表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
704/779

先手を打つ

アクセスありがとうございます!



『あのデカブツはあたしが追っ払うからみんなは落ち着いて非難するんよ~!』


 エレノアが広場に集まっていた民衆を宥めていた頃、ノア=スフィネの元に飛び立ったラタニも飛翔術を駆使しながら風の精霊術で声を拡散しつつ声かけをしていた。


『警備に当たってる子は住民の避難をよろ~! 格好いいところを見せるチャンスだよん!』


 授与式を見に来ていない住民たちも上空に怪物が出現すれば混乱は必至、自身が対応するアピールと共に焦燥感を煽らないよう普段通りの口調で警備担当にも指示を出す。

 もちろんノア=スフィネの対応も怠らない。二次災害を出さないよう出来るだけ高度を上げながら合間に牽制の精霊術を放ち注意を惹きつけていた。


『――ゴォッ』


『ほいさ』


 牽制が効いているのか、それとも初撃を防いだ相手を脅威と認識したのか、ノア=スフィネの攻撃はラタニに集中している。お陰で地上に被害が向くことはないが油断は禁物、早々に王都から離す必要がある。


『――ラタニさま、兄様から言伝です』


「アヤチンはなんだって!?」


 故に慎重な位置取りを強いられながら接近する中、脳内にマヤの声が響く。

 さすがにアヤトもノア=スフィネを確認しているはず、マーレグが手配した術士団も反ラタニ派の配下を捕らえる余裕もないだろう。

 なら応援に向かう報告と思われたがその言伝はラタニも見逃していた可能性で。


『そちらに向かうのは少々遅れるので、それまで寂しくて泣かないように、だそうです』


「誰が泣くかっての……っ」


 要は寄り道してから向かうとの報告にラタニは挑発的に笑う。

 さすがサクラと言うべきか、見事な着眼点で最適な人員を回してくれた。

 そして報告ついでに憎らしい激励をしたアヤトには、お返しにラタニも言伝を残すことに。


「トカゲ野郎はあたしに任せていいから可愛い妹たちをよろしく。アヤチンもお姉ちゃんが心配でヘマするなって伝えといて」


『畏まりました』


「さーてとん」


 クスクスと笑いながらマヤの声も消えたところでラタニは舌舐めずり。

 アヤトが合流すればノア=スフィネとの戦いも楽になるが、今回は一人でも対処できる自信がラタニにはあった。

 まず大きさが前回の半分になっているせいか、ノア=スフィネの精霊力も弱まっている。まあせいぜい三割減ほどなので脅威に変わりない。

 しかし前回の反省からラタニも試行錯誤を繰り返している。

 つまり()()()()()()()()()()()()()()()


