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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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最善を尽くす

アクセスありがとうございます!



 授与式の最中に起きた悪夢の再来。

 討伐したはずのノア=スフィネが復活。

 研究施設の上空で先日と同じ現象で復活したのなら、保管していた精霊石が原因か。

 ただ原因を究明する暇はない。なんせ前回とは違い多くの人々が暮らす王都での復活、下手をすればが王都壊滅してしまうまさに悪夢のような出来事で。



 グオォォォォォォォォォォ―――ッ


『―――!?』



 ノア=スフィネの復活を突きつける咆哮は王都中に響き渡るも、広場の民衆は耳を塞ぎ蹲る程度で未だ状況が掴めていない。

 貴族席の面々も同様で突然の咆哮に混乱しているが逃げだそうともしないのは、位置的に周辺の建物が邪魔をしてノア=スフィネの姿が見えないようで。

 しかしバルコニーにいるレグリスを始めとした王族や学院生らは初めて目にするノア=スフィネの圧倒的な存在感に我を忘れてただ茫然と。

 以前対峙したカナリアら小隊員やロロベリアは突然の復活に理解できず困惑している中――


『ゴオゥ――ッ』


『させるかよ!』


 いきなり黒弾を放つノア=スフィネにも焦ることなくラタニは精霊術を発動。迫り来る黒弾を暴風の壁を展開して上空へと弾き返した。


『…………っ』


「あたしが王都外にあいつを押し出すけど念のため住民を避難させといて! みんなも『お手伝いするんだよ』!」


 黒弾と暴風壁の衝突で起こる突風にバルコニーに居る面々が地面に伏せて耐える中、ラタニは部下に指示を出すなり飛翔術でノア=スフィネに向かって飛び出した。

 このまま王都上空でノア=スフィネと対峙できないので的確な判断、後はラタニが上手く対応すると信じるしかない。


「う、うわぁぁぁ――!」

「きゃぁぁぁ――っ」


 しかしノア=スフィネの姿を確認しなくとも、咆哮や上空に弾かれた黒弾を目撃したことで異常事態が起きていると理解した民衆は錯乱状態。


「陛下……? 陛下、もしやお怪我を!?」

「ぐぅぅ……っ」


 更に先ほどの突風に耐える際、どこかを痛めたのかマーレグが声を掛けるもレグリスは蹲り悶絶するのみ。


『爆ぜろ――っ!』


 レグリスが負傷したことで指揮を執れず、このまま混乱が続くと思われたが不意に()()()()()()()()()()()

 バルコニー上空へ放った火球が花火のように弾け、周囲一帯に爆音が響き渡った。


『私の話を聞いてくれ!』


 その爆音に錯乱していた民衆の動きが止まるなり、落ちていた精霊器を拾うなりエレノアは声を拡散。


『みなには見えていないかも知れないが王都の上空に精霊種が出現した! 先ほどの黒弾も精霊種の攻撃によるものだ!』


 そのままバルコニーの縁に乗り出す勢いで民衆に向けて現状を説明。

 ただ精霊種の出現を知ればより民衆の混乱を招くがエレノアは止まらない。


『それを先生……ラタニ=アーメリが防いでくれた。そして今まさにみなを守る為に彼女は精霊種を王都から引き離そうとしてくれている!』


 恐慌が起こる間も与えず希望を示す。

 精霊種という脅威から王国を救ったラタニが再び立ち向かってくれたなら、恐れる前に彼女という希望を思いだせと必死に訴える。


『故にみなも落ち着いて非難指示に従って欲しい! それが何よりもラタニ=アーメリの力になる!』


 その上で自分たちが今できることをしようと。

 無闇に逃げ惑うよりも冷静に非難した方がラタニも戦いやすい。何より混乱から怪我をしては意味がないと。


『王国の英雄ラタニ=アーメリがみなを守ると約束してくれたのなら、今はその言葉を信じて欲しい……むろん私たち王族もみなの安全を保証するべく尽力すると誓おう! だからどうか頼む! 今は落ち着いて避難指示に従ってくれないか!』


