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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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二組の役割

アクセスありがとうございます!



 精霊種の精霊石がノア=スフィネを生み出す可能性から、サクラの指示を受けたロロベリアはもう一欠片の精霊石を浄化するべく研究施設へ。

 また情報収集の為にツクヨやミューズも向かったが精霊石の影響で研究施設に近づくことができず、結果的にロロベリアとアヤトのみで浄化作業を担うことに。


「……これって」


 したのだが、施設内の状況が視界に入るなりロロベリアは息を呑む。

 天井部に穴が空いてはいたが建物自体は崩れる心配はなさそう。しかしロビー周辺に研究員らしき人物が数名倒れていた。


「ミューズの言っていた背霊力の影響だろうな……とりあえず死んじゃいねぇよ」


 即座にアヤトが中に入って状態を確認、意識は失っているが呼吸はしているようで一先ず安心。


「だがこのまま放置というわけにもいかんか。俺は建物内にいる連中を運び出す、お前はカナリアにここへ来るよう連絡を入れたら先に行け」

「ミューズさんがいるのに?」

「こいつらが目を覚ました時、ミューズが居ればどう思うか少しは考えろ」

「……考えました」


 アヤトがマヤを通じて連絡を取る場合は対価が必要なので自分に指示したまでは考えられたのに、カナリアを呼ぶ理由までは思いつかなかったロロベリアは反省しつつ神気のペンダントを握る。

 その間にアヤトは研究員を両脇に抱えては影響を受けない範囲まで次々と運び出し、気づけばロビー周辺に倒れている人は居なくなっていた。


「さてと……」


 故に人命救助はアヤトに任せてロロベリアは精霊石の元へ向かう。

 施設内の構造は分からなくてもネルディナと対峙した際に感じた禍々しい精霊力を辿り階段を上っていく。

 多少時間は掛かったが三階で禍々しさがひときわ強く感じる一室に到着。

 一欠片の精霊石が飛び出した際の衝撃でガラスが割れたのか周辺は破片まみれ。ただ倒れている人が居ないことに安堵しつつ室内に足を踏み入れた。


「――遅かったな」

「わひゃ!?」


 同時に声を掛けられたロロベリアは驚きから間抜けな悲鳴を上げた。

 良く見ればすぐ傍にアヤトが居て、もう運び出したのかと――


「授与式のお陰で残っていた職員は少なかったからな。つーか天井の穴からここに来れるだろう」

「……ですね」


 質問するより前に疑問解消の返答が。言われてみれば天井の穴を開けたのが精霊石なら精霊力を辿らなくとも最短ルートで辿り着けるわけで。


「ま、でかい声が出せるなら影響はなさそうだ」

「うん……ちょっと気持ち悪いだけで……でも」


 それはさておきアヤトの嫌味通り体調面は問題ない。

 ただ目の前に転がっている巨大な精霊石の欠片は以前見た物よりも更にどす黒く、精霊力も強さというより不快な圧が感じられた。

 なによりこのまま放置すれば危険だと本能が警鐘を挙げている。


「周辺の警戒は俺が受け持つ。お前は浄化作業に集中しろ」

「わかった」


 故にアヤトの頼もしい言葉に背中を押されるままロロベリアは精霊石の前へ。


(う……っ)


 触れた瞬間、ざわざわとした不快感が胸に走るも目を閉じて意識を集中。自身の精霊力をゆっくりと精霊石に流し込んでいく。


「なに……これ?」


 すると以前とは違う感覚にロロベリアは戸惑ってしまう。

 アヤトやサクラから渡された精霊石の欠片では簡単に流れたのに、今は自身の精霊力が見えない壁に阻まれ分散されるような感覚。


「どうした」

「なんでもない……大丈夫」


 背後で声を掛けるアヤトに首を振りロロベリアは再び集中。

 精霊石の大きさなのか、恐らくツクヨから教わった精錬法では浄化は不可能。

 とにかく微量の精霊力をゆっくり流すのではなく、もっと強く流さなければダメだと判断するなりロロベリアは両手に集約する精霊力を増やしてく。

 予想通り阻まれていた感覚はなくなり、上手く流し込めてはいるが懸念すべきは精霊力が持つかどうか。


(今は考えずに集中すればいい……っ)