「まずは遊ぶ場所を――」


 その為にも何よりまずはノア=スフィネを王都外に移動させる必要があると、ラタニは精霊力をギリギリまで解放。

 焔のような翠の煌めきが帯びるなり速度を下げてノア=スフィネの懐に飛び込んだ。


『変えようぜ!』


『ヴォォォォ――ッ』


 同時に両手から突風を顕現、呻き声を上げながらノア=スフィネを一気に王都外まで吹き飛ばした。


「ふぅ……。ラタニさんも――行きますかねっと」


 一息吐いて従来の解放状態に戻ってからラタニは追撃に向かった。



 ◇



 一方サクラの指示を受けたロロベリアとミューズは集合場所に使われていた応接室に居た。


「……こちらで宜しいんですね」

「そう聞いてますけど……」


 ノア=スフィネの出現に城内も混乱状態なのが功を奏し誰にも気づかれず移動は出来たが、さすがに城外に出るのは難しい。

 故にサクラがマヤを通してアヤトを迎えに寄こしてくれたがなぜ応接室なのか。

 この際アヤトがどこで何をしているのかはいい。それよりもサクラの予想が正しければ一刻の猶予も許されない。

 その為にもロロベリアの力が必要で、ミューズは今後を見据えた情報収集の為に選ばれたのだが――


『お二人とも応接室に到着していますか?』


「マヤちゃん?」

「はい、指示通り待機しています」


 不意に響くマヤの声に二人は反応。


『では今すぐバルコニーに出るようにと兄様が仰っています』


「バルコニーに……?」

「ロロベリアさん、今は考えるよりも指示に従いましょう」


 からの続く指示に首を傾げるロロベリアの手を引きミューズはバルコニーへ。


「「……へ?」」


 ……飛び出すなり突如訪れる浮遊感に二人は間抜けな声を漏らす。


「――よう」


「アヤト!?」

「アヤトさま?」


 更に聞こえる気怠げな声に顔を上げれば何故か白銀に扮したアヤトの姿が。

 恐らくバルコニーに出た瞬間、アヤトが二人を抱えて飛び立ったのだろう。

 この方法なら誰にも気づかれず城外に出られるし時間のロスも最小限に済むがそれよりも。


「どうして白銀の格好してるのよ!」

「どうだっていいだろ構ってちゃん」


 こんな時でも構ってちゃんを発動するロロベリアにアヤトは面倒げに一蹴。


「それよりもツキから聞いたが少々面倒な事態かもしれんぞ」

「ツクヨさんはもう到着しているのですね。ですが面倒な事態とは?」


 咎められ口を閉ざすロロベリアに変わりミューズが質問するよう、ツクヨも情報収集要因としてサクラの指示を受けている。


「…………っ」

「どうやらミューズも無理らしいな」


 ただ返答を聞くよりも先にミューズの体がビクリと震え、その反応で理解したアヤトは立ち止まった。

 目的地は精霊種の精霊石を保管していた研究施設。

 ただ建物上部が壊れて穴が空いている。恐らく保管していた精霊石が飛び出した跡。ノア=スフィネが出現する前に集約していた黒い霧の中心部にその精霊石があったのだろう。

 先日出現した際、同じ現象が見られたことから黒い霧の集合体が精霊石の可能性もあった。しかし最初に響いた轟音や出現したノア=スフィネの大きさから、サクラは保管していた精霊石が黒い霧を集めていると判断。

 そして精霊石はアヤトが白夜で真っ二つにしている。


 つまり精霊石がノア=スフィネを生み出すのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 もし二体目のノア=スフィネが誕生すれば事態は更に悪化する。

 その可能性から残る一欠片の精霊石をロロベリアに浄化させようと、サクラはアヤトと連絡を取り迎えに回した。マヤ曰くノア=スフィネの天敵はロロベリアだ、浄化さえすれば生み出すことはないだろう。

 ミューズやツクヨを向かわせたのも残る精霊石の状態や浄化する際の様子を視てもらうことで少しでも情報を得るため。


「ツキは近づくことも出来んと言っていたが、お前はどうだ」

「…………申し訳ありません」


 ただ先に向かったツクヨと同じくミューズも首を振る。二〇メルは離れているのに胸を締め付けるような息苦しく、これ以上近づける気がしない。


「私はそれほどでもないけど……」

「俺は全く感じんがな」


 対するロロベリアは不気味な感覚はあれどその程度で、精霊力を秘めていないアヤトに至っては平然としている。

 やはり特種な精霊力を秘めているのはロロベリアのみなのか。とにかくミューズをこれ以上近づけるわけにもいかないとアヤトは判断。


「アヤトさま……施設内部に人の悪感情を視認したような黒さが視られます。それとうっすらとですが……黒い靄のようなものが周辺を覆っているようにも……」

「ほう? ツキはただ気味が悪いと言っていたが、お前の目にはそう視えるのか」


 ただミューズを同行させたのは正解だったようで、ツクヨでは視えなかった精霊力が確認できた。

 やはり二人の視認性も別物なのか。しかし今は考察している暇はない。


「なんにせよ俺や白いの以外が近づけないなら周辺にも人が居ないわけだ。気にせず浄化作業に専念できるな」

「浄化した精霊石は残るけどね」

「どうとでも言い訳できる。ミューズは俺たちが戻るまでどこかに隠れていろ」

「わかりました。お二人とも、お気をつけて」

「行ってきます」


 故にミューズを残し、ロロベリアとアヤトのみで研究施設に向かった。




サクラさまの見事な判断で二体目のノア=スフィネの誕生を防ぐ為にロロは行動していました。

また情報収集としてミューズも向かいましたが、無駄骨にならずミューズにしか得られない情報を掴んだようです。

その辺りについて今は伏せるとして、ラタニさんとロロの同時攻略で王都の危機を救えるかは、次回からのお楽しみにということで。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