二学生最強VS一学生最強 1
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「これはまた……」
「……驚いたな」
開始わずか数秒後、予想外な展開にレイドとカイルは感嘆の息を漏らす。
精霊力を解放しているので二人の動きは目視できる。
その中で予想外なのはロロベリアの動き。
先手を取り真っ直ぐエレノアに向かって飛び出し、斬りつけるまでの動きは二人が知るよりも鋭く、疾くなっている。
故にエレノアも虚を衝かれ咄嗟にレイピアで防御するも反撃の間がなくそのまま防戦一方。
精霊術士は精霊術が強力なのでどうしても武術の鍛錬を軽視する傾向はある。しかしエレノアに関してはそのような偏見はない。
王女という立場に奢らず精霊力を扱えるようになってから、精霊術士として開花してからも己に厳しく鍛錬を怠らない結果、精霊術に頼らなくとも学院内では充分強い。
だからこそ二学生最強と序列入りするだけの実力者だ。
もちろんロロベリアの精霊術以外の実力も評価していたが以前の、それこそ二ヶ月前の序列戦を争った彼女ではエレノアを圧倒するほどの力はなかった。
この変化は伸びしろの差ではない。
ロロベリアが武器を持ち替えたからでもない。
純粋にこの二ヶ月をどう過ごしたかの差だ。
むろんエレノアが怠惰な二ヶ月を過ごしていないのを二人はよく知っている。
遠征実習を得てむしろ経験はロロベリアより積んでいるはず。
ならばロロベリアの変化はただ一つ。
アヤト=カルヴァシアが関係している。
「……いったい二人でどんな訓練してるんだろうね」
「俺が知りたいくらいだ」
◇
エレノア優勢を疑わない学院生らは、まさかの展開に言葉がない。
だが誰よりも驚いているのはエレノア自身。
開始直前に賞賛したようにロロベリアの実力を認めている。精霊術だけでなく武術の鍛錬も怠らず、異例の序列入りを果たしても驕らず、ひたすら己を高めるその努力を何よりも認めていた。
だから広まる噂が許せなくて厳しい姿勢を示した。だからこそこの序列継続戦にかける思い、勝利という条件を自ら提示した精神を褒めた。
故に侮りもなく力でねじ伏せることがロロベリアの精神を無駄にしないと挑んだ。
「――ふっ!」
「くっ!」
最小限の動きから繰り出されるレイピアのような蒼い剣の連撃をギリギリのタイミングで防ぎつつ、少しでも距離を取ろうとバックステップ。
しかし読んでいたかのようにロロベリアが追撃。反撃の余地すら与えてくれないこの動きや読みは以前の彼女では考えられないほど鋭く、速く、鮮麗されている。
実戦演習前のロロベリアなら接近戦で後れを取らないと自負していたが、まるで別人のような強さにねじ伏せられているのは自分で。
いったいこの二月程度の時間で何があったのか。
◇
誰もが驚きを隠せない展開、しかし驚くことなく観戦している者もいた。
「そりゃ姉貴が圧倒されたくらいだもんな」
この三日間、ロロベリアの悪あがきに協力していたユースは冷静にこの展開を受け入れていた。
リースの保有量はトップクラスでも制御力の甘さから序列入りしていない。しかし武術の序列があるなら間違いなく序列入りできるほどの実力者だ。
そのリースですら圧倒されたなら、いくらエレノアでも対抗できるはずがない。
そしてこれ程の成長を遂げた理由を知るだけに驚くことではない。
ロロベリアから聞いた精霊力の運用法。
アヤトとの訓練から自身で模索し、繰り返すことで得たこの運用法は制御力で群を抜くロロベリアだからこそ可能としたもので、教わったから真似できるという技能ではない。
加えてこの一月、毎日のように格上のアヤトと実戦さながらの模擬戦を繰り返し、ボロボロになりながらも前進を止めなかった。
常に強くなるために模索し、強者に挑み続けた差が二人の差となっている。
ただユースも、リースもロロベリアの成長に気づいたのは協力した結果。この一月、彼女は常にアヤトとの訓練を続けていたので以前のように直接模擬戦をしていなく、学院の訓練も直接相手をしていない。
そして入学当初から異例の序列入りに相応しい実力で他を寄せ付けない存在が故に彼女の本気を引き出せる者がいなかった。
だからこそ同じ序列持ちのエレノアが相手だと、その実力を存分に発揮できる。
「当然……ロロは強くなった」
なのでリースも驚くことなく、ロロベリアの勝利を疑わない。
むろん楽観視はしていない。
何故ならこれは精霊術士同士の戦い。
◇
楽観視していないのはロロベリアも同じだ。
リースやユースの協力を得て、以前よりも強くなっていると自覚している。またエレノアと剣を交えたことで更に自覚できた。
以前は見惚れることしか出来なかったエレノアの強さに対抗できている。
エレノアの動きはアヤトと違い予備動作があるから先を読みやすい。
運用法で身体能力も互角以上。
このまま斬り合えば確実に勝利できると自惚れではなく自信がある。
しかし自惚れではない自信だからこそ、こうして開始速攻で接近戦に持ち込み、冷静に追い詰めていた。
故に気づけた。
接近戦では分が悪いと悟ったエレノアから感じる精霊力に。
エレノアは変換術こそ扱えないが、ロロベリアが扱えない技術がある。
『燃え阻め!』
瑠璃姫とレイピアの鍔迫り合いに追い込むなり、エレノアが言霊を紡ぐ。同時に両者の間に炎の壁が吹き荒れた。
だが精霊力の高まりで察していたロロベリアは即座に離脱。炎の壁に焼かれないよう大きく距離を取ることで回避した。
そう、これは接近戦を主体とする相手ではなく、精霊術士エレノアとの戦い。
つまり精霊術士を精霊術士とたり得るもの、精霊術ありきの戦いで。
「……あの男が言っていた通りだ」
炎の壁が消えるなりエレノアが口を開く。
「リーズベルトの覚悟に対し、力でねじ伏せることこそ無駄にならないと挑んでいたが……結局のところ序列に強い弱いもない。ならば五位も十位も意味をなさない」
「…………」
「済まないリーズベルト、私はお前を侮っていた」
頭を下げるエレノアから真摯な気持ちが伝わり、しかし再び視線を交えることで別の気持ちが強く伝わる。
「そして感謝するぞリーズベルト、私の自惚れをへし折ってくれたことに。その証明と言っては何だが――ここからは私の全身全霊を持ってロロベリア=リーズベルトという好敵手に挑ませてもらう!」
強者としての余裕が消えて、ただ純粋に勝つとの意思が。
「……ありがとうございます」
やはりエレノアには他にない気高い強さがあるとロロベリアは更なる敬意を秘め、瑠璃姫を構えた。
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