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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第二章 序列剥奪編
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誇り

アクセスありがとうございます!



「か……勝てた……」


 勝利者コールが響くと同時に髪と瞳が従来の色に戻ったロロベリアは突きつけた瑠璃姫を地面に刺して崩れ落ちた。

 その姿はまさに満身創痍。衣服のみならず髪までも所々焦げ、露出している肌も火傷や滲む血で赤くなっている。

 対し呆然と立ち尽くすエレノアは無傷。

 見た目こそ勝者と敗者が真逆の出で立ち。


 しかし勝者はロロベリアだ。


「その様子じゃ自分で治療は無理そうだね。どれ、あたしが医療室まで運んであげよう」

「助かります……アーメリさま。ですが少し……待ってください」


 ラタニの申し出に感謝しつつロロベリアは自分の力で立ち上がる。

 ふらふらになりながらも瑠璃姫を鞘に納めるなりエレノアに頭を下げた。


「……ありがとうございました」


 あの時の直感は間違っていなかった。 

 相手がエレノアだからこそ資格を得たとの自信になった。

 また序列継続戦前に伝えてくれた気持ち。戦いの途中で伝えてくれた気持ちが嬉しくて。

 改めてお礼を告げたロロベリアに、髪と瞳が従来の色へと戻りエレノアは肩の力を抜く。


「なぜ感謝されているのか分からないが……リーズベルト、教えてほしい。炎弁の華(リ・フロアミレス)からどうやって脱出したんだ」


 完璧に捕らえたはずの炎の監獄、精霊術で対処することも出来ないタイミング。もし精霊術を発動できたとしても消せる威力ではなかったはず。

 精霊結界で外傷は軽減されるも、この程度で済んでいる理由がエレノアには理解できなかった。


「精霊術で……水の壁を作りました」

「しかしあのタイミングでは……」


 その返答に首を傾げるエレノアにロロベリアは導き出した逆転の一手を説明。

 言霊で放つ精霊術はけん制だけでなく一定の距離を空けさせるよう誘導していることに回避しつつ気づくことができた。

 何故ならロロベリアも精霊術士だ。一対一の攻防で自分より近接戦に優れ、速さがある相手に対して同じ戦法を取る。まさにアヤトとの模擬戦で実戦したように。

 またエレノアの精霊術そのものに違和感があった。

 けん制や足止めを狙うならもっと低位力で、発動速度のある精霊術を放てるはずなのにそれをしない。ならば別の何かを狙っているとも考えられる。

 更に無意味な精霊術を酷使し続ける理由がない。

 自分とエレノアでは精霊力の保持量は違う。しかし身体強化のみの自分に対し、精霊術を放ち続けるエレノアでは先に限界が来るのはエレノア。


 経験、違和感、分析から導き出したのは回避不能な大技で確実に仕留めてくる。

 それにはエレノアでも言霊ではなく詩を紡ぐという解。

 ならばエレノアが望む距離まで敢えて誘導されてから大技を使わせる。

 その大技も恐らく全方位で高威力の精霊術。ここまで読み切れば後は対処するだけ。


「精霊術の変化でタイミングが分かりました……だから躱さず、瑠璃姫を突き刺して停止しました」

「…………」

「そこからエレノアさまに気づかれないよう……前進するフリをして……私も詩を紡いでいたんです」

「…………」

「水の壁したのは……威力的に劣る水の精霊術で対応できないなら……その、対応ではなく……私がその壁に飛び込むためで……」

「…………」

「それと……精霊力で限界まで脚力を強化させた移動速度と、全身を精霊力を秘めた水で保護すれば少しは……炎に対処できるし……精霊結界もあるから……いけるかなって」

「…………」

「それでも……ギリギリでした。現に精霊力がごっそり消費されて……もし精霊結界がなかったら……たぶん、私はここに居るどころか……」

「…………」

「つまり……精霊結界があったからこそ……だから。自力ではやっぱりエレノアさまに及びません……まだまだ、です」


 自分の狙いを読まれていたことよりも。

 回避しながら思考を巡らせていたことよりも。

 まさに死ぬ気で自ら炎に飛び込むという逆転の一手を実行したことよりも。

 それを誇るではなく反省する姿にエレノアは言葉がない。


「それでも……私はこの勝利を誇れます」


 代わりに誇るべきことがあるとロロベリアは更に続ける。


「ここで誇れないことこそ……自惚れになるし……どんな形でもエレノアさまに勝てたから……なにより、本気で戦ってくれたからこそ……誇れるんです」


 なのでありがとうございます――


 再び頭を下げたロロベリアはそのまま意識を失い倒れていく。


「精霊力が枯渇寸前でよくまあお喋りできたもんだ」


 ロロベリアから感じられる精霊力、状態から限界を察していたラタニが寸でのところで抱きかかえた。


「てなわけでエレちゃんや、あたしはこのままロロちゃん運ぶから、健闘の握手は起きてからにしてちょうだい」

「もちろんです……。アーメリさま、リーズベルトをお願いします」

「ほいほい」


 ロロベリアを抱えて闘技場を去って行くラタニに頭を下げたエレノアは、続いて来賓席のレイドに視線を向けた。

 レイドも察してくれたのか立ち上がり、勝敗とロロベリアの序列継続を宣言。

 そんな中エレノアも闘技場を去って行く。

 敗者が語る言葉はない。

 それでもロロベリアが誇ってくれた自分でありたいと堂々たる退場で。


 清々しいエレノアの立ち振る舞いと、死力を尽くしたロロベリアの勝利に敬意を表して観覧席から大きな拍手が送られた。




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