ははのあい
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ダラード遠征から王都った序列保持者に遅れて公国からロロベリアたちが帰国した際、遠征訓練や公国での出来事について話し合う中、謎の少女について知らされたことでアヤトはクローネの希望から当面ニコレスカ邸に滞在することが決まり、体としてでもアヤトはラタニの住居で留守番をしているマヤを連れて来るという理由で一度戻ることに。
また本人の希望やクローネの厚意でミューズも滞在することになり、エレノアを除く序列保持者がニコレスカ邸に揃った。
からの二日目――
…………エレノアさまは居ないけどみんなと寝泊まりするのは合宿するみたいで楽しいし、夜は女子会みたいな時間を過ごせるのもやっぱり楽しい。
楽しいけどやっぱり色々ともやもやする……色々を使うとまたホノカちゃんに呆れられるかもだけどそれはそれ、それはそれだけど昨日ホノカちゃんに書いた手紙を出してもらうようお願いするの忘れてたから後で自分で出してこよう。
それはさておき色々なもやもやだ。やはり気になるのは私を探してるらしい女の子の存在。新解放をしてるのに精霊術が使えたり言霊を使わない発動が出来たり、持たぬ者クラスまで精霊力を抑えられるのに保有量はかなり多い……相当な実力者みたいだけど、どうして私を探してるんだろう? それにユースさん曰く女の子の精霊力に妙なざわつきを感じたらしいし……リースたちは感じなかったらしいけど……なによりローゼアさまって誰だろう? 私の名前とちょっとだけ似てるけど、私を探してることと関係あるのかな……もやもやするけど、かなりの実力者に狙われてる以上私も気をつけないといけない。お義母さまのお陰でアヤトが護衛してくれるから安心、でもやっぱり私自身が対抗できる強さが必要、うん必要だ。
だからこそ今以上に訓練しないといけない。それにノア=スフィネとの戦いでお姉ちゃんとアヤトの共闘を見て悔しいもやもやがある。私もいつか二人のように守れる強さが欲しいってモチベーションが今まで以上に高まってるから訓練したい。そう言った意味でもみんなと寝泊まりする合宿みたいな環境は最高で、朝から晩までみんなと訓練できるなんてやっぱり最高だ。
最高だけどもやもやは別。というか――
「たく……遠征訓練で先輩方はなにしてたんだ」
「……くそう」
「まだまだ……行くよ、ジュードくん」
模擬戦でアヤトにボコボコにされて煽られるジュードさんとルイさんが羨ましい……二人だけでなくリース、ユースさん、ミューズさん、ランさん、ディーンさんも代わる代わるアヤトの訓練でボコボコにされて羨ましい。いや、ボコボコにされて嬉しいわけもなく悔しいし、私もボコボコにされて嬉しい趣味はないけど朝から晩までみっちりアヤトの訓練を受けられるのが羨ましからもやもやする。
そして恐らくここにエレノアさまが居てもやっぱりアヤトは訓練でボコボコにする……そう言えばエレノアさまがツクヨさんに武器を打ってもらったらしい。紫空か……ランさんが目をキラッキラさせて語ってくれたけど、私もどんな武器か見るのが楽しみだ。
ではなくて……楽しみではあるけど今はもやもやについてだ。帰国してからちょいちょいアヤトは外出してるけど行き先がどこか教えてくれなくてもやもやするし、それ以外は訓練に付き合ってくれるけど私だけ仲間外れだからこそもやもやする。
前からアヤトの訓練時間は減ったけど、何故か帰国してからは一度も遊んでくれない。どうしてって質問しても構ってちゃんで呆れられるし、そもそも私と遊んでくれない理由と構ってちゃんは関係ないからもやもやする。
それに一応でもアヤトは私の護衛をしているはず。屋敷内では護衛とか必要ないけど帰国してから全然話す機会が無いのがもやもやする。フロッツさまがリーリアさんについて聞き出してくれたお陰で特に男女のあれこれとか幼なじみだからっていつも一緒だったわけでもないと知ってミューズさんと安心したけど、なんかそれはそれでもやもやしてきた(←意味不明)。