 保有量の少なさが恨めしく思うも、やるべきことに集中した。



 ◇



 ロロベリアが精霊石の浄化に取りかかった頃――


「聖女ちゃんみっけ」

「ツクヨさん?」


 アヤトの指示通り物陰に潜んでいたミューズの元にツクヨがやってきた。

 精霊力の視認で探したのかマヤから居場所を聞いたかは分からなくとも、ツクヨになら見付かっても問題ないのでミューズも慌てず対応。


「わたしに何かご用ですか」

「アヤトから聞いたけど聖女ちゃんは施設の異変が視えるんだって。ぶっちゃけどんな感じに視えてるのか興味があってよ」

「そうですね……」


 どうやら意見を聞きに来たらしく施設を指さすツクヨに質問されるままミューズも視線を向ける。


「アヤトさまにもお伝えしましたが、施設の中心部から人の悪感情を視認したような黒さが視えました。また周辺にはうっすらと黒い靄のようなものも。ツクヨさんはどうですか?」

「今まで感じたことねー不快感が混じった精霊力は感じられるけど……アタシには何も視えねーな。ネルディナの精霊力は視えたのなら、聖女ちゃんが視てる精霊力はやっぱ別物なのか?」

「かもしれません……ですが、先ほどから施設内に視えていた黒い精霊力が少しずつ弱まっています。同時に黒い靄も視えなくなっているので、恐らくロロベリアさんが浄化を始められたかと」

「……なるほどな」


 意見交換で分かったことは非合法な実験で手に入れてしまったネルディナの精霊力と、いま施設周辺に影響を与えている精霊力は別物なのこと。

 そしてミューズの視認は自分よりも別格なことか。まあ特殊な訓練で手に入れた視認性と突然開花した視認性なら当然だが、同じ精霊力を視ることで改めて違いを確認できた。


「ツクヨさん……いくら周辺の黒い靄が視えないからといっても、まだ近づくのは危険かと」

「ん? ああ、心配しなくても近づかねーって」


 念を押すミューズに言われるまでもないとツクヨは肩を竦める。

 もしかするとミューズに安全確認をしてもらいアヤトたちと合流するとでも勘違いされたようだが、視えなくても未だ不快感がヒシヒシと伝わる場所に入り込むほどツクヨも無謀ではない。

 ただ意見交換をした上で誘うか否かを決める為に合流したわけで。


「それよりも聖女ちゃんさ、アタシと一緒にラタニさんのところに行かねーか?」

「お姉さまのところに……?」

「お姉さま? 聖女ちゃんもラタニさんを……は、今はいいわ。ラタニさんは今ノア=スフィネと遊んでるだろ。要はノア=スフィネを視に行かねってお誘いだ」


 疑問視するミューズにツクヨは自身の考えを説明。

 サクラから精霊石の情報収集を頼まれたが近づくことすらままならない状況。しかしノア=スフィネを実際この眼で視ることで何か分かるかも知れない。

 なんせノア=スフィネは霊獣とは別の存在とマヤが口にしていた。今は少しでも情報だけに、霊石では得られなかった変わりにノア=スフィネを観察しようとツクヨは思い立った。ラタニの邪魔にならないよう遠くからになるが、このまま成果を得られないよりはずっといい。

 そして同じ視認性でも別格のミューズが居れば自分以上の情報を得られると考え合流したが、結果は言わずもがな。


「まあ遠くからでもちょいと危険なのは確かだ。無理にとは言わねーがどうする?」

「行きます」


 故に誘ってみればミューズは即答。

 ミューズも成果を得られない歯がゆさはある。視認性を活かせる機会があるのなら、少しでも役立てたいのだ。


「……アヤトさまに待つよう言われているので、まずは許可を得る必要がありますが」


 ただツクヨの誘いとは言え独断行動は気が引けると確認を怠らない辺りがミューズで。


「つってもアイツのことだから好きにしろって言うだろーけどな」


 もちろん無理をしないよう言われるかもしれないが、普段から好き勝手なアヤトがミューズの意思を無下にするはずもないとツクヨはカラカラと笑った。



 

当初の目的通り施設に入ったアヤト&ロロチームは相変わらずというか、シリアスな場面でもある意味二人ともマイペースです。

対し一人残ったミューズの元にツクヨさんが合流。浄化作業をアヤト&ロロに任せて視認性を活かしノア=スフィネの情報収集に向かったミューズ&ツクヨチームの判断は吉と出るか凶と出るか。

そして次回は単独でノア=スフィネと戦っているラタニさんサイドの様子となります。


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読んでいただき、ありがとうございました!


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