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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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姉弟の進む道

アクセスありがとうございます!



 ノア=スフィネの精霊石によってロロベリアの精霊力が異質と判明した話し合いの後――


「愚弟、説明する」

「…………はい」


 ラタニやツクヨを見送った後、そのままユースはリースの自室に連行されていた。

 理由は言うまでもなく教国から帰国して以降、内密にアヤトと情報交換をしていたことを問い詰める為。

 もちろんユースに非はなく、秘密にする理由があってのこと。それでもリースにとって弟に隠し事をされていたのは辛いもの、元より短絡的な性格故に感情が抑えられないわけで。

 ただ素直で純粋なのもリース。


「――とまあ、そんな理由からアヤトも秘密にしてたわけだ」

「むぅ……」


 秘密にしていたのはロロベリアの日常を気遣ったものと、分かりやすく道筋を立てた説明をすれば不満げにしながらも受け入れてくれた。

 そもそもアヤトが自分やリースを鍛えているのは損得無しでロロベリアの味方になってくれる信頼から。加えてただ絆が深いだけでなく、戦力としても期待したからこそ選んでくれたはず。

 まあ戦力としては先を見据えたもの。現に帝国や教国の一件でも荒事に関しては蚊帳の外で肝心な部分はなにも教えてもられなかった。

 それは仕方ないとユースも割り切っている。いくら自分たちの伸びしろを期待していようと訓練を始めてまだ一年も満たない。

 なにより相手は強いだけでなく、不可解な能力を秘めている。情報不足を覆せるだけの経験、実力が備わってなければ足手まといと判断されて当然だ。


 しかし仕方ないと割り切っていくわけにもいかない。

 密度は違えどロロベリアは同じ期間の訓練を受けた結果、一年前はほぼ互角だったはずなのに今では圧倒的な差をつけている。その伸びしろから例えまだ危うい面があろうとアヤトはある程度裏の事情に関わらせるようになった。

 しかもそのロロベリアが特種な精霊力を秘めていると今回の実験で証明された。特種が故にどんな力かはまだ判断しかねるも、他にない特別な力になるのは確か。

 本来守る側として期待されていたはずなのに、ロロベリアとは差が開く一方。この現状を知って悠長に構えているわけにはいかないのだ。

 ユースでさえ不甲斐なさから奮い立っているのなら、全ての事情を知ったリースが黙っているはずもなく。


「師匠のところに行く。ユースも行く?」


 予想通りの展開にユースは苦笑。現状打破の為にリースは今まで以上の訓練をアヤトにお願いするつもりだ。

 差が開いたのなら今まで以上に埋める努力をすれば良い。簡単に埋まる差でなくともやれることをやる。単純な考えでも悲観や焦りを抱くよりは前を向き続けるリースらしい答え。

 その為にリースが師となったアヤトを頼るのは当然で。


「遠慮しておくよ」


 しかしリースの誘いにユースは首を振る。

 師弟の時間に割り込むのは無粋もあるが、今後を見据えるならばこそ今は別の道を模索するべき。

 なによりやるべき事は変わらない。ロロベリアが先を行くなら追いつき、一緒に戦える強さを手に入れれば良いだけ。

 要は別の道を歩もうと目的が一緒なら、それぞれに必要な訓練をすればいい。

 そして今の自分に必要なのはアヤトの訓練ではなく、新たな手札を得る為の訓練だ。


「そう」

「頑張れよ、姉貴」


 察しているかは不明だが頷くリースに激励を送り、ユースも行動に移った。



 ◇



 一方、自室を後にしたリースはそのまま練武館へ。

 ニコレスカ家に滞在中もアヤトは個人訓練を怠らない。そして以前のリースなら訓練に参加させてもらいただがむしゃらに突き進んでいたが、師弟関係となったからこその変化もある。


「師匠、どうすればもっと強くなれる」


 練武館に入るなり素振りをしていたアヤトへ実に単純な質問を投げかけた。

 強くなる為には頑張って訓練をする、という方法しかリースにはない。しかし序列選考戦を通じて考えることの重要性を学んだ。

 学んだところで即実行できるなら誰も苦労しない。それでも分からないことから目を瞑るのではなく、向き合うのが大切で。

 質問したところでアヤトは今後の方針も含めて懇切丁寧な説明はしてくれない。ただ分からないことをちゃんと質問すればなにを考えれば良いかのヒントは教えてくれる。


「俺に剣術を教わろうと、お前が強くなる保証はねぇよ」


 質問してからしばらく、素振りを終えたアヤトが突き放すような物言いを。

 対するリースは反論せず頷くのみ。精霊術という可能性を捨ててでもアヤトに剣術を学ぶことが強くなる為に必要だと選んだのは誰でもないリース自身だ。


「俺が教えているのはあくまで基礎に過ぎん。その基礎を元にどう昇華させるかはお前次第だ」


 故に教え方もアヤトの自由で、基礎の重要性も理解しているので不服はない。


「強くなりたいのならリスなりの剣術を見つけることだ。なんせ俺は持たぬ者だ、精霊術を捨てようと精霊術士であるお前とは根本が違う」

「…………」

「要は剣術に拘るあまり、精霊術を捨てる必要はねぇよ」

「それは――」

「少しはテメェで考えろ」


 しかし今さらな助言に思わず反論しかけるも有無も言わさずアヤトは一蹴。


「だがま、リスにやる気があるのなら今後は厳しめに遊んでやるか」

「……お願いします」


 話は終わりだと朧月の峰を肩に乗せるアヤトを問い詰めることなくリースは紅暁を抜く。

 なんせ思い返せばアヤトは精霊術を磨けと口にしていないように、捨てろとも口にしていない。

 つまり今の助言こそ自分が強くなる為に考えるべきもので。


「リス、口先だけで終わるんじゃねぇぞ」

「もちろん――」


 捻くれた物言いも含め師の期待が伝わるからこそ、必ず答えを見つけるとの返答としてリースは飛び出した。




オマケ二つ目はニコレスカ姉弟の内容でした。

作中でそれなりに話題に参加していたユースに対し、登場しながらも話しについて行けないリースはほとんど台詞がありませんでしたね。もちろんロロの恐怖を払拭させ、らしさを取り戻す為に一役買いましたがやはり陰が薄いのは否めません。

それでもこのまま蚊帳の外で終える二人ではありません。なのでユースはユースなりに今後を見据えて行動に移し、リースは師匠のアヤトに教えを受けることにしました。

まあ相も変わらず端的な助言しかしないアヤト師匠ですが助言を元に弟子のリースが、そして自身で考え必要な行動を起こしたユースがどう成長するのか。

そう言った面も含めて今後もお楽しみ頂ければと。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!



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