんせ姫ちゃんの精霊力が唯一無二のように、ミューズ先輩の眼はツクヨさん以上の精度を持つ唯一無二の特異性だ。違いますか?」

「……わかりました」


 故に交代を申し出ても責任感から難色を示すミューズだが、ユースの説得に支部支部ながらも頷き席を立つ。


「それではユースさん、お願いします」

「任されました」


 そのまま自分用の客間に向かうミューズを見送り、変わってベッドの傍にある椅子にユースは座るなりアヤトに向けて不敵に笑った。


「目を覚ましたら何がなんでも聞き出してやるから覚悟しとけよ」


 ただ所詮は空元気。

 帝国、教国、王国で起きた様々な問題を解決できたのはラタニとアヤトがあってこそ。

 しかし今回は一方が謎の変貌を遂げて行方不明、もう一方は重傷を負っていつ目を覚ますかも分からない。

 例えアヤトが目を覚ましたとしても、簡単に解決できると楽観視していない。


「……勘弁してくれよ」


 まさに前途多難な現状にユースは深いため息を吐いた。




ミューズやカナリアのお陰で一命をとりとめましたがアヤトは未だ意識不明、そしてラタニも行方知れず。これまで起きた事件は二人が中心に解決してきただけに、ユースが嘆くのも無理はありませんね。

前途多難な状況を抜け出すことが出来るのか……は後々ということで。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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