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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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黒き存在

アクセスありがとうございます!



 ツクヨの誘いを受けたミューズはノア=スフィネの情報を得るために王都外に出ていた。

 念のため自身の考えをアヤトに伝えたところ、ツクヨの予想通り好きにしろだった。まあラタニの邪魔だけはするなとクギも刺されたが、暗に無理をしないようとの忠告なのは今さらで。

 幸か不幸か王都が混乱していたことで容易に抜け出し、移動するラタニとノア=スフィネの後を追いつつ海方面へ。相手は飛翔する分、遅れはしたが海岸付近の森林に到着。

 もちろん取り決め通り視認できるギリギリのラインを保ち、いつでも逃げられるよう警戒しながらラタニとノア=スフィネの戦闘を見守っていた。


「……聖女ちゃんにはどう視える」

「恐らくツクヨさんの予想通りかと」


 上空でノア=スフィネの攻撃に回避を強いられるラタニの様子に二人は唖然。

 一見苦戦しているような戦況でも回避に余裕を感じられることから心配はしていないが、二人が注目したのはやはりノア=スフィネという存在。

 実のところ授与式に参加せず鍛冶場に籠もっていたツクヨは初めて実物を見ることができた。対するミューズはバルコニーで見たものの困惑や後の対処でじっくり見ていない。

 そして距離はあれどようやくノア=スフィネを視た見解が一致したからこそ驚きを隠せない。


「だよなー。生まれ方や御伽噺の内容からもしかしたらって気はしてたけど、ぶっちゃけアイツは精霊力の塊だ」


 なんせツクヨが視る限りノア=スフィネはネルディナの精霊力に潜んでいた黒点に近い感覚がある。人間や霊獣のように体内に精霊力が流れていると言うよりも集合体として一定の間隔で蠢いているように視えた。

 ただこの可能性はある程度予想もしていた。

 ノア=スフィネが誕生した際や散り際に見せた黒い霧のようなもの。

 また御伽噺に出てきた世界に蔓延する悪しき淀み。今はロロベリアが精霊石を浄化する際にミューズが視認した黒い精霊力と仮定しているが、黒い霧が精霊力だとすれば。

 そして唯一黒い精霊力を視認したミューズにも同じように視えているのなら。


 ノア=スフィネは()()()()()()()()()()()()()()()


「わたしも同意見です。先ほど研究施設周辺に漂っていた黒い靄と同じような感覚ですから」

「つまり黒い靄ってのは黒い精霊力の絞りカスみたいなもんで、精霊力の視認性がアタシより高い聖女ちゃんには視えた。でも誕生前の黒い霧やノア=スフィネはギュッと凝固した黒い精霊力だからアタシだけでなく普通の眼にも見えるわけね」


 更にネルディナの精霊力から視た黒点も同じ理由からツクヨの眼でも視ることが出来た。ただ内外問わず微量だった為、ツクヨの眼ですらギリギリ視認できたなら他の面々に視えないのも納得できる。


「しかしまあ……視るのもキツイわ」

「……ですね」


 だからこそ精霊力に機敏な二人は遠目でもノア=スフィネを視続けるのは精神的にも辛く目を覆いた気持ちに駆られる。

 なんせ先日ニコレスカ邸で見せてもらったノア=スフィネの精霊石から感じ取った精霊力が凝縮した存在なのだ。精霊石以上の膨大な精霊力も踏まえてツクヨは気分が悪い。

 ミューズも人の悪感情を突きつけられているような感覚から吐き気が込み上げてくる。

 それでも目を反らさないのは少しでも情報を手に入れる為。故に気を強く持ちノア=スフィネに注目していた。


「……あれは」

「どうした聖女ちゃん。なにか異変でも視えたのか」


 間もなくして反応を見せるミューズに確認を取るも差す指はノア=スフィネではなくラタニに向けられる。


「異変というより……お姉さまの精霊力に奇妙な変化が視えたもので……」

「ラタニさんの?」


 ノア=スフィネよりも小さく、今も縦横無尽に空を飛び回っているラタニを目で追うのは難しいはず。それでも変化に気づいたのなら、やはりミューズの視認性は自分以上か。

 などと感心しつつツクヨも視力を更に強化、ラタニを注視すれば微細な変化を捉えた。


 いや、正確には現在進行形で変化を遂げていると言うべきか。


 不自然なまでにダランとしている右腕に一本の線を引くように綺麗な精霊力の道筋が出来ている。

 皮膚から内部に向けて精霊力が徐々に練られるよう集約されていく。

 更にその道筋に繋がる体の中心部にも精霊力が凝縮されていた。

 部分集約の応用か、まるで右腕や体の中心部を集中的に強化しているようで。

 なにを思いラタニがこのような集約を続けているかはまだ分からない。


「あのデタラメな精霊力を完全に操ってるのか……?」


 しかし恐ろしいまでに緻密な制御にツクヨは信じられないと眼を見開く。

 なんせラタニは飛翔術を使いながらノア=スフィネと対峙している状況なのだ。

 つまり飛翔術に必要な制御を行いつつ、ノア=スフィネにも意識を向けながら、部分的にだろうと精霊力を集約させ続けている。

 本来は飛翔術を維持するだけで精一杯なはず、にも関わらず同時に二つの作業を同時進行しているのだ。

 加えてラタニの精霊力は常人以上に荒々しい不安定な流れ。そんな精霊力をここまで完璧に操れるものなのか。


「マジでありえねぇ……けど、いったいラタニさんは何するつもりなんだ」

「わかりません。ですがわたしにはもっと気になることが……」

「あん?」


 非常識な現象を前に驚き半分、未だラタニの狙いが読めないと疑問視するツクヨに対しミューズは別の変化に注目しているようで。

 あの非常識な現象以上に気になる変化があるのかと問うより先に、ミューズは不安げに呟いた。


「ノア=スフィネのような黒い精霊力が()()()()()()()()()()()()()()()()




今回はツクヨ&ミューズサイドから視たラタニVSノア=スフィネの様子でした。

精霊力を視認する二人が実際に視たことでノア=スフィネは黒い精霊力の集合体と結論づけました。

ただラストでミューズがラタニさんの体内に視た黒い精霊力は何なのか。

そしてラタニさんの狙い、新たな手札も踏まえて次回でラタニVSノア=スフィネ戦も決着となります。

ある意味両者にとっての雪辱戦の結果をまずはお楽しみに!



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!


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