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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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降臨

アクセスありがとうございます!



「「…………」」


 ノア=スフィネが黒い霧になって弾ける様にツクヨとミューズは言葉を失っていた。

 決着をつけたのは指先から放出した一発の閃光。

 胸元に凝縮させた精霊力の核を一部分解放することで、圧縮された精霊力を閃光の如く射出するのがラタニの狙い。

 一点集中による威力は凄まじく、ノア=スフィネを貫いた後も衝撃波で海を割り彼方へと消え去ってしまった。

 しかも今まで飛翔術を使い続け、上位種すら軽く上回る精霊力を射出した後でもラタニから感じ取れる精霊力は健在。未だ底が見えない保有量にツクヨは身震いしてしまう。


「まったく……ラタニさんには驚かされてばかりだぜ」


 故に他の言葉が思いつかないとから笑いが漏れる。

 まさに別格の存在と称賛を通り越して呆れる反面、まだ一区切り付いてないと強引に切り替えた。


「んで、さっきの話はマジか」


 戦闘中のラタニからミューズが視認した黒い精霊力。詳しく聞く前にラタニの立ち回りに変化が見えたことであやふやのまま。

 ノア=スフィネという脅威が排除されても不穏な情報にツクヨも気が気ではないわけで。


「確かに視えましたが……今はなにも」


 対するミューズはラタニから目を離さず首を振る。

 微かに確認できたはずなのに、どれだけ凝視しても黒い精霊力は視られない。


「放出した精霊力と一緒に放出された……にしても、黒い精霊力が身体に影響あるならラタニさんも無事じゃねーか」

「普段のお姉さまからは視えたことはありませんし」

「だよなー。もしネルディナみたいに普段から保有してりゃ、アタシにも視えるはず……なんだけどラタニさんの精霊力って視えにくいんだよなー」

「わたしもです。ツクヨさんのような色の判別はできませんが、様々な輝きが渦巻いているので感情が読み取れませんから」

「聖女ちゃんも似たように視えるわけか。なら今回は色んな輝きの中から偶然黒い精霊力が目立って視えたとか? つーか聖女ちゃんの場合は感情を色として判別するからな」

「……どうでしょうか」


 ツクヨの考察にミューズは返答に窮する。

 誰しも醜い感情を持ち合わせいるならラタニも同じ。その感情が黒い精霊力として視認してもおかしくはない。

 ただラタニの精霊力は判別し辛いだけに判断が難しい。


「……ま、アタシらがぐだぐだ考えても結論はでねーか。それよりも今はラタニさんをお迎えしますかね」

「ですね。体調も心配です」


 そう結論づけるツクヨにミューズも賛成。

 視認した黒い精霊力は気になるが保有量に変動はなくとも心身共に消耗しているなら、まずは労うのが先決で。


「だよな。ラタニさーん!」


「――おりょ? そこに居るのはツクちゃんじゃまいか」


 声を張り上げつつ出迎えるツクヨに気づき、ラタニは近づくようにゆっくりと地上に降りていく。


「ミューちゃんまで一緒にしてるのかにゃー」


「……待って下さい!」


 続いて声を掛けられたミューズが事情を説明しようと口を開くも、異変に気づくなり先を行くツクヨの腕を掴みラタニに向けて叫ぶ。


「どうした聖女ちゃん?」

「なにかあったんかい?」


 疑問視しながらも焦りを感じ取った二人は警戒心を強めつつ問いかける中、ミューズは視線を前へ。

 前回はアヤトが両断した後も精霊力を秘めていたらしいがラタニたちが近づくことも、救援部隊が運ぶことも出来たはず。

 にも関わらず、ラタニの閃光によって砕け海岸沿いに落下したノア=スフィネの精霊石から()()()()()()()()()()()()()()()


「それが――」


 異変を伝えようとしたが次の瞬間、精霊石から黒い靄が吹き出し。


「……っ!? お姉さま、逃げて下さい!」

「逃げるって……なにからだ」


 更に黒い靄がラタニ目がけて飛び出すなりミューズは咄嗟に警告するも、ツクヨには視えていないのか困惑。


「ミューちゃん、いったいなに……が…………っ」


 またラタニにも視えるどころか感じ取れてもいないのか、周囲を警戒するも黒い靄に包まれるなり体がビクリと震えた。


「ラタニさん……? 聖女ちゃん、いったいなにを視た」


 ラタニの様子にツクヨも不穏な事態が起きたと察するも、今のミューズは返答する余裕がないほど混乱していた。


 ミューズの眼に視えるのはラタニを包んだ黒い靄が吸い込まれるように体内へ。



 う…………あ……あ…………



 あああああああぁぁぁぁぁ――――ッ



 硬直していたラタニが空中で苦しむように藻掻き、悲痛な叫びを上げ始めた。


「おいおいおい……マジでなにが起きたんだよ!?」


 同時に体から吹き出た黒い霧はツクヨも視認したのか、焦燥を露わに声を張り上げる間に黒い霧も治まっていく。


「……あ……あ…………」

「なん……っ」


 そして再び姿を見せたラタニの変貌に二人は茫然自失。


 何故ならエメラルドのような翠の輝きをしていたラタニの髪と両目が、今はオニキスのような漆黒の輝きを帯び、露出している肌の所々に文字のような黒い線が浮かんでいる。


 なにより全身を覆う()()()()()()()()()()()彿()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「っ……聖女ちゃん走れ!」


 不可解な変貌を遂げたラタニを前にして、真っ先に動いたのはツクヨだった。

 ミューズの腕を掴み返すなり踵を返し一目散に駆け出す。

 ラタニの身になにが起きたのか全く分からないが、今のラタニはノア=スフィネ以上に危険だと本能が警鐘を鳴らしている。

 擬神化をしたアヤトに近く、しかし言い表せない畏怖の存在から逃げるべきと判断。


「アヤトに報告を頼む! 早く!」

「……はい!」


 腕を引かれながら簡潔な指示を受け、ポケットから取り出した神気のブローチをミューズは固く握りしめて。


「マヤさん……今すぐアヤトさまにお伝え願います――っ」


 マヤからの返答を待たず自身が視たままの出来事を報告した。




ツクヨ&ミューズサイドの討伐後の出来事でした。

破壊されたノア=スフィネの精霊石から吹き出した黒い靄に包まれたラタニが黒い精霊力を宿し、悪魔のような存在に変貌しました。

いったいラタニの身に何が起きたのか……は追々として。

ラタニの変貌がアヤトに伝わった所で、今章も次回で終章となります。



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読んでいただき、ありがとうございました!


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