表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
706/779

雪辱戦

アクセスありがとうございます!



 被害を抑えるべくノア=スフィネを王都外に吹き飛ばしたラタニも避難勧告をしながら追走。


『なにが起きたか分からんくて混乱してる暇があるなら王都に逃げなー! あのトカゲさんはあたしこと、ラタニ=アーメリがちゃんと退治してやるからねー!』


 更に王都の敷地外に出ても周辺にいる者たちにも声を掛けていく。

 王国の首都だけあって王都は人の出入りが多く、今は勲章授与の盛り上がりで普段以上だ。

 そんな状況下で突然上空に怪物が出現、しかもその怪物が王都外に飛んできたとなればパニックは必至。ラタニも街道を避けて吹き飛ばしたが、下手に逃げ回られては場所を変えた意味を成さないと王都内に逃げ込むよう勧告していく。

 また自惚れではなくラタニという名前が不測事態の際、民衆に与える安心感を理解しているからこそ自身の名前を敢えて口にすることも忘れない。

 狙い通りの成果か、王都に駆け込む者たちを確認しつつノア=スフィネを追走していた。


『ヴァァァァ――――ッ』


「お待たせん――『からのー』」


 そして王都から二〇〇メルほど先で咆哮を上げるノア=スフィネと対峙するもラタニは速度を下げず精霊術を発動。二〇を越える風刃が放たれるがノア=スフィネに傷一つ与えられない。


『ちくちくしてるかい? してないだろうねぇ!』


 だが言霊程度の精霊術が通じないのは百も承知とラタニは追撃を止めない。

 なんせ相手は精霊の咆哮(エクグニル)が通じない怪物、いくら以前のノア=スフィネに比べて秘める精霊力が三割減だろうと詩を紡いだ精霊術も通用しない。

 分かっていながら追撃を続けているのは単にノア=スフィネの敵意を完全に自分へ向けるため。

 吹き飛ばす際、地上に向かう余波を考慮して抑えたことで王都までの距離は二〇〇メル程度。相手の攻撃による二次災害を考慮すればまだ足りない。

 つまりノア=スフィネを更に引きはがす為に煽っていた。


『アアァァァァ――ッ』


「いいぜいいぜ! まずは『追いかけっこで遊ぼうぜ』!』


 お返しと言わんばかりに両翼を羽ばたかせ黒刃を放ち突撃してくるノア=スフィネに狙い通りとラタニは飛翔。

 向かうは王都の南にある海岸。港からも距離を取りながらノア=スフィネを誘い込む。


『ゴオ――ッ』


『ほいさっ』


 追撃の黒弾も両足に纏わせた風の勢いで上空に舞い上がり回避。


「いやー、ほんとバカみたいな威力だねぇ」


 そのまま海に着弾した黒弾によって吹き上がる水柱を眺めるラタニは呑気なもので。


「やっぱ離して正解だったわ。あんなもん一発でもぶち込まれれば王都が半壊するかもだ」


『グアオォォォ――――ッ』


「そうなればみんなが困る。ラタニさんの判断は大正解だ」


 対するノア=スフィネは怒り心頭のようで威嚇の咆哮を上げるもラタニは涼しげな表情を崩さない。

 王都から一キメル以上離れた海岸沿いの平野、ここならノア=スフィネの攻撃による周辺被害を気にせず戦える。


 ただ懸念していたのはノア=スフィネの攻撃だけではない。


「さてと……あんたが前のトカゲさんと同じ存在なのかは知らんけど、まずはお久しぶりさね」


 念のため周囲を飛行して人の気配がないのを確認したラタニは海岸上空でノア=スフィネと向き合い呑気にご挨拶。

 もちろんノア=スフィネが返答してくれるはずもなく、執拗に黒刃で攻撃してくるが悠々と回避しつつラタニは語り続ける。


「そんでもって前は逃げ回るばっかで、挙げ句にアヤトの介入ってクソつまんねー遊びに付き合ってもらってすまんかったね」


 先日は精霊の咆哮に期待して時間稼ぎに徹した。

 結果は通用せず、勝ち筋が見出せないとアヤトの到着を期待してやはり時間稼ぎ以外の手段はなかった。


「でも安心しな。今回はサシで遊んでやるよ」


 だが今は違うとラタニは攻撃を続けるノア=スフィネに向けて不敵に笑う。

 精霊力の保有量から以前のノア=スフィネと比較しても強くはない。精霊力の保有量=強さではないのも重々承知。

 故に牽制の精霊術を放ちつつ、ここまで逃げながらノア=スフィネの攻撃、行動パターンを分析していたがラタニの見解ではサイズと精霊量の保有量以外はほぼ同個体と言い切れる。

 同時に精霊の咆哮も通用しないとの結論に至ったので恐らく詩を紡いだ精霊術を放てたとしても討伐は不可能。

 それでもマヤに言伝を残したように今回は単独討伐をする自信があった。


「あたしもアヤチンの介入があったのに単独討伐すごい! さすがラタニさん! ……て称賛浴びまくるのは後ろめたかったんよ。だからちっこいトカゲさんには悪いけど、ちーとばかりラタニさんの事情に付き合ってもらうよん」


 要は()()()()()によって起こりかねない周辺被害を気にしていたからこそ場所を選んだわけで。

 まあ精霊虚域(ディメラジン)のような精霊術の極致とは真逆の、実に単純な手札なので申し訳ないと内心謝罪して。


『オォォォォォォォォォォ―――ッ』


「つっても――最初は『やっぱ逃げるんだけどねん』!」


 挑発関係なく襲い来るノア=スフィネに対し、先日とは違う理由でラタニは回避に徹していた。




本来ならノア=スフィネの脅威に絶望を抱く所でも明るく楽しくなのがラタニさんはさておいて。

前回のノア=スフィネ戦において単独討伐という実績を周囲に称賛されたのを一番気にしていたのはラタニさんでしょうね。仕方がないとは言えアヤトくんの功績も自分のものにしてしまったわけですから、姉としてのプライドもあるわけで。

また謎の少女ことミライも含めて、未知の脅威に備えて自身を鍛え直したことも大きいでしょう。

結果としてラタニさんが編み出した新たな手札はどのようなものか。

そして今章もいよいよ終盤戦、どのような結末を迎えるか最後までお楽しみに!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