とにかく女の子のことやお姉ちゃんとの共闘でやる気は満々なのに、どうして私だけは『白いの? 知るか、勝手に足掻いてろ』(←ロロベリア主観)的な態度なのか。せっかく同じ屋根の下で寝泊まりしてる環境なのに……ラナクスでも同じ環境だけど、少しは私の訓練相手をして欲しいのに、どうして昨日も今日もみんなと遊んでる光景を尻目に私は制御訓練をしてるんだろう? 仲間外れみたいでもやもやするんだけど――
「――姫ちゃんすげーな」
「いきなりどうした」
「めっちゃもやもやしてるのに精霊力は全くぶれてないでしょ」
「……もう無意識で精霊力を手足感覚で扱ってるよな」
練武館の隅で一人制御訓練をしているロロベリアを呆れ半分、感心半分でユースとディーンは遠目で眺めていたりする。
表情はもやもやをメインにコロコロと変わっているのに全身を巡る精霊力は常に一定の感覚を保てるのは恐れ入る。
それはさておきアヤトの訓練で一度も指名されないことで、みんなの邪魔をしないよう基礎訓練に精を出すロロベリアが少し不憫でもある。
もちろんアヤトも意地悪をしているわけでもない。合同訓練中は基本実力的に劣る面子から順に指名しているのでユースやミューズも少なめ。
つまり八人の中で実力が抜けているからこそロロベリアはある種特別扱いされているだけ。本人が全く無自覚なだけにもやもやするのも仕方がない。
「そろそろ一肌脱ぎますか」
「どこ行くんだ? ユース」
「ちょっとお節介を思いついたんっすよ」
ただそれはそれで可哀想とユースは行動に移すべく練武館を後にした。
◇
「クローネも律義なもんだ」
「でもお義母さまの言う通り、体は必要でしょ」
そのお節介が実を結び昼食後、クローネから呼び出しを受けたロロベリアはアヤトと一緒にニコレスカ商会の本部に向かっていた。
呼び出し理由は遠征訓練辞退を実家の手伝いとした手間、一応程度でも手伝わせておくため。また少しでも事業の経験を積ませる目的もあるのだろう。
というのは建前、実際はアヤトとの時間が全く取れないロロベリアの為に裏でユースが手配した結果。ロロベリアが外出するなら護衛を頼まれているアヤトも付き添うことになるので自然な形で二人の時間を作れるからだ。
まあ本部で実際に事業を手伝わせるので屋敷との往復する間の些細な時間だが。
「そう言えばホノカちゃんに手紙書いた?」
「書いてねぇよ」
「……書きなさいよ。ホノカちゃんもアヤトから手紙が来たら喜ぶよ?」
「喜ぶとは思えんがな」
「良いから書くの。私のと一緒に送ってあげるから」
「へいよ」
先ほどのもやもやが嘘のようにロロベリアが上機嫌になったのは言うまでもない。
ないのだが商会本部に到着して間もなく――
「確かにアヤトちゃんとの仲を応援するし、何かあったら頼りなさいと言ったけど……そもそもロロは奥手すぎなの」
「……はい」
「なのに訓練は積極的なのよね……サーヴェルに似たのかしら? どうしてこと恋愛になると押しが弱くなるの」
「……ごめんなさい」
それはそれと自ら時間を作ろうとせず、もやもやばかりしているロロベリアはクローネからしっかりお説教を受けることになった。
オマケその三は一章ぶりのロロのもやもやシリーズでした……なにかすみません。
それはさておき、アヤトに対するもやもや以外ももやもやすることはありましたからね。ただそれはそれとして、ユースの配慮でクローネさんが粋な計らいをしてくれましたが、ただ甘やかさずにロロの姿勢にお説教をするのも母の愛ということで。
そしてもやもやシリーズを今章も入れられて心置きなく次章に……行く前に、オマケは残り二話あります。
どちらも次章以降に関わる内容なので、最後までオマケをお楽しみに!
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