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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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覆された朗報

アクセスありがとうございます!



『ヴオ――ッ』


「なんの!」


 迫り来る黒刃をラタニは後方に下がりつつ冷静に躱していく。

 あまり距離を詰めず、出来る限り余裕を保つのは飛翔術のみでノア=スフィネの攻撃を躱すため。

 先日は空中と地上を交互に利用していたが今回はノア=スフィネの攻撃による爆風や逃げ場が限定されることから地上を避けた完全な空中戦。

 しかし単調な攻めも功を奏し、指鳴らしを駆使した回避行動を使わずとも対応できていた。もしノア=スフィネがもっと狡猾な攻めをしてくれば工夫を強いられていただろう。


 だが実際は飛翔術以外の精霊術を使う余裕がないだけ。

 なんせある意味精霊術の同時発動に近い作業をし続けている。


「トカゲくんがアヤチンみたいに陰険でなくて助かったけど……さすがにキツイねぇ」


 更に念のため黒弾や黒刃を海側へ逸らしながらの防戦、さすがのラタニも心労からため息一つ。

 そもそもツクヨが驚愕したように、消耗の激しい飛翔術と平行してノア=スフィネを討伐する為の精霊力を捻出するには膨大な精霊力を必要。

 胸の中心部にも精霊力を集約。ただし身体強化を目的というより精霊力の核を生み出すように。

 同時に自身の右腕に精霊力を集約。こちらは精霊力の負荷に右腕が耐える為の身体強化と、通り道としてのイメージをしやすくするため。

 急激な集約は心身への負担が大きいので馴染ませるようにゆっくりと。多少時間は掛かるが体内での制御なら詩を必要としない分、飛翔術を維持し続けることが出来る。

 まあ同時発動を習得しなければ不可能な制御、このような手札など誰も考えようとしないだろう。

 故に()()()()()()()()()()()()()()()()()可能とした手札で。


「たく……今ばかりはクソッたれな両親に感謝するかねぇ」


『グオォォォ――――ッ』


「バケモノに産んでくれて――ありがとよってねん!」


 お陰で単独討伐が可能と両親(元凶)に対して皮肉交じりに感謝しつつ、黒弾や黒刃だけでなく体当たりを仕掛けてくるノア=スフィネの攻めに耐えながら討伐準備を着々と進めていた。


 ノア=スフィネに詩を紡いだ精霊術は通用しない上に、発動すら難しい。

 以前の経験を活かし、本来の保有量を引き出す訓練を続けながら編み出した新たな手札は、精霊の咆哮のように高火力の精霊力を放出するもの。

 腕を砲身に、胸の中心部は精霊力の火薬庫としてイメージする。

 加えて膨大な精霊力の放出に耐える為、部分的な強化を施す。

 もちろん精霊の咆哮と同等の出力を可能にしても、ノア=スフィネに通じないのは先日の戦闘で立証済み。

 しかしノア=スフィネの弱点も立証されている。

 アヤトが両断したように、体内の精霊石を破壊すれば良いのなら。

 火力よりも貫通力に特化すればいい。


 つまりラタニの狙いは精霊の咆哮と同じ原理で、しかし極限まで圧縮した精霊力の放出。


「マシになったとは言え……これ以上はキツイか」


 ただ通常の人間より精霊力の負荷に耐えられる体とは言え限界は来るわけで。


「でもまあ……充分か」


 それでも予定していた精霊力の核が出来たとラタニはほくそ笑みながら位置を調整。

 防戦を強いられながらも精霊石の位置は既に確認済み。


『ォォォォ――ッ』


「てなわけでっと」


 知らず海を背に黒弾を放つノア=スフィネの首元から一メル下に照準を合わせるよう右人差し指を向けて――


「あたしの勝ちってことで」


 今まで制御していた精霊力をイメージ通り右腕から指先に向けて放出。


 翠の閃光は黒弾をも貫きノア=スフィネの胸元へ。


 防衛本能か精霊の咆哮を防いだ黒い輝きが全身を包み込むも、狙い通り閃光は苦もなく貫通。



 ォ――――ァァァァ……ッ



「おーしまい」


 そして精霊石を破壊を伝えるような断末魔を最後に、ノア=スフィネは黒い霧となって弾けた。



 ◇



 同時刻、研究施設では――


「――はぁ……はぁ……」

「ご苦労さん」


 糸が切れたように崩れ落ちるロロベリアを労いつつアヤトは支えた。

 二人の前に転がる巨大な精霊石の欠片はクリスタルのような無色透明に変わっている。また周辺の禍々しい感覚も綺麗になくなっていた。


「ありがとう……でも、さすがに限界かも」


 ただ浄化の代償としてロロベリアの精霊力は解放を維持できないほど消耗。顔色も悪く立っているのもやっとなほど。


「あっちはアヤトとお姉ちゃんに任せたから」


 つまりこれ以上の浄化作業は不可能、故に先日同様ノア=スフィネの討伐は二人の役目。

 もちろん再びノア=スフィネが誕生する可能性があるだけに、討伐後に残された精霊石の浄化はロロベリアが担う。人知れず浄化するのは難しいが、そこも含めてアヤトとラタニに任せるしかないわけで。


「だから早くお姉ちゃんの所に行って。私は大人しく待ってるから」

「そうするか」


 故に笑顔で送り出すも言葉とは裏腹にアヤトはロロベリアを背負う。


「ま、急ぐ必要もない。なんせトカゲは任せろとラタニは言っていたらしい」

「それは強がりじゃない……?」

「強がりなら笑ってやるだけだ」

「…………」

「なんにせよ、連絡がない内は問題ないだろう」


 苦笑で一蹴するもラタニに対するアヤトの信頼が窺えるだけに、ロロベリアは少しだけ羨ましかった。

 とにかくアヤトが言うなら遠慮なくと、大人しく背負ってもらうことに。


「――兄様、()()()()()()()()連絡です」


「……あん?」


 しかし研究施設から抜け出そうとしたタイミングでマヤが顕現。


「ああ、トカゲさんならラタニさまが討伐したのでご安心を」


 わざわざ顕現して報告してきた理由よりも、ラタニではなくミューズからという部分に訝しむアヤトを他所にマヤはクスクスと笑いつつ朗報を。


「ですが――」


 ただミューズからの連絡は()()()()()()()()()()()()()()()()




精霊の咆哮の原理を応用したデタラメな手札によって、ラタニVSノア=スフィネの雪辱戦はラタニさんに軍配が挙がりました。

そしてロロも精霊石の浄化に成功。

つまり同時攻略も無事終了……ですが、ミューズからの連絡通り、全てが終わっていません。

所々で描かれていたラタニさんの不穏な情報は後程として、討伐後に何が起きたのか。

今章も残り僅か、まずは次回のミューズ&ツクヨサイドをお楽しみに!


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!




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