 そしてラタニのように戦えない変わりに王族は一人でも多くの安全を守るべく非難活動に徹すると誓い、民衆に向けて頭を下げた。

 王族が懇願するよう民衆に頭を下げるなど威厳を失う行為。

 しかしだからこそエレノアの民を守ろうとする切実な想いが伝わったのか、先ほどの喧騒が嘘のように静まっていた。


「よくやった、エレノア」

「お父さま……ご無事でしたか」


 民衆が冷静に指示を仰ぐ態勢が出来たところで背後からレグリスの労いの声が。

 カナリアが治療術を施してくれたようで、しっかりとした足どりでエレノアの隣りに立ち精霊器を受け取った。


「不甲斐ない姿を見せてしまったな……もう大丈夫だ」

「……お願いします」


 優しい笑みを向けた後、国王としての凜々しい顔つきで騎士団に避難指示を出していく様に緊張の糸が切れたのかエレノアはフラフラと後方に下がっていく。


「最高だったよエレノア!」

「お見事でした」

「マジで格好良かったぜ」

「さすが生会長です」

「ぱちぱち」


 そんなエレノアを支えるようにランを始めとした学院生会がお出迎え。

 口々に褒め称える仲間たちにエレノアも照れくさそうに笑った。


「はは……まあ、カルヴァシアからも散々言われていたからな。それにダラードではユースに任せきりだった……私にも王女としての意地がある」


 もちろんエレノアも次々と押し寄せる事態に気が動転していた。

 しかしアヤトから何度も突発的な出来事に弱いとの苦言を受け、謎の少女と対峙した際も本来指揮を執るはずの立場にも関わらず出遅れた。

 その苦い経験があったからこそ今回は行動に移せたと自負している。

 レグリスが負傷している中、誰かが変わって混乱を収めなければならない。

 それは王族が務める役割。故に自分の声を届けようと精霊術で強引にでも民衆の注目を集め、後は思いつくまま必死に説得した。


「アヤトくんの嫌味やダラードの経験が活きたわけですね。でもあの状況で行動に移せたのはお見事でしたよ」

「よく分からないけど凄かった」

「さすがはエレノアさまです」

「ジュード先輩がフロイス先輩みたいなこと言ってる」


 咄嗟の思い付きでも上手くいったと安堵するエレノアに序列保持者も称賛する。

 民衆のラタニに対する信頼もあっただろう。それでもエレノアの真摯な説得が混乱を収めたのも確かで。


「立つ瀬が無いね、兄さん」

「……そうだな」


 対しレイドとアレクは反省ばかりが募る。

 妹の成長を兄として誇らしい反面、兄だからこそ対処するべき場面で何も出来なかった自分たちが不甲斐ないと複雑な心境で。


 ただエレノアと同じくサクラも人知れず場に応じた行動を移していた。


「さて……妾たちは上手く弁解するとしようか」

「畏まりました」


 その結果、エニシと共に真実を避けて()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




ラタニVSノア=スフィネ再戦の前に、まずは民衆を落ち着かせる必要があります。

そんな中で負傷したレグリスさまに変わってその役割を担ったのはレイドさまやアレクさまではなくエレノアさまでした。彼女は本当に成長しましたね。

ただ優秀な二人の兄と違い、何度も挫折や後悔を繰り返し、それでも諦めず立ち上がり続けたエレノアさまだからこそ手に入れられた強さが咄嗟だろうと最善を尽くせたと思います。

そしてエレノアさま以外に冷静に状況を判断したサクラさまによってロロとミューズも行動に移っています。

サクラさまの判断で二人はどこへ向かったのか、ラタニVSノア=スフィネ再戦を踏まえてもちろん次回で。



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みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!


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